第34話「継承」
「ジェネ……ライザン……?」
仮面の少年、シャドウ・ファングは、この国を戦争から守る為に、人造人間、ジェネライザンを作るとサイに明かした。
その為には、ジェネシスタの力が必要だと言う。
「そうさ。だけど、これを動かすには膨大な量の魔力が必要なんだ。そして、僕はある日ジェネシスタというものを目にした。それがジェネライザン起動の鍵になりうると確信した僕は、君からそれを奪おうと決めた!」
「主様!」
その時、シャドウが従えていた男が懐から動かないジェネシスタを取り出し、それをシャドウに渡す。
「ジェネシスタ!動いてない……何をした?」
サイは、動かないジェネシスタを見て、ゴーレムにも効く毒を思い浮かべたが、彼の予想は外れる事になる。
「これを使ったのさ。」
「それは……!」
シャドウは、自分の右手の薬指にはめられた指輪をサイに見せつけた。
緑色の宝石が埋め込まれている銀色の指輪だ。
「これは一定範囲内のゴーレムの動きを止める事ができる魔道具、「静寂の指輪」だ。これによりそれの意識を奪った。」
「それがある限りジェネシスタは起きないのか……!」
「そうだ!しかしもうジェネシスタは助からないよ……今からこれの魂は、そのジェネライザンに吸収されるからね!人の魂は魔力の源だ!それをジェネライザンに吸収させる事でそれは完璧な兵器となる! このジェネライザン起動装置により、君のゴーレムの魔力は魂ごとジェネライザンに吸収されるのだ!」
「やめろ!!」
シャドウが今からジェネライザンを起動させる事を声高らかに宣言すると、彼はジェネシスタを持った右手を高らかに掲げる。
そして左手の薬指にはめた「ジェネライザン起動装置」こと、「継承の指輪」も同時に高く掲げ、継承の指輪にはめられた紫色の宝石が輝いた瞬間、ジェネシスタの身体から青い魔力(人の目には赤いオーラのように見える)が発せられ、その魔力がガラスケースの中のジェネライザンへと吸い込まれていく。
「ジェネシスタ!!」
「目覚めの儀式は始まった!後は君のゴーレムが枯れ果て、ジェネライザンが目覚めるのを待つだけだ!」
焦るサイに対してそう言うシャドウは、手からジェネシスタの身体を離し、そこから後ずさりしていった。
「ジェネシスタ!!……うっ……!!」
サイは宙に浮くジェネシスタに近づき、その身体に触れようとするが、身体から発せられる高濃度の魔力に手を焼かれ、迂闊に触れなかった。
「無理に触ろうとすると手が死ぬよ?」
「……それでも……!!」
ジェネシスタから発せられる魔力がサイの手を拒む。
しかし、それでも諦めずに彼女に手を伸ばすサイは、手が焼ける事などお構い無しだった。
「君の手が先に死ぬか、それが枯れ果てるのが先か見ものだねぇ。」
「ヒール!!」
サイは自らの手に回復魔法、ヒールをかけながらジェネシスタを掴もうとし、その姿を嘲笑うシャドウは、とても楽しそうな表情を浮かべていた。
「ぐっ……あっ……!!」
ヒールされては焼かれを繰り返すサイだったが、その痛みは消す事ができず、彼の表情は苦悶に満ちていた。
「そうまでしてゴーレム決闘に勝ちたいかい!?ゴーレム決闘で勝つのはそんなに気持ちがいい事なのかい!?」
サイを挑発するかのような問いかけをするシャドウに、彼はそれを否定しようとした。
「違う!!僕にとってジェネシスタは大切な存在なんだ!!ジェネシスタは僕を救ってくれた……僕の恩人なんだ!!それに……僕は……ジェネシスタに助けてもらってばかりで……全然……恩返し……できてないから……っ!僕もジェネシスタを助けたい!!」
例えジェネシスタに届かなくても、それでも、自分の気持ちを声に出さずにはいられなかったサイ。
届かない筈の声、しかしそんな彼の声を、ジェネシスタは深い暗闇の底から聞いていた。
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……ここは……どこだ……?とても暗い……何も見えない……あれは……光……?ここからでは届きそうにない程……遠くにあるな……。
私は暗闇の遥か上の方に眩い光があるのを見た。ここからその光まではかなりの距離があるように見える。
頭では分かっているんだ、あそこには届かないってことを。でも、身体はあの光を求める。
あそこに行きたい。
ふとそう思った瞬間、身体が軽くなって、私の身体は舞い上がっていた。
今ならあの光に届くかもしれない。 そう確信した私は、あの光に手を伸ばした。
ジェネシスタ!!
その声は……サイ?そこにいるのか?そうか……あの光は君なのか。
分かった。今そこに行くよ。全く、君は私がいないと……
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