第21話「パートナーは何方」
昼休みになったので、サイとエルストは、教室で弁当を食べていた。
エルストがサイの席の傍に椅子を持ってきて、それに座って彼と一緒に弁当を食べている。
2人の話し相手として、その場にはジェネシスタもいた。
「なぁ、ジェネシスタって体育の授業の時はどこにいたんだ?」
「サイの鞄の中で寝てたよ。あそこは居心地が良いんだ。」
「鞄の中か……。」
エルストが気になっていた事をジェネシスタに聞くと、彼女はそう答えてくれた。
「それはそうと、エルストは模擬試験の相手誰と組むか決めた?」
「模擬試験?なんだねそれは?」
一方サイは、先程先生から話された1、2合同模擬試験の事を思い出し、試験の際に組むパートナーは誰にするのかとエルストに聞いた。
鞄の中では眠っていたのでサイ達の話が分からなかったジェネシスタには、サイが合同模擬試験ついての説明をし、彼女はそれを理解した。
「なるほど。生徒と1級冒険者の2対1で模擬試験をするのか……2人は誰と組むんだい?サイはアンジュ達の中の誰かと組むのかい?」
「いや、あの4人とは別で組みたい相手がいるんだ。」
「浮気かね〜?」
「と、友達だから!」
サイがガールフレンドの4人とは別の人と組みたい、と言うとジェネシスタはサイを嬉々としてからかった。
サイとジェネシスタの付き合いはまだ僅かなので、サイはジェネシスタにからかわれるのはまだ慣れておらず、その度に彼はジェネシスタに振り回されていた。
「俺は従兄弟が2人いるんだけど、どっちと組もうか悩んでるんだ。1人は攻撃魔法が得意な兄ちゃんで、もう1人は支援魔法が得意な姉ちゃんだ。」
「相手はプロの冒険者だから、慎重に選ばないとね。」
サイとエルスト、ジェネシスタは、模擬試験のパートナーを誰にするかという話や、世間話などをして昼休みを過ごし、時間はあっという間に過ぎていった。
放課後は、家が近いアンジュ、トライアと帰宅するサイ。
そう言えば、アンジュら4人のクラスを聞いてなかったなと思ったサイは、彼女らのクラスを2人に聞いた。
「ねぇ、アンジュとトライア、それとミリーにヘレスのクラスはどこなの?どこだか聞いてなかったから……。」
「私達4人ともA組だよ?」
「そ、同じクラスから4人選ばれたんだよねー。」
「選ばれたって何に……?」
サイはトライアの言葉が気になり、彼女に質問した。
「ここだけの話……私たちはロッ……ってー!何するのよ!」
「サイ君にとは言えそう易々と秘密を明かしちゃダメでしょー!ごめんねサイ君、この秘密はまだ言えないんだ。」
「秘密……?」
アンジュは、自分達の秘密を明かそうとするトライアの頭を叩いてそれを止めた。
サイはただ、アンジュやトライアが自分に隠し事をしているという事実だけは理解する。
何を隠しているのかは、詮索してはいけない気がして、サイは今聞いた事は記憶の奥底に押し込む事にした。
「それはそうと、サイ君が言いたい事って、合同模擬試験の事でしょ?もしかして、私達と組みたいの?いやーお姉さん嬉しいなー。」
アンジュは話を元に戻し、サイが言いたかったであろう事を言い当ててみせた。
「そう、それだよ。でも、アンジュ達は選択肢の中にはあるんだけど、僕はもう1つの選択肢を選びたいと考えているんだ。」
サイにそう言われて、サイと組みたいと思っていたトライアは落胆する様子を見せた。
「え〜?それはショック……。」
「ごめん……でも、その人は魔法の腕はこの学園で1番って聞いたから。」
「もしかしてそれって……。 」
「うん。四天王の1人、アレン・ダレアス。彼と組みたいと思ってる。」
アレン・ダレアス。それがサイが組みたいと思っている相手だった。
_________________
アレン・ダレアス。マージクル学園2年A組の男子生徒である。
彼は1年の春、ゴーレム決闘で当時の四天王のうち3人を倒してみせた。
そんな彼の強さの源は、生まれ持った彼自身の才能と、絶え間ない努力の賜物である。
アレンは毎日、自宅に帰り、宿題を終えた後、魔法の特訓とゴーレム操縦の特訓に励んでいる。
以前はルージュに負けてしまったが、そんな事で落ち込んではいられない、と彼は思い、魔法とゴーレム操縦、両方の特訓により心血を注いだ。
彼は学校で1、2年合同模擬試験があると知るやいなや、それに備えて魔法の腕に磨きをかける事を決めた。
「ストーンショット!結界!サンダーショット!」
彼の特訓の相手は成人男性よりも背丈の高い大きなゴーレムだ。
それを作ったのは彼の父である。
アレンは、ゴーレムに攻撃を当て、ゴーレムの攻撃から身を守る事で魔法の練度を高める特訓をしている。
その日も夜になるまで特訓した後、疲れ果てた状態で家の中に帰っていった。
「ふぅ……。」
彼は疲れた体を癒す為に、疲れを癒す効能のある粉を入れた湯船に肩まで浸かった。
それによって彼の疲れはみるみる回復していく。
だが、疲れの解れていく身体とは反対に、彼は心に迷いを抱いていた。
合同模擬試験、それが彼を悩ませる悩みの種だった。
「誰と組もう!……僕なんかが組める相手なんているのかな……四天王って理由で敬遠されそうだけど……そうだ!僕と性格が似てる生徒と組みたいな!性格が似てると話とかしやすそうだし。そうしよう!あと女子と組める自信無いから男子と組もう。」
悩んだ末に、彼は模擬試験では自分に近い性格の1年男子と組む事を決めたのだった。
「……彼とか……どうかな……。」
そして、アレンの脳裏にある少年の名前が思い浮かんだ。
彼は、その少年の境遇をかつての自分の姿に重ね合わせ、彼なら自分と気が合うかもしれないと考えたのだ。
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