第39話「魔導王の決闘」

ジェネに決闘を挑むと宣言した少年、ゲーツが1組の教室を去った後、ジェネの同級生が彼女に気になっている事を質問する。


「ジェネさんのゴーレムはどこにあるの?鞄にしまっているの?」


「いや、ゴーレムはね……つくるんだよ。クリエイション!」


ジェネは女子の疑問に答える為に、目の前で魔法によりゴーレムを作ってみせた。

ジェネの目の前の机の上に魔法陣が現れ、その中からハイゴーレムと同様、30センチ程のゴーレムが姿を現した。

水色の装甲と、背面に背負った剣が特徴のゴーレムだ。ジェネはこれで決闘に挑むつもりでいる。


「これで決闘に挑むのさ。」


「すげー!一からこんな完成度の高いゴーレムを作るなんて!」


「ジェネ、あんな魔法が使えるのか……。」


ジェネの魔法を見た男子生徒はそのゴーレムを見て完成度の高さに驚いている。

サイもジェネがゴーレム作成の魔法を使える事に驚いたが、彼女は前世でゴーレム使いをやっていた事を思い出し、納得した。


それから時間が流れ、決闘の時間である正午になり、ジェネは決闘場に足を運んだ。

決闘場の客席にはそこそこの人数の生徒がゴーレム決闘を観戦しに来ていたが、ジェネは少しも緊張しておらず、寧ろ余裕の表情を保っている。


「ゲーツのやつ、勝手なマネを……。」


「ゲーツ!やっちまえー!」


「転校してきていきなりゴーレム決闘を行うとは……あのジェネという生徒、とても気になるな。」


観客席にはカリバーとその取り巻き、キーンとガリスもおり、自分の名前を使って決闘に挑もうとするゲーツの話を聞いたカリバーは複雑な心境だったが、キーンはゲーツを応援し、ガリスは謎多き存在、ジェネに興味を示している。


「ジェネがどれだけの強さを秘めているのかは良く知っている……けど、ゴーレム使いとしてのジェネを見るのはこれが初めてだ。一体、どんな戦いを見せてくれるんだろう……。」


サイもジェネの戦いを観戦しに来ており、未知数の力を秘めているジェネの戦いはどれ程の物なのかと期待していた。

転校生の初決闘という事で、その決闘が見たい生徒達で客席が埋まる事を見越していたルージュとロッソ隊の面々、アレン、メメントらは遠くの場所を映し出す魔道具、水晶玉で校内から決闘場の様子を見ている。


「この感じ……前世を思い出すな。街のゴーレムバトル大会に出場した事もあったっけ。懐かしい気持ちだ……。」


ジェネはそう呟きながら、決闘の直前で「エッジ」と名付けた自前のゴーレムを決闘舞台に置く。


「覚悟はいいな?女だからって容赦しねぇぞ!」


「こちらこそ容赦はしないよ。取り巻き君。」


「また言いやがったな!俺が勝ったら2回謝らせてやる!」


ジェネに対して闘志を燃やしつつも、決闘相手のゲーツも舞台に愛機の緑色のゴーレム、ビビヨンを置き、魔法操縦桿を出現させ、それを固く握りしめた。

ジェネも魔法操縦桿を両手で握り、これで決闘の準備は整った。それを見て決闘委員会の生徒は決闘開始の合図を告げる。


「決闘……開始!」


「行くぜ!」


決闘が開始された途端に、ゲーツはビビヨンに腰のアックスを抜かせ突撃させる。

脚部のバーニアを吹かしてエッジに急接近するビビヨン。向かい来る敵機に対してジェネは、エッジの腕に隠されたショートダガーを展開し、振り下ろされたビビヨンのアックスを受け止めた。


「はぁっ!!」


その直後、ゲーツの掛け声と共に、ビビヨンがエッジを蹴り飛ばし、エッジが体勢を崩した隙に必殺の予備動作に入る。

ビビヨンのアックスは魔法の炎を纏い、刃が赤く燃え上がり、ビビヨンはそれを構えてエッジ目掛けて突撃する。


「喰らえ!!必殺……ファイヤースラッシュ!!」


必殺の一撃で攻勢に出たゲーツ。会場は一気に盛り上がったが、ジェネは少しも焦ってはいなかった。

彼女はエッジに背中の剣を抜かせ、襲ってくる相手を冷静に待ち受ける。


「トドメだ!!」


「どうかな!?」


エッジとの距離を最大限まで詰め、燃え盛るアックスを振り下ろすビビヨン。だが、振り下ろされたアックスは空振りに終わった。

ビビヨンが頭部を切り裂くはずだったエッジは、宙を華麗に舞い、相手の攻撃を回避していた。


「何っ!?」


「おおお!!」


ゴーレムとは思えない滑らかな動きに驚くゲーツと観客達。エッジはビビヨンの背後に着地し、そのまま動きを止めた。


「何のつもりだ!?まだ勝負は終わってねぇぞ!!」


「いや、終わったよ。」


ゲーツの言葉に決着は着いたと返すジェネ。それを聞いて逆上したゲーツがビビヨンを動かそうとしたその時……。


「何をっ……え?」


パキッ……と音を立て、ビビヨンの頭部は横に真っ二つになった。エッジは宙を舞いながら、ビビヨンの頭部を剣によって切り裂いていたのだ。


「勝者、ジェネ・レーナ・ライジン!」


「転校生すげー!!」


「瞬殺とかやばくね!?」


「ゴーレムの性能も転校生の腕前もプロの冒険者級だよ……。」


決闘場に響き渡る、勝者の名前を呼ぶ決闘委員会の生徒の声と、期待の新人の登場に驚く観客達。

当人のジェネはゴーレムを回収し、客席の方に手を振った。それに対して観客達は手を振り返したが、彼女が手を振ったのはたった1人の男子生徒である。


(どうだった?私の戦いは……?)


(良い戦いだったよ、ジェネ。)


ジェネと目が合ったサイは彼女にサムズアップのジェスチャー見せる。

魔導王の力は、転生し2度姿を変えても尚健在なのだと、彼女自身の実力を持ってしてサイは思い知らされたのだった。


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