第9話「決闘で得たもの」

「行くよ!!」


ジェネシスタは光刃を構え、バーニアを吹かしてニンギルまで急接近した。


「はぁっ!!」


それに対してルージュは、ニンギルの振動カッターを魔法で高速振動させ、切れ味を上げた状態でジェネシスタの首めがけて振りかぶらせた。

だが彼女は魔法、フライトアップで身体を宙に飛びあがらせて回避し、そのままニンギルの背後に回った。


「シャイニングスラッシュ!!」


そして攻撃魔法、シャイニングスラッシュを発動するジェネシスタ。彼女が持つ光刃は更に輝きを増し、ジェネシスタはそれを横一線に薙ぎ払い、ニンギルの首を切り落とした。

だがその直後、ジェネシスタの力に耐えられず、彼女の右腕の関節が砕け、その右腕がもげてしまった。


「……!!」


決闘舞台に転がるニンギルの首を見て、ルージュの顔には悔しさが滲み出ていた。本気で戦ったのだが相手は伝説の魔導王、自分が負けるのも仕方ないと思う反面、どうしても悔しさは拭えないのだ。


「勝者……サイ・トループ!!」


そして審判の一言でこの決闘は終わりを迎えた。決闘の勝者はサイ・トループ、そして彼のゴーレムのジェネシスタとなった。

ルージュは無言でサイの元に近づいた。サイは何事かと勘ぐったが、ルージュは彼の前に立つと、彼に笑顔を見せた。


「流石ですわね。貴方の強さ、私自らが認めてさしあげますわ。」


「ルージュ様……ありがとうござい

ます!!」


自分の力を認めてくれたルージュに、サイは感謝の言葉を伝えた。四天王の1人が自分を認めてくれるなんて、少し前の自分では想像のつかない事だった。

だが、ジェネシスタのお陰でルージュにゴーレム使いの実力を認められた。こんなに嬉しい事は無い。だがその一方で決闘場の雰囲気は陰鬱としていた。


「ルージュ様が負けるなんて……。」


「空気を読んで負けろよザコサイ!!」


「なんであんな奴がルージュ様に勝っちゃうかなー。」


「ザコサイの癖に調子に乗りやがってよ……。」


決闘場の生徒達は噂により、彼のゴーレムが正式なゴーレムである事が判明されたという事は知っていた。だが、少し前まで学園最弱だったサイをそう簡単に認めるほど器の大きい生徒はいないようだった。


「相変わらずここの生徒達は……。」


生徒の民度の低さに呆れるジェネシスタ。その生徒達に対して異を唱えたのは……。


「静まりなさい!!」


それは、ルージュだった。彼女の言葉を聞いた生徒達は途端に静かになった。


「この方は素晴らしいゴーレムを作り、私に勝った。その事実は揺らぎませんわ。彼がザコというのなら、それに負けた私はさしずめクソザコといった所でしょうか?」


「そ、そういう訳じゃ……。」


ルージュの説得に、生徒達は何も言い返す事ができなかった。サイも、ルージュに庇われるとは思いもしておらず、キョトンとしていた。


「なら、勝者はサイ・トループだと認めなさい!!」


ルージュは、その場の全員を黙らせた上で、サイが勝者だという事実を全員に認めさせた。それが彼女なりの正義というものだったからだ。


その場は丸く……収まったのかは人によるかもしれないが、とりあえず決闘が終わったので、サイとルージュ、そしてその場の全員は決闘場から出ていった。

その日の放課後、サイの教室に再びルージュが現れ、彼を校舎裏まで呼んだ。何事かと思いつつルージュについて行き校舎裏まで来たサイとジェネシスタ。ジェネシスタの右腕には簡易的な修復処置が施されていた。


「話ってなんですか?」


サイと問いかけに、ルージュはこう返した。


「今日の貴方のゴーレムの、ジェネシスタの戦う姿はお見事でしたわよ。それに貴方も、良いゴーレムをお作りになるのですね。」


ルージュにそう言われ、サイは一瞬戸惑うも、その後直ぐにそれに対する返答を返した。


「い、いえ、僕なんてまだまだですよ。最後の最後でジェネシスタの腕が壊れてしまって……僕の詰めが甘かったんです。」


「なら次はもっと良いゴーレムをお作りになりなさい。さらにその次はそれよりも良いゴーレムを、上へ上へと上がっていきなさい。その時は私も、全身全霊を賭けて貴方に挑みますわ。」


ルージュは、いつか再びサイに挑む事を宣言しつつも、彼の成長を促す言葉を投げかけた。それを聞いたサイはそれに応えるべく、「頑張ります!!」と元気よく答えた。


「それで、約束のものは……?」


「ええ、そうでしたわね。場所を変えましょう。」


サイは決闘でルージュが賭けたものを思い出し、その事について彼女に聞くと、彼女はサイを生徒会室まで連れてきた。そこには、ルージュの4人の友人がいた。


「あ、ルージュ様!その子がサイ・トループ君だね!」


4人のうち、3年の黒髪の女子がサイにそう確認すると、彼はそうですと首を縦に振った。


「彼女らが貴方に紹介する4人のご友人ですわ。」


ルージュの言葉を聞くと、4人は自己紹介を始めた。


「やっほー!私アンジュ・トリカ!ゴーレム決闘で強い人は大好きだよ!」


「ミリー・ラプスです。貴方のゴーレム、お強いのね。」


「ウチはトライア・アグリッテ。ゴーレム使いクンよろしくね〜。」


「ヘレス・シャラクです。よ、よろしくお願いします……。」


黒髪で元気なアンジュ、制服のボタンを1番上までしっかりつけているクールなミリー、制服を着崩しているギャルっぽいトライア、メガネを掛けた内気なヘレス。ルージュは4人をサイに紹介した。


「サイ・トループ、彼女達と仲良くしてやってください。」


ルージュにそう言われたので、サイは4人と友達として仲良くしようと決めた。


「分かりました。皆さん、よろしくお願いします。」


「よろしくぅ!」


「よろしくお願いします。」


「よろ〜。」


「よ、よろしくお願いします……。」


こうして、サイは4人のガールフレンドを手に入れる事ができた。彼の学園生活に、大きな変化が訪れたのだ。



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