第13話「四天王達」
サイとキーンの決闘の翌日、カリバーがキーンとガリスを利用して決闘でサイを陥れようとした事実は決闘委員会の生徒によって、シイハ家頭首、カーラ・シイハに報告された。
彼はその日の内にカリバーを呼び付け、彼に罰を与える事にした。
「決闘に負けたと思ったら今度は不正行為を働くとは……シイハ家の面汚しめ!!」
「お父様……申し訳ありません……。」
カリバーは己の過ちを悔い、カーラに頭を下げた。そんな彼に対して与えられた罰は……。
「……だが腐っても我が息子、今回は我が家を6ヶ月出禁の刑で許してやる。」
「……はい。」
彼に与えられた罰は、6ヶ月間シイハの屋敷に来ない事だった。カリバーはそれを受け入れたが、その場にいた彼の12歳の弟、ウノは異を唱えようとした。
「ですがお父様、6ヶ月は長すぎるのでは……?」
「いいかウノ、罪を犯した物にはそれ相応の罰というものが必要なのだ。罰を受けなければ人は改心できないからだ。お前にもいずれそれが分かる時が来る。」
父にそう言われ、納得するウノ。その後カリバーはカーラ、ウノ、母、数人のメイド達に見送られ、屋敷を後にした。
「お父様、お母様、頭を冷やしてきます。」
カリバーは別れの言葉を彼らに言うと、宿泊用の荷物を持って家を出た。お金は無いので野宿をする事に決め、街の小さな山に向かった。その道中で、彼は自分の罪と向き合った。
「こうなって初めて気づいた……俺がどれだけの事をやらかしたか。サイの事をザコサイだと馬鹿にした結果が俺に帰ってきたんだろうな。……サイは関係無いか。俺はただお父様に認めてもらえればそれで良かったんだ。それなのに……。」
そう考えながら山中を歩いていると、カリバーは人の気配を察知した。その方を見てみると、そこには大きな荷物を持った少年が2人いた。キーンとガリスだった。彼らもまた不正を行った罰として家を追い出されていた。
「カリバーさん!!」
「カリバー君!!」
「お前ら……なんで?」
「俺達も家を追い出されたんですよ!!カリバーさんも……?」
「まぁな……。」
「なら僕達と一緒に野宿するかい?」
ガリスはカリバーに、一緒に野宿をしないかと提案した。3人とも家を追い出された時は一人ぼっちの生活を送っていく事になるのかと危惧していた。
しかし、どうやら自分には仲間がいるみたいだと知った時、心が軽くなった様な気がした。
「お前ら……俺について来い!!俺がお前達のリーダーだ!!」
「カリバーさんカッケー!!」
「いいだろう、君達と野宿するのも悪くないだろうな。」
そうして、3人は山の中を突き進み、野宿に適した場所を見つけ、そこにテントを建て、そこを活動拠点とする事に決めた。
1人では心細くても、3人なら大丈夫だ。そう考えたカリバーは、キーンとガリスのリーダーとしての威厳を胸に野宿生活を生き抜いていく事を決意した。
翌日、ルージュは学園の委員長としてデスクワークに心血を注いでいた。
先生が魔法訓練の授業の際、魔法で生徒
を怪我させた。学長に報告しろ。
古文の教科書に誤字があった。出版所に
報告しろ。
そう言った依頼書が生徒会には日々送ら
れ続けているのだ。
それらを決議に値するかは委員長が考え、そうするに値すると決めた場合は彼または彼女に与えられる生徒会の判子を依頼書に押し、それが委員会の顧問によって学長に提出されるのだ。
依頼書を見ては判子を押すかどうか考え、押すに値すると決めたら押し、そうでなければ押さない。そんな事を数十分繰り返しているルージュの元にミリーがやって来た。彼女の様子を見に来たのだ。
「浮かない顔ですね。疲れましたか?」
「一昨日の事を思い出してました。委員長歴2年の私ですが、人に罰を与える仕事というのは、やってて気分が良いものではありませんね。」
「気分良く人を裁く人なんていませんよ。少なくともこの時代には。魔法が発明されたばかりの頃、魔法は危険だ、魔法使いは唾棄すべきものだという思想を掲げて魔法使いを狩る者達がいたそうですが、彼らの中にならそういう人達がいたかもですね。人を裁く事に快楽を覚えた人達が。」
「快楽の伴う正義は悪と同義ですわ。私達は生徒会。いついかなる時も冷静に物事を見なければいけません。」
「そうですね。それはそうと、人の力の源は元気と笑顔です。笑ってください委員長、こんな風に。」
ミリーは顔色の良くないルージュを励ましたいと思い、彼女に笑顔を見せた。それを見たルージュは強ばっていた表情筋が緩み、自然と笑みを顔に浮かべた。
「ミリー、ありがとうございます。いつまでもくよくよしてられませんわね!さぁ、この仕事早く片付けますわよ!」
「あ、あのー……。」
「貴方は……アレンさん?」
その時、生徒委員会室に1人の男子生徒が現れた。彼はアレン・ダレアス。ルージュと同じこの学園の四天王だ。彼はルージュを見つめ、真剣な表情でこう言った。
「僕と決闘してください。」
「いきなりですわね……何故?」
ルージュにそう聞かれたアレンは、深く息を吸った後、クールな態度とは一変、少し緊張したような表情と声でその理由を答えた。
「あのー、その、最近決闘やってなくて……戦績をあげないと、それで、親に学校で上手くやれてないんじゃない……かって疑われるかもしれませんし……ルージュ様お願いします僕と決闘してください!!」
彼はコミュニケーション能力に少々難があり、人と話すのは苦手だが、勇気を振り絞ってルージュにそうお願いした。
「そういう事でしたか……では、貴方が賭けるものを提示してください。」
「僕が賭けるもの?……そうですね……うーん……(考えてなかった)……そうだ!僕が負けたら僕のゴーレムに使われてる技術を教えてあげます!僕のゴーレムはですね?結構良い技術が導入されてるんですよ?例えば……って言っちゃダメなやつかこれ……。」
彼には調子に乗ると早口になる癖がある。
「なら私が負けたら何か欲しい物はありますか?」
「なら僕とゴーレム決闘をしてくれる生徒を5人用意してください!戦績をあげないとなので!」
「それで構いませんわ。では、決闘は今日の放課後でよろしいですね?」
「はい!」
そうしてルージュはアレンの決闘相手を、アレンは自分のゴーレムの技術を賭けて決闘する事となった。決闘の申請をしたアレンはガッツポーズをして委員会室を飛び出した。
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