第38話「学園生活始めました」

ジェネが新たな姿になってから5日の時が流れた。サイは学校に通い、ジェネは自分も学校に通う為の手続きをしている。

今の姿の自分なら学校に行けるのではないかと考えたジェネは、早速その事をサイの両親に話し、学校に行く許可は取ってある。

その最中、ジェネは自分の身体に隠された秘密を知り、それをサイに見せる事にした。


「サイ見てくれ。凄い事に気付いてしまった!」


「何?凄い事って。」


楽しそうな表情をするジェネを見て、何事かと考えるサイ。 彼女はサイのベッドに座り、こう唱える。


「行くよ?見ててくれよ……チェンジ!ジェネシスタ!」


次の瞬間、ジェネは意識を失ったかのように倒れ込んだ。

彼女はベッドに座っていたのでベッドに倒れて怪我はせずに済んだが、突然意識を失ったジェネを見て戸惑うサイ。


「ジェネ……どうしたの!?」


「サイ、こっちだよ。見たまえ!これが私の言う「凄い事」さ!」


「え……?」


その時、後ろの机の上からジェネの声が聞こえた。

サイが振り向くと、机の上にあったのは、かつてのジェネの身体だったが、今はただのゴーレム、ジェネシスタと呼ぶべき物であった。

だが、そのジェネシスタは以前のようにジェネシスタの声で話し、独りでに動いている。


「ジェネ……ジェネなの!?」


「そうさ!私はゴーレムに魂を乗り移らせる事ができるようになったんだ!凄いだろう?」


「うん、凄いよ!」


サイはゴーレムに乗り移ったジェネを見て、驚きを隠せなかった。彼女はこの魔法に「変化の魔法」と名付けた。そしてジェネはサイにこう言う。


「だけど、ちょっと不便な所もあってね。外に出てみよう。」


「え?うん……。」


サイはジェネシスタに言われるがまま家の外に出た。あの時と同じように、飛行魔法で宙を浮きながら移動するジェネシスタを見て、懐かしさを感じるサイ。

そして2人が外に出ると、ジェネは突然、変化の魔法を唱えた。


「チェンジ!ジェネ・レーナ・ライジン!」


「……あれ?」


しかし、ジェネシスタは意識を失うこと無くそこにいた。


「この通り、2つの身体が一定距離内にいないと変化の魔法は発動できないんだ。」


「そこはちょっと不便だね。」


ジェネシスタによると、変化の魔法にはある程度の縛りがあるそうだ。

だが、これがあれば今まで通りジェネはサイのゴーレム、ジェネシスタとしてゴーレム決闘に挑めるのである。


「私は、いや私達は、あの学園で四天王を3人も倒した。その私達を倒せば学園内では一気に人気者に成り上がれる。それを狙う生徒達は少なくないだろう。」


「うん……そうだね。それに四天王が再戦を挑んでくるかもしれないし。」


「だから私が学園に入学すれば、決闘を挑まれた時は私がゴーレムとなり、君を守る事ができる。私の入学にはそういう意味もあるんだ。」


「そこまで考えていたんだ。流石ジェネ。」


「ふふん、もっと褒めたまえ!」


ジェネの言葉を聞いたサイは、彼女の意見に納得した。それに学園では!これからゴーレム関係の行事があるとサイは知っており、その為にもジェネの力は必要だと考えた。

それからまた時間が流れ、ジェネが新たな姿になってから2週間後、ようやくマージクル学園への入学の手続きを終えた彼女はいよいよ学園に入学する事となった。


「ジェネ・レーナ・ライジンだ。今日からこの学校の生徒になった。皆よろしくね。」


マージクル学園1年A組の教室で、皆の前で挨拶をするジェネ。彼女はその日から晴れてこの学園の生徒になったのだ。

ジェネの姿を見て、1年A組の生徒達が思う事は様々だった。「かわいいな」と思う女子、「彼氏はいるのだろうか」と思う男子、「あんな子この街にいたっけ?」と疑問に思う女子、そして、彼女の制服姿が新鮮に写るサイ。


「ではジェネさん。あの空いてる席に座ってください。」


「はい。」


挨拶を終えたジェネは、 先生の言われた通り、空いてる席に座る。全体的に見て後ろの方に座っているサイの隣の席だ


「よろしくね、サイ。」


「うん、よろしく……。」


そうしてジェネの挨拶が終わると、ジェネと話をしたくて堪らない周りの生徒達は一斉にジェネの元に駆け寄ってきた。


「ジェネちゃん!貴方どこからか引っ越してきた人なの?」


「よければ友達になろうよ!」


「冒険者になりたくてこの学園に入学したの?」


「あはは、いやー人気者は大変だねぇ。」


次々と質問してくる生徒達を前にしても平気でいられるジェネを見て、メンタル強いなとサイは思った。

それはそうと、隣が騒がしくて面倒だとも思っていたサイの前に、教室のドアを勢いよく開けてある生徒が現れる。


「やいこらサイてめー!俺とゴーレム決闘しろ!」


「……だ、誰ですか?」


突然サイにゴーレム決闘を挑んできた謎の男子生徒。サイが彼に名前を聞くと、その男子生徒はこう答える。


「覚えてねぇのかよ!カリバーさんの忠実な部下、ゲーツだ!お前に負けたカリバーさんの威厳を取り戻す為にお前に決闘を挑む!」


「部下か……取り巻きの間違いじゃないのかい?」


名前を名乗ったゲーツにそう返すジェネ。四天王であるカリバーの部下相手にそんな言葉を返すのは不味いのでは……そう思った他の生徒達の間に緊張が走る。


「何っ!?聞き捨てならねぇな!お前誰だよ?見ねぇ顔だな!ゴーレムは持ってるか?」


「勿論。私が気に入らないかい?」


「そうだ!サイの前にまずお前を決闘で負かして今の発言を訂正させてやる!正午に決闘場に来い!」


「いいよ。ただし……私が勝ったらサイへの決闘を取り消す事。彼は私の友達なんでね。私は友達を要らんトラブルから助けたいのさ。」


「ふん!いいぜ!」


そうして、サイとゲーツが決闘するよりも先に、ゲーツを怒らせたジェネと、彼女の発言に怒りを覚えたゲーツが決闘をする事になった。

ジェネはゴーレムを持っていないはずだが、一体どうやってゴーレム決闘に挑むつもりなのだろうか……。


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