第29話「合同模擬試験、開始」

サイとメメントの決闘から2週間の時が流れ、1、2合同模擬試験の時が訪れる。

サイは模擬試験があると知らされてからこの約1ヶ月間のうちに必死で魔法の特訓をし、魔法の強化に励んだ。

サイは魔法の初歩はできるが、それ以上の魔法は使えずにいた。

なので彼は魔法の腕を鍛え、自分の魔法を「1年生の中では上等なレベル」にまで鍛え上げる事を目標とし、自分に特訓を課した。


サイは時にジェネシスタに魔法を上手く使う為のコツを教わり、時に友人のエルストと共に魔法の特訓をし、模擬試験までの日々を暮らしてきた。

そして、いよいよその時がやって来る……。


試験は体育服で行う事になっており、男子は男子更衣室で、女子は女子更衣室で着替えを行っている。

ここは女子更衣室。彼女らは友人同士で話をしながら着替えをしていた。


「ついに来たねぇ、合同模擬試験!私はB組の女子と組んだけど、皆は誰と組んだ?」


「ウチはA組女子と組んだよー。」


「私はA組の男子生徒をパートナーにしました。」


「わ、私はB組の男の子と組みました……。」


アンジュはトライア、ミリー、ヘレスに誰と組んだか聞き、トライアはA組女子、ミリーはA組男子、ヘレスはB組男子と組んだと答えた。

1、2年合同模擬試験なので、2年生である彼女らが組む相手は1年生だ。


「サイっちと組めなかったの残念だったな〜。」


「サイ君には彼の組みたい相手がいるんだよ。アレン君っていう子がさ。」


「それもそうだね〜。」


トライアはサイと組みたかったらしく、それができなくて不服そうにしていたが、アンジュは彼には彼の組みたい相手がいるんだ、と彼女を諭した。


一方、そのサイとアレンは体操服への着替えを終え、校庭に来ていた。


「アレン先輩、不束者ですが、今日はよろしくお願いします!」


「うん、よろしく。(うわーとても礼儀良い子だなー!僕とは最近会ったばかりなのに……それに、四天王に物腰柔らかに対応するその態度……僕とはまるで別人だぁ……。)」


サイはゴーレム決闘の四天王と組むという事でとても緊張していたが、アレンはそれ以上に緊張していた。

ゴーレム決闘の四天王として、なんとか体裁を整えており、なんとかそれでサイは誤魔化す事ができていた。


そして、1年生と2年生の全生徒が集まった所で、体育の先生が彼らに列を組ませ、待機させた。

そこに、遅れて1人の男が現れる。スキンヘッド、そして大柄な体格の男で、彼が今回の模擬試験で戦う相手かと生徒達は予想した。


「今日はギルド「シャインルビー」に所属する1級冒険者、ラビス・マリーノさんに来てもらった。彼が今回の模擬試験の相手だ。今日は彼との模擬試験を通して、戦闘に必要な事を学んでもらう。」


先生がそう言った後、ラビスも生徒達への挨拶をする。


「ラビス・マリーノだ!皆良い顔をしているな!今日は俺がキッチリ鍛えてやるから覚悟しろよ!ハッハッハ!」


生徒達は彼の挨拶を聞いて、「暑苦しそうな人だなー。」「僕弱いから手加減してほしいな。」「ラビスさんを倒せば俺も1級冒険者と同レベルって事になるのか!」と各々脳内で彼に感じた事を思い浮かべていた。


そして、生徒達は先生に列にされ、1番目の生徒のペアから順番にラビスと模擬試験を始める事となる。

最初の生徒は1年男子のゲールとヘレスのペアだ。模擬試験は早速執り行われる事となった。


「では、ゲール、ヘレスペア、試験開始!」


「さぁ来い!少年少女達!」


先生の一言によって模擬試験は始まり、ラビスは戦闘の構えをとった。


「サンドウォール!!」


まずはヘレスが魔法、サンドウォールを発動。ラビスの前に大きな砂の壁を作り出し、彼の視界を塞いだ。


「行きますよヘレス先輩!」


「はい!」


そして、敵の視界が塞がれたその一瞬のうちに右方向へヘレスが、左方向へゲールが駆け出した。


「2方向から攻撃を仕掛けるつもりか!やるね!」


「いえ、相手はプロの冒険者です。油断は禁物です……。」


ヘレスの作戦に関心したアンジュだったが、ミリーは、相手は油断ならない冒険者だと返す。


「プチインパクト!!」


ミリーの言っていた事は的中した。ラビスは相手は左右から攻めてくると直ちに判断し、両手を左右に突き出し、魔法、「プチインパクト」をそれぞれの手の平から放った。


「ッ……!!」


「キャッ……!!」


プチインパクトなので、高威力のインパクトよりは威力は抑えられているが、それでも一撃で人を吹き飛ばすぐらいの威力はあった。

プチインパクトを受けたゲールとヘレスは地面に倒れてしまった。

攻撃を繰り出す前にまんまとやられてしまう。これが学生と1級冒険者との圧倒的な差だ。この1級冒険者に生徒が勝つには……。


「惜しかったな2人とも!左右からの同時攻撃は強力なモンスターなどにも有効なので、間違った行動では無かったぞ!フンッ!」


ラビスは、2人の健闘を称え、目の前の壁を破壊した。その時……。


「今だ!!」


「!!」


彼は防御魔法、シールドを展開し、なんとか事なきを得た。

何故彼はシールドを展開したのか、ゲールの言った「今だ」とは何なのか、それは……。

驚く事に、破壊したサンドウォールの向こうから、誰もいないはずのそこから攻撃魔法が、アクアショットが飛んできたのだ。

予め魔法をその場に設置しておき、敵の不意をついて発射し、油断した敵を倒す、その為に編み出された魔法、言わば「置き魔法」である。


「……やるな、置き魔法とは!!」


この1級冒険者に生徒が勝つには、知恵を使い、相手を欺く他ない。

まさか置き魔法を使われるとは。そう感じたラビスは彼らの実力を率直に高く評価した。


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