第25話「3度、四天王戦」

決闘舞台の前に立ったサイは、ポケットから取り出したジェネシスタを決闘舞台に置いた。


「ジェネシスタ、相手は四天王だ。油断しないでね。」


「あぁ。気をつけるよ。そして、必ず君に勝利を届ける。」


「うん……頼んだ!」


ジェネシスタは、サイに勝利を約束し、目の前のアビス・ルビオン、そしてメメントの方に視線を向けた。

先程の戦いでメメントは魔力解放を使わなかった。

だがそれでも彼女は充分強い。

しかし、魔導王の生まれ変わりである私は負ける気がしない。

私なら、相手が四天王だろうと倒してみせる。

そう考えたジェネシスタは、臨戦態勢に入った。


「学園にいる間に君の噂は聞いてるよ。女の子を身の回りに置いて自分のハーレムを作ろうとしているみたいだね。女の子は君の機嫌を取る為の道具じゃないって事、分かるかい?」


「君もその仲間になる、必ずね。」


ジェネシスタの問いかけ、余裕の表情を見せるメメント。

彼女は自宅にいる侍女2人の他にも、学園内にも複数のガールフレンドを持っている。

メメントの目的は、気に入った女学生を手中に納め、それを利用した快適な学園生活を送る事である。

そして、今彼女の目の前にいるサイは、決闘に負けたらジェネシスタを差し出すと宣言した。

この気を逃すまいと考えたメメントは、操縦桿を握り締め、彼女を手に入れる為に本気を出す事を決意した。


「決闘……開始!!」


そしてついに、決闘委員会の生徒の合図によって、サイとメメントの決闘は始まった。

ジェネシスタはその直後、すぐに両手に光刃を形成し、それに対してアビスは短剣を抜き、互いが互いを睨み、そして突撃した。


ジェネシスタとアビスの距離は限界まで近づき、そして2人の刃が激しくぶつかった。

互いが互いの武器を押し合い、その鍔迫り合いの中でジェネシスタは、敵のある特徴に気づいた。


「なるほど……マジックコーティング……それで魔力で形成された光刃を受け止める事ができるのか。」


マジックコーティング、特殊な塗料を物に塗布すると、その物に魔法に対する耐性が生まれるのだ。

メメントは既に、そのマジックコーティングという最新技術の賜物を手中に収めていたようだ。

この相手に対してどう戦うかと考えるジェネシスタ。

そんな彼女を、アビスは脚で蹴り飛ばして一旦距離を置いた。

ハイゴーレムからすれば、プチゴーレムの身体は軽く、楽々蹴り飛ばす事ができた。


そしてアビスは、右手の手甲の先端に設けられた砲口から魔弾を連射し、ジェネシスタを牽制した。

しかしジェネシスタは、飛行魔法フライトアップで宙を舞い回避する。


「手強いな……。」


「それはどーも!」


ジェネシスタは攻撃を受けてばかりではいられず、前方に長方形の結界を張り、フライトアップの飛行状態で、魔弾を連射するアビスに向かって突撃した。

結界で魔弾を防ぎつつアビスに近づき、そして魔導王である自分にしかできないとされている、ある小技を使って彼女はメメントを驚かせた。


「捕らえる!!」


「!?」


なんと、彼女が前に突き出していた結界がグニャリと曲がり、アビスの身体に巻き付き、アビスを拘束したのだった。

この結界の使い方は、結界のあり方を拡大解釈し、自由に使いこなせる物にしかできない芸当だ。

この意外な結界の利用方法にはサイも驚いたが、彼は今ならメメントに勝てると確信した。


「いけ!!ジェネシスタ!!」


「あぁ!!このまま首を取る!!」


ジェネシスタはそう決心し、右手に光刃を形成し、動けない状態のアビスの首を切り落とそうとした。




このままではアビスの首は落とされ、私は負ける。

アンジュ、ミリー、トライア、ヘレス、せっかく手に入れた女達が私の物では無くなるんだ。

2人の姉はずっと私に厳しく当たってきたが、両親は違った。

特にゴーレム使いの父は私にゴーレム使いという、私が自由に生きられる世界を教えてくれた。

私は彼に認めてもらいたい。

その為にも、こんな所で負ける訳にはいかない……。




メメントの脳裏に浮かんだのは、意地悪な2人の姉と優しい父の姿。

何のために自分がここにいて、ゴーレム決闘をしているのか、今一度見つめ直したメメントは決意した。

勝利する……ただひたすらゴーレム決闘に勝ち続け、自分の願いを叶え続ける。

その為にも、まず目の前のこの少年を倒さなければ……。

そう考えていたメメントの体の中には、既に魔力解放を使える程の魔力が充填されていた。


「例え相手が魔導王だろうと……私はやる……!!」


その瞬間、アビスの魔力が解放され、その溢れんばかりの力で結界を内から破壊し、アビスは自由の身となった。


「そう来たか……!!」


ジェネシスタはそう呟きながら、後方に飛び退いてアビスと距離を置いたが、そんな彼女に対してアビスは飛びかかり一気に距離を詰めた。


「!!」


「逃がさない……!!」


メメントはアビスに、短剣を勢いよく振り下ろさせた。

それを回避するジェネシスタだったが、アビスは連続で斬撃を繰り返し、ジェネシスタを追い詰めようとした。


「キリがない……バインドッ!!」


ジェネシスタは激しい斬撃を掻い潜りながら拘束魔法、バインドを発動。

アビス目掛けて鎖を四方から伸ばし、アビスの両手両足を縛り付けて拘束した。


「今度こそ首を!!」


「させない……!!」


しかし、アビスを縛るバインドは、魔力解放によってパワーの上昇したアビスには簡単に破られてしまった。

危険なモンスターの動きを止める為のバインド、それをゴーレムに使ったというのに、相手は簡単にそれを破ってみせた。


「なんて強さなんだ……!!」


「私は勝つよ、この勝負……。」


サイは、メメントから発せられる圧に気圧されてしまった。

このアビス・ルビオンに対して、ジェネシスタは勝ち目はあるのだろうか……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る