第14話「四天王vs四天王」

「良いんですか?仕事が溜まってしまいますよ?」


アレンとの決闘を請け負ったルージュに、ミリーは仕事の方を進めるべきではないかと心配したが、それに対してルージュはこう返した。


「決闘が終わった後は居残りしますわ。」


「仕方ないですね、私もお供します。」


「そうしてくれると助かりますわ。」


居残りをすると決めたルージュに、ミリーは付き合う事を決めた。 ミリーはルージュ1人に苦労はさせまいと思い、彼女を助ける事にしたのだ。

ルージュとロッソ隊の付き合いは、まだ1年と少しの間だけだが、彼女らの間には確かに絆というものが存在していた。


その日の放課後、決闘場に来たルージュとアレン。彼らの手には自分のゴーレムが握られていた。観客は1人しかいなかった。ジェネシスタを持ったサイだけだ。

彼はジェネシスタに現代のゴーレム使いがどんなものなのか見せたかったので決闘場に足を運んだ。

それと同時に、自分が彼らのゴーレムから教訓を学び、ゴーレム作りの糧にする為でもある。


アレンは愛機、シルバ・デュークを、ルージュは愛機のニンギル・ヒルメスを決闘舞台に置き、魔法操縦桿を展開し、それを両手で握りしめた。


「ジェネシスタには現代のゴーレム使いを見学してもらう為に、俺は自分の

ゴーレム作成の参考にする為にこの決闘から学ぼう。」


「ああ、見せてもらおうか、現代のゴーレム使いの力とやらを。」


「決闘……開始!」


そして、決闘を取り仕切る決闘委員会の生徒の合図で決闘が始まった。アレンは開始早々、シルバに背面の魔弾砲を手に取らせ、それをニンギルに向けた。


「狙い撃つよ!」


そして魔弾砲から魔弾を発射するシルバ。初弾はニンギルに回避されるも、シルバは魔弾を連射し、ニンギルに猛攻を仕掛けた。

魔弾は魔力を元とした弾丸で、消費量は他の魔法よりは少ないが、連続で使う事でそこそこの魔力を消費してしまう。


アレンやルージュが使ってるハイゴーレムの魔力量を100だとすると、魔弾一発につき魔力を1〜2ぐらい消費する事になる。

なのでアレンは慎重に狙いを定めてニンギルに魔弾を発射するが、ニンギルはハイゴーレムにしては機動力は高い方で、シルバの魔弾を簡単に回避してしまう。


アレンは魔弾を6〜7発程撃って、それを全て回避された所で魔弾砲よりも命中精度の高くいざと言う時には近接武器にもなる右手の武器に頼ろうとしたが……。


「一気にいかせてもらいますわ!!」


その前にルージュの方が先に動いた。ルージュは魔法操縦桿を前方向に

押し倒し、ニンギルをスラスターを吹かせて前身させると同時に、腰から振動カッターを抜かせた。そう来たか、と思いつつアレンはそれを冷静に対処しようとした。


「レーザーカノン!!」


シルバは右腕の武装、レーザーカノンからレーザーブレードを展開し、魔力を元としたレーザーで形成された、緑色に光る刃でニンギルの振動カッターを受け止めた。


「お互いハイゴーレム、力の強い方が勝ちますわ!!」


ルージュはそう言ってニンギルの両脚のスラスターを勢いよく噴射させ、出力を全開にしてシルバを押し切った。


「なんてパワーだ!!」


「隙ありですわ!!」


そして体勢を崩したシルバに対して、ルージュは隙をついてニンギルに攻撃を仕掛けさせた。振動カッターを構えて、それをシルバの首に突き立てようとするニンギル。


このままではやられる、そう感じたアレンは、奥の手を使おうとした。それは転移魔法である。

アレンはシルバがニンギルのカッターを食らう直前で転移魔法を発動し、シルバをニンギルの背後に転移させ、そして反撃に打って出ようとした。


「スティングレイピア!!」


アレンは魔法、スティングレイピアを発動し、シルバの手元に緑色に輝く光のレイピアを出現させた。それを構えて、ニンギルを突き刺そうとするシルバ。

だが、ルージュはそれを察知していたかのように後ろに振り向き、地面を蹴って飛び退き、シルバから距離を取った。


「そんな!!」


「流石四天王と呼ばれてる事だけあるな、強いじゃないかルージュは。」


完全に背後を取ったはずなのに、それをあっさり見破られたアレンは落胆し、ジェネシスタはルージュの柔軟性を賞賛した。


「それでは、この決闘を終わらせるとしましょう!」


ルージュはそう言うと、ニンギルの背中の魔砲から無数の魔弾を射出した。魔弾は宙を舞い、そしてシルバ目掛けて降り注いだ。


「まずい!!けっか……」


アレンは咄嗟に結界を張ろうとしたが間に合わず、魔弾の雨をその身に受けてしまった。

無数の魔弾が体に直撃し、全ての魔弾がシルバ、もしくはその周辺に着弾する頃にはシルバの姿はボロボロになっていた。


「勝たせてもらいますわ!!」


ルージュはそう宣言し、ニンギルをボロボロのシルバに近づかせた。ニンギルは振動カッターを構え、それを振りかざしてシルバの首を斬ろうとしたが……。


「なんてね!」


「!!貴方、右腕腕は……」


アレンの言葉を聞いたルージュが、シルバの右腕が無くなっている事に気づいた時には、シルバの右腕はニンギルの背後に回っていた。


「腕を遠隔操作できるのか!」


ジェネシスタはシルバの隠された力に驚いた。右腕を遠隔操作で操れるとは大したものだと彼女は思った。


「勝った!!食らえ!!」


そして浮遊する右腕のレーザーカノンからレーザー光線を発射するシルバ。その光線はニンギルの頭部を破壊した……。

かとアレンは思ったのだが、レーザー光線を受けたニンギルの頭部はかすり傷すら負っていなかった。

レーザーカノンから放たれたレーザー光線はゴーレムの頭部に直撃すれば、それを破壊するに足る威力な筈なのだ。


「え?」


「マジックコーティングですわ。」


マジックコーティング。新開発された、魔法を通さない特殊な塗料によって、ニンギルの頭部は守られていたのだ。

まさか魔法が通らないとは……絶望するアレンの愛機の首はその直後、ニンギルによって斬り落とされ、決闘はルージュの勝利に終わった。



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