第26話「勝利を掴む光の刃」
アビスは魔弾を連射してジェネシスタを攻撃し、彼女はそれを飛行魔法でなんとか回避していた。
敵の目的は私を自分に近づかせ、接近した所を叩く事だろう、と考えたジェネシスタは、再び光刃を展開し、弾幕を掻い潜ってアビスに接近した。
「はぁっ!!」
そして、アビスの懐に入ったジェネシスタは勢いよく光刃を振り下ろして敵の身体を切り裂こうとした。
しかし、メメントにとってそれは想定内の事だった……。
「フライトアップ。」
「何っ?」
メメントのその一言を聞いてサイは驚いた。
彼女がルージュとトライアの決闘では使わなかったフライトアップを使ったことが、彼にとっては意外だった。
アビスの身体は宙に浮き上がり、そのままジェネシスタの攻撃を後方に下がる事で回避する。
四天王ともなれば、並の人間が使えない魔法を使えるかもしれないという事はジェネシスタも承知の上だったが、それをここぞと言う時まで隠していたメメントには、サイとジェネシスタは嵌められたと感じた。
「ここに来て隠し球を使ってきたか……!」
「まだだ。」
続けてアビスは両脚を身体と切り離し、それをメメントが遠隔操作して見せた。
これがアビスの更なる隠し技、レッグビットである。
宙を舞う両脚は、足裏から光線を放ちジェネシスタに攻撃を仕掛け、彼女はそれを空中で回避しつつ、アビス本体を仕留める為に、バーニアを吹かして加速しアビスに接近しようとした。
そのスピードによって彼女はアビスの両脚を振り切る事ができた。
チャンスは今しか無いと思い、サイはジェネシスタを応援したが、メメントの顔から余裕の表情は消えない。
「両脚を振り切った……ジェネシスタ、いけ!」
「甘いな……。」
メメントがそう呟いた直後、アビスのレッグビットは急加速し、一瞬のうちに飛行するジェネシスタに追いついてしまう。
さらにレッグビットはジェネシスタの左右に位置取り、足裏から結界を展開し、それによって彼女は拘束されてしまった。
「ジェネシスタ!!」
「このっ……!!」
ジェネシスタはすぐさま光刃で結界を切り裂いたが、結界は硬く、光刃では傷1つ付けられない。
そして、結界を抜け出せない彼女の前にアビスがフライトアップで飛行しながら近寄ってきた。
そしてメメントはサイに自分の揺るぎない意志を明かす。
「私は勝たなければならない……そうしなければサーベラス家に泥を塗る事になる。」
「サーベラス家……確か魔術師アルカ・サーベラスによって作られた名家、ですよね。」
「サイ・トループ……そうだ、私は名家に生まれた。だから勝たなければならない。私の為に負けてくれないか?」
「嫌です!」
「いや、君は負ける。」
「僕は勝つ!!アンジュの、トライアの、ミリーの、ヘレスの悲しむ顔は見たくないから!!それに、4人はルージュ様に託された大切な存在なんだ……4人が貴方によって酷い目に合わされるのなら……ルージュ様に代わって僕が4人を守る!!」
自分の負けられない理由を明かしたメメントに対して、サイもまた自分が負けられない理由を明かす。
それに呼応するように、ジェネシスタは魔法によって結界をアビスの両脚ごと破壊した。
彼女が使った魔法はオーラブラスト、広範囲、高威力の魔法である。
ジェネシスタを中心に発生した破壊エネルギーは結界とアビスの両脚を破壊し、回避に遅れたアビス本体の左手にもダメージを与える事ができた。
「馬鹿な……結界魔法を……。」
「はぁーっ!!」
そして唖然とするメメントに畳み掛けるように、ジェネシスタはアビスに突撃し、光刃を振り下ろした。
それに対してメメントは短剣を構え、それで光刃を受け止めた。
「私の本気、見せちゃうよ!!」
ジェネシスタはそう言うと、光刃に魔力を注ぎ込み、その出力を最大限にまで到達させた。
威力が向上した光刃は、マジックコーティングが施された短剣にヒビを入れ、それを見たメメントは焦りを隠せなかった。
魔法に耐性のある短剣にヒビを入れる程の威力の魔法……これが魔導王の本気かと、この決闘をもって体感した。
「いけ!!ジェネシスタ!!」
「あぁ!!」
そしてジェネシスタの光刃はアビスの短剣を切り裂き、そのままの勢いでアビスの首を切り落とした。
決闘舞台に転がるアビスの首を見て一瞬何が起こったのかと戸惑うメメントだったが、瞬時に理解する……自分がサイに負けたという事実を。
「勝者……サイ・トループ!!」
決闘場に決闘委員会の生徒の言葉が響き渡る。この決闘を制したのは、サイとジェネシスタだった。
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