第23話「メメントは侍らす」

ルージュとメメントの決闘は、メメントの勝利に終わり、約束通りロッソ隊はメメントの侍女となる事になった。


「四天王同士の戦い、凄かったな。」


「まさかルージュ様が負けるなんて……。」


「相手は同じ四天王のメメント先輩なんだ。何が起こるか分からないよ。」


生徒達は今日の決闘の感想を喋りながら決闘場を後にする。

一方、決闘舞台に倒れたニンギルを回収したルージュの元に、ロッソ隊が駆けつけた。


「ルージュ様……。」


「申し訳ございません、負けてしまいました。」


「お疲れ様でした。」


「強化したニンギルちゃん強かったよ!」


「メメントパイセンも強かったけど、ルージュっちも頑張ってたよ!」


「し、四天王同士の戦い、凄かったです……。」


「皆さん……。」


決闘に負けた事を悔やむルージュだったが、アンジュ達は彼女の健闘を称え、自分達の心配をさせないように振舞った。

そんな彼女らの元に、決闘舞台からアビスを回収したメメントが現れる。


「仲間思いの良い子達じゃないか……欲しい……。」


ロッソ隊は今から、決闘に勝利したメメントの侍女となる。

ルージュは、メメントに彼女らを託す前に、彼女に1つ願いを託した。


「メメントさん。貴方に1つお願いがあります。彼女らも乙女です。どうか大事に扱ってくださいまし。」


「……分かった。心がけよう。 」


メメントはルージュの約束に対して、曖昧な言葉を返した。

ルージュは彼女に託してもいいものかと考えたが、決闘で負けた以上はそうせざるを得ない。

ロッソ隊は、メメントの元に歩み寄り、彼女の侍女になる事を誓った。


「宜しくお願いします。メメント先輩。」


「よろしくー、メメントパイセン。」


「よ、宜しくお願いします……。」


「これから仲良くしましょうね。」


「あぁ。仲良くしよう。私の可愛い女の子達……今日から私が、君達のリーダーだ。」


メメントは彼女らと挨拶を交わした後、彼女らを自分の家に連れて帰った。

アンジュ達がメメントの元でどんな扱いをされたのかは、彼女自身しか知らない。




翌日、アンジュ達はサイと中庭で昼食を食べていた。

学校にいる間はメメントから離れ、自由でいられるのだ。


「昨日はルージュ様が負けて残念だったね。」


「まぁルージュっちとの関係が終わった訳じゃないから。これからはタダの友達って事で。」


「そうだよね!メメント先輩のお世話は大変だけど、ルージュ様と会える事に変わりは無いから!」


サイの言葉にそう返すトライアとアンジュ。今まではただの友達では無かったのか?という疑問を抱いたサイだったが、まぁいいかと自己完結させた。


「そうですね。ルージュ様と会える機会はまだ……。」


そしてヘレスがそう言おうとしたその時、そこにメメントが現れた。

アンジュ達にある事を伝える為に、彼女はここに来たのだ。


「4人ともここにいたか。私のゴーレムは昨日の決闘でかなり傷ついた。整備をしてくれ。」


メメントにそう言われ、アンジュは彼女に抗議しようとした。


「そんな……学校では自由なんじゃ?」


「学校ではいつ誰から決闘を挑まれるか分からない。だからゴーレムの整備は今すぐしなければならない。私は昨日魔力解放をした反動で疲れている。だから君達に頼んでいるんだ。」


「でもまだ弁当食べて……」


自分達にゴーレムの整備を強いるメメントに対して、再び反論しようとしたアンジュだったが、その時メメントはヘレスの弁当箱を取り上げ、彼女の弁当を地面に零してみせた。


「何すんのよ!!」


そんな事をされたら当然怒らない筈も無く、トライアが横暴な行為をするメメントに怒りを顕にした。


「私の女になるからには私の命令は絶対だと思え。」


「そんな……!!」


傍若無人な事を言うメメントにアンジュ、ミリー、ヘレスは、彼女に異論を返そうとしたが、メメントの威圧的な瞳に気圧され、何も言い返す事ができなかった。

しかし、トライアは違った。


「そんなの嫌なんですけど!いくら決闘で勝ったとは言え横暴過ぎない?」


「この学園では勝者が全てだ。」


だが、トライアの言葉がメメントの心に響く事は無かった。


「貴方、侍女が2人いましたよね?まさか、その子達にも……?」


「彼女達はいい子だよ。失敗する事もあるけど、ちょっと褒めれば朝食の準備から部屋の掃除まで何でもしてくれる。何でもね。」


サイは変わらずこの場にいたのだが、女同士の言い争いの間に、彼が割って入る余地など無く、ただこの状況を静観する他無かった。

メメントは、ミリーの質問に悪びれる様子も無くそう答えた。

それが再び、彼女達の逆鱗に触れたのだった。


「女はなぁ、アンタの奴隷なんかじゃねえよ……!!」


トライアはメメントを睨み、彼女に自分の意思をぶつけた。

それを聞いたメメントは、ある提案を彼女らに持ちかけた。


「そうか、なら決闘でもするか?」


「良いよ?私ゴーレム持ってるから。」


それがメメントの提案だった。この学園ではゴーレム決闘によって生徒間でのトラブルを解消するのが風習となっている。

彼女との挑戦を引き受けたのはトライアだ。


「ト、トライアが勝ったら、あの2人も含めて侍女を全員、貴方の手から解放してください。」


「良いよ。ただし、私が勝ったら今後も君達は私の侍女だ。それでいいね?」


アンジュ達は侍女の継続を、メメントは侍女の解放を決闘に賭ける物とし、今日の放課後、決闘場にてメメントとトライアは決闘をする事に決めた。


サイは彼女らの友人として、決闘を見に行く事を決め、そして同時に、ある決意をしていた。

彼は決闘場にジェネシスタを連れていくと決めたのだ。

トライアが負けた場合、その直後に自分がメメントに決闘を申し込む為だ。

賭けるのは侍女の解放。

サイは、いざと言う時は自分がメメントと戦うかもしれないという心構えをして、放課後が来るのを待った。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る