第45話「ゴーレム武闘大会開始」
サイとジェネの特訓の日々は過ぎていった。「プチゴーレムを使いゴーレム武闘大会に出る」そう決意したばかりにこんな過酷な特訓を強いられる事になるとは……等といった弱音をサイがこの1ヶ月で吐き出す事は無かったが、そう言った事を吐き出したくなるくらいにはこの1ヶ月の特訓は過酷な物だった。
彼は様々な特訓をこなしてきたが、諦めるという事だけはしなかった。そうしてまでゴーレム武闘大会で活躍するだけの価値があるからだ。
武闘大会には、冒険者ギルドの重鎮が生徒達の戦いを視察する為に学園に訪れるという。
そこで彼らの注目を浴びれば学園卒業後はギルドにスカウトされ、手厚い支援を受けながら冒険者として活躍できる事が確約されているのである。
「親を楽させる仕事に就きたい」「人々を守る仕事に就きたい」そう願っているサイにとってこれは絶好の機会なので、当然見逃す訳にはいかない。
そんな重要な武闘大会ではジェネに頼る訳にはいかないと考えたサイは、ジェネの魂の宿っていないジェネシスタで武闘大会に挑む事を決意したのだ。
彼は自分自身の実力を見てもらう為に、その実力を最大限伸ばす為に1ヶ月間の特訓に励んだ。果たしてその努力は、実を結ぶのか……。
ゴーレム武闘大会、当日。サイとジェネは、取っ手の付いた四角い木の箱を持って学園に来ていた。
その木箱の中に自分の愛機が入っているのである。
「まさかジェネも武闘大会に出るなんて……ジェネもギルドにスカウトされて冒険者になりたいの?」
「私は人に近しい姿となった結果、人が誰しも持つ「自由」を手に入れた反面、人が誰しも背負う「義務」も背負う事となった。成長すれば労働に就かなければならなくなったので、前世での経験もある冒険者になろうと決めた訳さ。この武闘大会で活躍すれば卒業後すぐに冒険者になれるからね。」
「なるほど……。」
ジェネは、武闘大会が始まる10日前の時点で武闘大会に参加する事を決めており、その理由をサイに説明する。
その時、校門をくぐり抜けたサイとジェネの背後から大きな影が近づく。
「よぉサイ。」
「カ、カリバー先輩……?」
その正体は、サイとジェネ同様ゴーレムの入った木箱を持った男子生徒、カリバー・シイハだった。サイに負け、道を踏み謝ったカリバーはその行いを悔い改め、今日までの日々を決闘はせずに、日々魔法とゴーレム操縦の訓練に費やしていたのだ。
「お前は四天王の3人を倒したそうだな……もうお前をザコサイと呼ぶ奴はいないし、俺ももうそんな名前を言うつもりはない。」
「カリバー先輩……。」
「まさか君、ゴーレム武闘大会に出るつもりじゃないんだろうね?決闘権を剥奪されたのに?」
「これは決闘じゃない。武闘大会だ。だからお父様も学長も俺が武闘大会に出る事を特別に許可してくれた。俺は2人の善意を無駄にしたくない……だから俺は、お前らのどっちとぶつかろうと、絶対に勝つと決めた!」
カリバーは覚悟を決めた表情で、サイとジェネを見つめそう宣言する。カリバーの覚悟を受け取った2人は、彼にこう返す。
「カリバー先輩……僕も負けません!」
「私こそ、なんどでも君を倒してやるよ。」
カリバーは2人の言葉を聞き、伝えたい事を伝えたので、決闘者達の集まる場所に向かう事にした。
「そうか……それとサイ、過去の事を水に流したいとは言わんが……もうお前は俺が見下す対象じゃない……俺のライバルだ。」
「……はい!」
サイとジェネにそう言って歩いていくカリバー、2人もその背中を追って決闘者達の集合場所へと歩いていく。
「四天王に宣戦布告された気分はどうだい?」
「……俄然やる気が湧いてきた!僕はこの武闘大会で、何としてでも成果を残す!」
「そうか……その意気だ!」
ジェネはサイのやる気に満ちた表情を見て確信した……もしも自分とサイが当たった時、そのシチュエーションが来たとしても彼は自分を相手に本気でかかってくるだろう。
それに自分も応じなければ……と。ジェネはサイに対してもライバル意識を滾らせ、戦いへの心構えを持つ事にする。
学園には2つの校庭があり、そのうち1つはいつもは使われないのだが、年に1度開催されるゴーレム武闘大会の際はそこに学長の魔法によって第2決闘場が創造され、そこがゴーレム武闘大会の舞台となるのだ。
サイとジェネは第2決闘場の中にある生徒控え室にゴーレムの入った木箱を置き、集合場所とされている決闘舞台に足を運ぶ。
「ここが……第2決闘場……!」
「……多くの人達に注目されるのも悪くないね。」
サイとジェネが来た決闘舞台は、広い観客席に囲まれていた。観客席には、非決闘者の生徒達と、武闘大会に参加する決闘者を選別しに来たギルド職員が座っている。
足早に決闘舞台に来ていた四天王の1人であるルージュは客席にいる、大手ギルド「シャインルビー」のギルドマスターであり、父でもある男を見つめ、この大会で成果を残す事を決意する。
「お父様……クリムゾンの名に恥じない戦いを見せますわ。」
決闘舞台にいるのはルージュだけではなく、多くの決闘者達がいた。ルージュによってサイと縁を結んだアンジュとトライア、多くの人達に注目され、胃を痛めて足早にトイレに行こうとするアレン、口うるさい姉がここに来てなくて安心したメメント。
少年少女達の思惑巡るゴーレム武闘大会は、今まさに開始の合図を告げようとしていた……。
「本日はお日柄も良く、決闘者の皆さんも、ギルド職員の方々もよく集まってくださいました。決闘者の皆さんは、騎士道精神に則り、正々堂々全力の勝負を心がけましょう。それでは、武闘大会の説明を始めます。」
第2決闘場に学長の声が響き渡り、その壁に設けられたモニターに武闘大会のルールが映し出される。
武闘大会はトーナメントの形式を取っており、決闘者達は4つのブロックに分かれてトーナメント戦を行い、4つのブロックで勝ち残った4人の決闘者に準決勝トーナメント、決勝トーナメントをさせる、という流れになっている。
そして、学長が決めたAブロック〜Dブロックに振り分けられた生徒達は……。
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