第10話「理不尽な復讐者」

マージクル学園の廊下を歩く生徒が1人。彼は生徒間で作られたグループ「ルージュ様ファンクラブ」の1人だった。

掛けているメガネをクイッと指で上げ、愛しのルージュを決闘で負かしたサイに理不尽な恨みを募らせていた。


「サイ・トループめ……よくもルージュ様を負かしたな……!!」


そんな彼の元に、1人の生徒が現れた。目つきの鋭い表情が特徴的な男子生徒だ。彼は決闘でサイに負けたカリバー・シイハの取り巻きの1人で、彼もまたサイへの怒りを心に秘めていた。


「お前もザコサイが許せねぇのか?」


「あぁ、君もか?」


「おう。ぶっ潰してやりてぇよ!!」


「なら、僕と君で手を組まないか?」


ルージュのファン、ガリスはカリバーの取り巻き、キーンに手を組まないかと提案した。共にサイに復讐する為に。


「いいぜ!!一緒にサイをぶっ潰そう!!」


ガリスの提案に、キーンは乗る事にした。2人の陰謀が、今動き出そうとしていた。



その日の授業を終え、家に帰宅したサイ。彼は自分の部屋に戻ると、ポケットからジェネシスタを取り出し、彼女と話を始めた。


「ジェネシスタ。もっと良い身体を作る為に、僕頑張るから!!」


「そうか、頑張れよ。私もこの身体は大切に扱わないとな。これからはもっと大事に扱うよ。」


「そうしてくれると助かる。」


そうして、サイはお店で買ったゴーレムの素材を魔法で変形させ、ジェネシスタ用の関節へと変化させようとした。


「ゴーレム作りは大変だろ?私も前世でゴーレムを作ってたから分かるよ。」


「火力特化のメガゴーレムを使ってたって、教科書には書いてたけど、本当?」


「火力はロマンだ!!」


ジェネシスタは胸を張ってそう言った。彼女はゴーレムの高火力の攻撃により、モンスターを殲滅するスタイルで冒険者として活躍していたのだ。

時には自分も魔術師として魔法でモンスターを討伐する事もあったが。


「所で、君はあの学園でどうやって生き抜いていくつもりだったんだい?プチゴーレムでハイゴーレムと渡り合おうというつもりだったのかね?」


「いや……僕は元々ゴーレム決闘とは無縁な学園生活をしていくつもりだったんだ。」


「じゃあなんでゴーレム決闘をやろうと思ったんだい?」


「僕からゴーレム決闘を望んでやり始めた訳じゃない。カリバーに目を付けられて、いやいやゴーレム決闘を始めたんだよ。まぁ最初のゴーレム決闘は、決闘というか公開処刑だったんだけどね。」


「公開処刑か、そんな事されたらゴーレム

の事なんか嫌いになるんじゃないのかね?」


「ゴーレムに罪は無いから。ジェネシスタのその身体を作った後もカリバーの取り巻きに「ゴーレムを壊されたくなかったら決闘しろ」なんて言われて……。」


サイは、カリバーの取り巻きと決闘した時の事を思い出した。その時彼は運命の出会いを果たすのだった。


「その時、私の魂がこのゴーレムに乗り

移った、という訳だね?」


「ジェネシスタには感謝してるよ。あの時僕が負けてたら、俺は他の生徒達にもっと酷い罵声を浴びせられたと思うから。」


「それはどうも。」


翌日、サイは家から出て学校へと向かう途中で、アンジュ、トライアと出会った。


「サイ、おはよう〜!」


「サイっちおは〜!」


「おはようございます。」


サイは1年、アンジュとトライアは2年なので、サイは頭を下げておはようございます、と礼儀よく挨拶をした。


「そんなかしこまらなくていいよ〜。

気楽にいこうぜ!」


アンジュにそう言われて、サイは先輩にそんな態度で接していいのかと考えたが、今の彼らは友達同士。

かしこまる必要は無いのかと考え、サイは彼女らに親しく接する事にした。


「あ……うん、分かった。よろしくね、アンジュ、トライア。」


「こちらこそ!」


「よろ〜。」


そうして、サイとアンジュ、そしてトライアは学校へと向かった。サイと家が近い事に、アンジュとトライアは喜んでいた。


学校に着くと、アンジュとトライアは2年の教室に、サイは1年の教室に向かった。3人は昼休みに学校の中庭に集まり、一緒に弁当を食べる約束をした。


サイが教室の扉を開け、自分の机に向かうと、そこには彼にとって見た事のある生徒と、見た事の無い生徒が1人ずついて、見た事のある生徒の方は自分の机に座っていた。 ガリスとキーン、サイに復讐する為に手を組んだ2人だ。


「あの、そこ僕の机なんだけど……。」


「来やがったなサイ!!俺と決闘しろ!」


キーンは早々にサイに決闘を挑んだ。突然決闘を挑まれ、困惑するサイ。


「負けたら君のゴーレムをいただく。」


ガリスはこちらが決闘に勝ったらジェネシスタをいただく、そう一方的に宣言した。


「じゃあ、僕が勝ったら……?」


「俺達は二度とお前に決闘を挑まねぇ。それで良いな?」


「断ったらどうするんだい?」


サイのポケットからジェネシスタが出てきて、キーンにそう聞く。


「断ったら同じ条件でカリバーさんがお前に決闘を挑む。」


「サイ、私は断然彼らと決闘すべきと思う。私からすればカリバーも彼らも同等だが、相手が弱いに越した事は無い。」


ジェネシスタはキーンの言葉を聞くなりサイにそう提案した。サイは取り敢えず何故彼が自分に決闘を挑むのかと聞いた。


「何故君達は僕に決闘を……?」


「俺はカリバーさんをお前に倒されたから!!仕返しだ!!」


「僕はルージュ・クリムゾン様のファンクラブの1人!!先週はよくもルージュ様を負かしたな!!この決闘は復讐の為の決闘だ!!」


「はぁ……。」


サイは2人が決闘を挑む理由を理解し、彼らの決闘を受ける事にした。ジェネシスタならなんとかなるだろうと考えているサイ。

一方ジェネシスタは2人を警戒していた。復讐に駆られた者は何をしてくるか分からないからだ。


ジェネシスタは前世であるモンスターを討伐したが、その後ある冒険者達が彼女に「あのモンスターは俺達が狩る予定だった。」と言いがかりをつけてきて、彼らに復讐されかけた事がある。彼女は余裕で彼らをあしらい事無きを得たが、


復讐に駆られた者の執念の強さはよく知っていた。サイが酷い目に合わないかと、ジェネシスタは心配していた。

決闘が行われるのはその日の放課後と決まった。ガリスとキーンは、果たしてどんな手を使ってくるのだろうか……。


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