第15話「決闘のち授業」
「負けた……。」
アレンは決闘に負けた悔しさからそう口から零した。彼は気を取り直し、決闘舞台からシルバ・デュークを回収し、ルージュのニンギル・ヒルメス相手に健闘した彼に労いの言葉を送った。
「ありがとう、シルバ。」
その時、決闘舞台にサイが駆けつけ、彼はルージュに気になっていた事を質問した。
「ルージュ先輩、マジックコーティングってなんですか?僕、そんなもの初めて聞きました。」
「最近私の母が開発した新技術ですわ。最近新たに発見された、魔力を通さない植物から抽出された物質を液状にした物で、ニンギルの頭部をコーティングしたのですわ。」
「それは凄いですね。」
「あの、ルージュ先輩……。」
サイとルージュが話している時、そこにアレンが現れた。彼は決闘に負けたので、自分のゴーレムに使われている技術を彼女に教える事になっている。
「俺のゴーレムに使われている技術、特別にお教えます。」
「そうですわね、今日はもう遅いですし、明日、学校で教えてくれます?」
「分かりました。じゃあ今日はこの辺で。」
そう言ってアレンは決闘場を去ろうとしたが、その間際彼はサイとジェネシスタを一瞬見つめ、そして決闘場を後にした。
その時サイは何故アレンに見られたのかと考えた。自分が四天王を2人倒したから、僕は敵討ちでもされるのだろうか、それとも……そう考えていると、ルージュが口を開いた。
「私の戦いから何か得られる物はありましたか?」
「魔弾の弾幕による攻撃と、マジックコーティングによる防御、攻防一体の戦法には関心しました。僕も頑張ってジェネシスタを強化していきたいです!」
サイはルージュの問いかけにそう返した。それを聞いた彼女は嬉しそうな表情を浮かべてこう言う。
「なら、私と決闘をして、貴方が勝てばマジックコーティングの塗料を分けてあげてもいいですわよ?」
「それも良いかもですね。」
「やろうよサイ!マジックコーティングなんて私の時代には無かったぞ?そんな物を手に入れられるのなら決闘だってなんだってしてやるさ!」
ルージュの提案を聞いたジェネシスタは食い気味でルージュと決闘する事をサイに促したが……。
「いえ、そういう物は自分で得てこそ価値がある物だと思うので、僕もマジックコーティング作成やってみようと思います。」
「え〜。」
「そうですか、励みなさい。その時にアドバイスが欲しくなったら相談に乗りますわよ。」
だがサイは、マジックコーティング塗料は自分で作る事を決めた。ジェネシスタは落胆したが、ルージュはそれも良しと考え、サイの背中を押す事を決めた。
マジックコーティングの塗料を作る為にはまず魔力を通さない植物を探す所からだな、そう考えたサイは後日近くの山にそれを採りに行く事を決めた。
それはそうと、その翌日サイは学校の授業で、ゴーレム操縦術の訓練が催された。
ゴーレムを持っている生徒は自分のゴーレムを、持っていない生徒は学校からゴーレムを借りて授業に参加する事となった。
殆どの生徒がハイゴーレムを使うなか、サイだけがジェネシスタ(プチゴーレム)を使っていたが、彼が以前のように馬鹿にされる事は無かった。
彼は決闘で四天王のうち2人、カリバーとルージュを倒した。その戦績は学園中に知れ渡っているので、生徒達は彼をザコサイだと馬鹿にできなくなりつつあったからだ。
「今日はこの山でゴーレム操縦術の訓練を行う。山頂にある赤い木の実、通称「リッカ」をゴーレムを操縦して採ってくる事が目的だ。ゴーレムの頭部は、ゴーレムの視界を映し出す為のマジックレンズが搭載されたこの頭部に取り替えてもらう。」
ゴーレム操縦術の先生はそう言って籠の中からゴーレムの頭部を取り出した。
この頭部にはマジックレンズという物が取り付けられており、ゴーレムが見た情報は、操縦者の眼前に映し出される仕組みとなっている。
先生は1人1つゴーレムの頭部を渡し、生徒は自分のゴーレムの頭部をマジックレンズ付きの頭部に交換したが、生徒に配られたのはハイゴーレム用の頭部で、サイのゴーレムはプチゴーレムだ。
なので先生はサイにゴーレムの頭部を渡さなかったが、そこは流石ジェネシスタと言うべきか、彼女は「視覚共有」と言う魔法を使えるのだ。
それによって、ジェネシスタの視界はサイにも見えるようにする事ができると、ジェネシスタは自慢げに語った。
「視覚共有。どうだいサイ、自分の姿が見えるだろ?」
「ホントだ。ジェネシスタが見ている僕の姿が見える。」
ジェネシスタが試しに視覚共有を使い、彼女がサイの姿を見ると、サイの視覚には、彼女が見ているサイの姿が映りこんだ。
「それでは、1番目の生徒から訓練を始めます。」
「はい!」
そうして授業は始まった。サイとジェネシスタの番は5番目だ。それまでの間彼はジェネシスタとの視覚共有で、映像酔いしないように視覚共有を慣らす練習を始めた。
他の生徒達はゴーレムが見た風景は魔法で作られた画面のようなものに映し出されるが、サイとジェネシスタの場合はジェネシスタの見た情報がサイの視界に直に入ってくるので、慣れていないと映像酔いしてしまうのだ。
だからサイはジェネシスタの見る風景に慣れておく為に慣らしをしておく必要があった。
そして生徒達は次々に山頂のリッカを採取する事に成功し、ついにサイの順番が回ってきた。
「次、サイ・トループ。」
「行ってらっしゃい、ジェネシスタ。」
「あぁ、果たすべき任務を遂行してくるとしよう。」
短い言葉を交わし、ジェネシスタは山の中へと入っていった。
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