第40話「激戦の予感」

ジェネは決闘を終えた後、サイ、アンジュ、ミリー、トライア、ヘレスと共に学園の中庭で弁当を食べている。

ロッソ隊の4人がジェネに出会うのはこれが初めてで、ジェネは彼女らに挨拶をし、これから交友関係を築く事にした。


「サイっちいつの間にこんな可愛い子と友達になったの?」


「えっと……この子はジェネシスタが人に近い姿にになった状態なんだ。だからこの人はジェネシスタなんだ。」


「そうだとも。色々あってこんな姿になったという訳さ。」


トライアの質問に、サイはどう答えようか悩んだ結果、ありのままの真実を4人に伝える事にした。

ジェネも、サイが自分の正体を明かす事に賛同し、自分の正体は君達も知っているジェネシスタだと素性を顕にした。


「なんで人の姿になったの?」


「この身体はある人によって作られたんだ。ジェネの魂がそれに乗り移って……だから今のジェネは人造人間……的な物だと思う。」


今度はアンジュがサイに質問をし、今のジェネの身体の詳しい事は分からないサイだったが、分からないなりにジェネの身体を作った少年、カッパの言っていた事を噛み砕いて説明した。


「人造人間か!人造人間が学園に入学してくるなんて面白いね!」


「ですが……ジェネさんは魔導王ロード・ジェネラルの生まれ変わりなのですよね?魔導王は確か26歳でこの世を去ったと学園の教科書に乗ってましたが……26歳で学生をやるとは……?」


楽観的なアンジュは人造人間が学園に入学するという非日常感に胸を踊らせていたが、一方冷静なミリーは「26歳の女性が学園に……?」と思い、それを口に出してしまった。


「ま、まぁ肉体はどう見ても10代ぐらいな訳で……問題無いだろう?」


「そ……そうですね。肉体が10代なら……。」


ミリーの言葉を聞いてなんとか苦し紛れの言い訳をするジェネ。ミリーは彼女の言い分を聞いて、なんとなく理解した気持ちになった。


「皆さんご機嫌よう。そのお方は……転校生のジェネ・レーナ・ライジンさんですわね。」


そう言って現れたのは、ルージュだった。


「ルージュっちたまには一緒に昼ごはん食べようよ〜!」


「すみません、ゴーレムのチューニングをしておりましたので……明日なら昼休みを一緒に過ごせますわよ。」


友達なのだからルージュと一緒に弁当を食べたいという気持ちを明かすトライアに、今日はゴーレムのチューニングをしていたから無理だったと答えるルージュ。

だが、明日の昼休みなら一緒にいられると知ったトライアは、それでいいかと納得した。


「来月は夏休みがありますが、学校でゴーレム武闘大会もありますからね。」


その時、あまり話していなかったヘレスの口から発せられた「ゴーレム武闘大会」と言う言葉。

これはその名の通り、学園のゴーレム使い達の中から、学園1のゴーレム使いが決まる大会である。

この事は既に教師達から全生徒に伝達済みで、生徒達はゴーレムの強化と、それを操縦する自身の強化にも励んでいる。


「ドキドキするね、武闘大会。」


「四天王を3人倒したサイ君と、あの瞬殺劇を見せたジェネちゃんは大丈夫そうだけど、私達も早くゴーレム完成させないとね。」


初めてのゴーレム大会に、期待を膨らませるサイと、自分達のゴーレムを完成させなくてはと考えるアンジュ。

サイは、ロッソ隊のトライア以外の3人がゴーレムを使っている所を見た事が無いので、3人もゴーレム使いなのかという疑問を持った。


「アンジュとミリーとヘレスはゴーレム持ってないの?」


「持ってはいるんですが、武闘大会ではもっと強いゴーレムが必要かなと思って……ルージュ様と協力して、強いゴーレムを作ってるんです。ルージュ様はゴーレム作成の練習をしている最中で、その練習がてら私達のゴーレムを一緒に作らせて欲しいとお願いしてきたのです。」


ヘレスによると、ルージュはゴーレム作成の腕を磨く為に日々ゴーレム作成に励んでおり、丁度来月にゴーレム武闘大会があるので、自身のゴーレム作成の経験値とする為に、アンジュ、ミリー、トライア、ヘレスのゴーレム作成に協力してるそうだ。


「4人ともルージュ様と一緒に頑張ってね。」


「なになに〜?強者の余裕かな〜?」


サイの応援に冗談半分でそう返すトライア。サイも4人に負けてられないと、自分もゴーレム作成を頑張らなくちゃなと決意した。


「あはは、僕も頑張らなくちゃな。」


「特訓なら私も手伝うよ?」


ゴーレム武闘大会の為の準備を頑張ろうと決意したサイの言葉を聞いたジェネは、自分の出番かと思い、彼にそう言葉を返した。

その日の夕方から、サイのゴーレムと自身の強化訓練は本格的に始まった。

自分の部屋でジェネの魂の宿ってないジェネシスタに、装甲の硬度を強化する魔法をかけるサイ。

ジェネはゴーレム、ジェネシスタをサイに譲り、彼女は自分の作るゴーレムで武闘大会に挑む事にしたのだった。


「ゴーレム武闘大会まであと1ヶ月か。私が優勝しても恨まないでくれよ?」


「うん。」


「魔導王である私の実力と私の魔法で作られる高性能のゴーレムなら優勝は確実かな〜。仮眠でもしよっと。」


「うん。」


「……どこかよそよそしい態度だなぁ。何を考えている?」


自分の言葉に素っ気ない態度を取るサイを見て、ジェネはサイが何かを考えているな?と思い、彼に問いただした。


「僕はジェネの力を借りずにゴーレム武闘大会に挑むつもりだ……だから、この武闘大会は、僕はジェネの魂の宿ってないこのジェネシスタで挑む!」


「そうかい……頑張れよ。」


ジェネの力は借りずにゴーレム武闘大会を戦い抜く、そう決意したサイの瞳に、彼の確固たる意志を垣間見たジェネは、頑張れよ、とだけ伝え、眠りにつこうとした。


「それはそうと、今眠ると夜眠れなくなるよ?」


「大丈夫、10分だけだから。」


サイはその日はゴーレムの強化だけをして、本格的なゴーレム操縦訓練と、自身の訓練は明日以降となる。

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