第20話「学園の日常」

サイ達のドスバード討伐から3日が経過したある日、その日サイ達マージクル学園の1年A組は魔法の授業を受けていた。


運動服を着たサイの目の前には試験用ゴーレムが立ちはだかっている。

これを魔法で倒すこと、それがこの授業の課題だ。

生徒は2人1組のペアを組んで、お互いの戦いを評価するという形式を取っている。


「ファイヤーショット!!」


サイは火の球を飛ばしゴーレムを攻撃するが、火力が弱くゴーレムを怯ませる事すらできなかった。

そしてゴーレムは手の平に高密度の魔力の塊を形成し、それを撃とうとしてくる。


「えーっと、どうしよう……。」


「サイ!!防御魔法だ!!」


戸惑うサイだったが、その後ろで彼の戦う姿を見ていたエルストが指示を出した。

次の瞬間、サイ目掛けて魔力弾を手の平から発射するゴーレム。

サイは、咄嗟に防御魔法を使った。


「シールド!!」


サイが両手を前に突き出して、シールド、と唱えると彼の目の前に魔法の盾が出現し、魔力弾からサイを守ってくれた。


「サイ!!弱点の胸のクリスタルを狙うんだ!!」


「分かった!!」


続けてエルストは、サイに相手の弱点を狙うよう指示を出した。

それを聞いたサイは、手の平に水の球を形成し、それをゴーレムの弱点である胸の青い水晶にぶつけようとした。


「アクアショット!!」


サイの手の平から放たれたアクアショットは、ゴーレムの弱点目掛けて飛翔し、そして見事、ゴーレムの弱点に直撃した。

そして、弱点を攻撃されたゴーレムは、動きを止めた。


「サイ・トループ、合格!!」


「やった……!!」


先生に合格と言われ、喜ぶサイ。

彼はエルストの元に向かい、自分の戦いの様子はエルストから見てどうだったかと聞いた。


「エルスト。僕どうだったかな。」


「いざと言う時の咄嗟の判断が鈍かったな。その場その場で最適の魔法を瞬時に見つけ出し、それを行使する、これからはそれを心がけていけ。」


「分かった。」


「次は俺の番だな。腕が鳴るぜ!行ってくる!」


「うん、頑張ってね。」


そして、次はエルストの番なので、彼は自信満々な様子でゴーレムとの戦いに挑もうとした。


その様子を、校舎の2年の教室から眺める女子が1人。


「サイっち頑張ってんじゃん……はぁ〜歴史の授業ダリ〜。魔法の授業は楽しそうで良いな〜。」


それは、サイとルージュの友人であるトライアだった。

彼女は歴史の授業中にも関わらず、歴史の先生の話を聞かずに、サイ達1年A組の魔法の授業を羨んでいた。

だが、その不真面目さが仇となり……。


「トライアさん、このページを読んでください。」


「え?どのページっすか?」


「やっぱり聞いてなかったんですね。さっきから校庭を眺めて……授業はちゃんと聞きなさい。」


「は〜い。」


授業をしっかり聞いてないトライアは歴史の先生に怒られてしまった。


一方、1年の魔法の授業の方では、エルストが高威力の攻撃魔法によってゴーレムを仕留めていた。


「スラッシュウェーブ!!」


手を横に振りかざし、その軌道に現れた斬撃波をエルストはゴーレム目掛けて放つ。

その攻撃はゴーレムの弱点に直撃し、ゴーレムは行動不能となった。

ゴーレムを倒したエルストは、サイの元へと戻っていった。


「凄いよエルスト!一撃でゴーレムを倒すなんて!」


「いや、俺なんてまだまだだ。俺は最低でもお前のジェネシスタぐらいは強くなりてぇ。」


「そうなんだ……頑張ってね!」


「おう。で、俺の戦いはどうだった?」


「そりゃあ、凄い!としか言いようが……あ、スラッシュウェーブの動作が大振りだったような気がしなくもないような……もうちょっとコンパクトにできる気がするな。」


「分かった。もっと技を磨くぜ。」


エルストは、サイにアドバイスをされて、自分の課題を自覚し、これからはそれに励む事を決めた。

やがて全員がゴーレムを倒し終え、授業は終わった。

サイとエルストは一緒に更衣室に向かい、そこで話をする。


「エルストは冒険者になりたいんだよね?」


「あぁ。親父みたいな強くてカッケー1級冒険者になるんだ。」


「絶対なれよ。君にはそれだけの力があるんだから。」


「おう!サイは人を助ける仕事に就きたいんだよな?」


「うん……だけど、具体的にはどんな仕事をするか悩んでて……あと、親が楽できる仕事にも就きたいな……。」


「親思いなんだな。いい仕事が見つかるといいな!」


「うん……!」


2人は着替えを終え、教室に向かう途中でも話を続けた。


「お前にはジェネシスタがいるだろ?それを利用して金儲けしようとは思わないの?」


「うーん……ジェネシスタは元々は人だったんだよ?それを利用するなんて僕にはできないな。」


「お前良い奴だな。」


「それ程でも……。」


サイはジェネシスタとはあくまで友好的な関係でありたいと願っており、利用するような事はしたくないので、自分だけの為にジェネシスタを使おうとはしないと答えた。

そして2人は教室に戻り、自分の席についた。

他の生徒達も席につき、次の数学の授業の準備をしていた時、数学の先生が早めに教室に現れた。

何事かと思った生徒は、先生に質問をする。


「先生、次の授業まで時間ありますよ?どうしたんですか?」


「皆に伝えたい事があるから早めに来たんだ。」


先生は生徒達にある事を伝える為に、早めに教室に足を運んだそうだ。


「それって……?」


「来月、1年A組と2年A組で、1、2年合同模擬試験を行う。試験の相手には1級冒険者を用意する。皆、2年A組から組む相手を選ぶように。」


1、2年合同模擬試験、それが先生からA組に伝えられた事だった。

試験日は7月18日。今日が6月21日なので、約1ヶ月の内に2年A組の生徒からパートナーを選ぶよう、彼らは言われた。


「先輩と一緒に1級冒険者と模擬試験を行うのかー。」


「強い人と組みたいよな。」


「私は兄さんと組もうかな。」


「誰と組むか悩ましいぜ。サイは?」


「うん……組めるかどうか分からないけど……あの人と組みたいな。」


突然そう言われ、誰を選ぶか迷う生徒達。

当然サイとエルストも頭の中で誰と組むか考え、サイはある人物の名前を思い浮かべた……。



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