第8話「VSルージュ」

ついにサイとルージュが約束した決闘の日が来た。その日の正午、サイは決闘場に向かう途中で、ジェネシスタの過去の話を聞いた。


「ジェネシスタは前世ではどんな事をしてたの?教科書には伝説のモンスターを討伐したとか、未開のダンジョンを開拓したとか書いてるけど……。」


「伝説のモンスターって、カラミティブリザードドラゴンの事かい?あれは強敵だったな〜。身体の半分を凍らされて死にかけた時はヤバいと思ったね。」


「へ〜。カラミティブリザードドラゴンに殺されかけたの?教科書には無傷で倒したって書いてたけど?」


「多分話に尾ヒレが付いてるんだろうね。」


「話が誇張されたのか。ダンジョンの開拓は?」


「隠された花園、というダンジョンがあってね、このダンジョンは発見こそされど中身が複雑で誰も全容を解明できずにいたのさ。そのダンジョンを探索し、攻略法を解明したのが私という訳!」


「それは凄いな。」


2人は歩きながら話をしている内に、決闘場まで到着した。そこには既に話を聞きつけて2人の決闘を見に来た生徒達が集まっていた。

サイは決闘者が通る為の通路を歩き、その先にある決闘舞台に到着した。


決闘舞台には既にルージュが到着しており、ルージュの執事が彼女の愛機、ニンギル・ヒルメスを手に持っていた。ルージュが自分の代わりにそれを持たせていたのだ。

ニンギル・ヒルメスは桜色のメインカラーに青の差し色、そして背面の大きな背負い物が特徴のハイゴーレムだった。


「貴方達は何を賭けて戦うのですか?」


決闘委員会の生徒がサイとルージュにそう聞き、2人は自分の賭ける物を答えた。


「私は私の友人をサイ・トループに紹介してあげる権利を賭けますわ。」


「僕はルージュ様の宣伝ポスターを街中に貼る事を賭けます。」


その後、サイとルージュの執事は決闘舞台の中央に立ち、サイはジェネシスタを、ルージュの執事はニンギルを地面に起き、中央から足早に元いた場所に戻った。


「ジェネシスタ、頑張れよ。」


「心配せずとも、なんとでもなる。」


「見せてもらいますわ。サイ・トループのゴーレムの強さを。」


サイとジェネシスタは短い言葉を交わし、ルージュはサイにそう宣言し、宙に現れた2つの魔法操縦桿を固く握り締め戦闘態勢に入った。


「ルージュ様頑張って〜!!」


「ルージュ様愛してます〜!!」


観客の殆どがルージュを応援する為にここに来ているらしい。それに対してサイを応援する生徒は……。


「君の仲間はいないみたいだねぇ。」


「僕の味方なんている訳……」


「サイ君頑張れ!!」


自分を応援する生徒はいないよな……とサイが諦めかけていたその時、彼を応援する声があがった。

サイが声のした方を見てみると、そこにいた声の主は先日教室に来た、カリバーに負けた生徒だった。

こんな状況の中で彼はサイを応援する為にこの決闘場に来たのだ。


「良かったじゃないか。君の味方もいるみたいだね。」


「……うん。」


サイはジェネシスタの言葉に頷くと、決闘舞台に目をやった。そして、決闘委員会の生徒が右手をあげ、決闘開始の合図をすると同時にその手を勢いよく振り下ろした。


「決闘……開始!!」


「!!」


その直後、ルージュは操縦桿のスイッチを瞬時に押し、ニンギルの背中の魔砲から無数の魔弾を射出した。魔弾掃射でジェネシスタの様子を伺うつもりだ。


「なんて厚い弾幕なんだ!!」


「200年もあればゴーレムはこうも変化するか!!避けてみせる!!」


あまりにも厚い弾幕に驚くサイだが、ジェネシスタは物怖じせず、魔法フライトアップを発動し、宙に浮き上がり、プチゴーレムの機動力を活かし宙を舞いながら魔弾を回避した。


プチゴーレムは、機動面でハイゴーレムの上手に出れる。普通はそれたけでプチゴーレムがハイゴーレムに勝てる訳無いが、ジェネシスタなら……。サイはそう考えながら、この戦いを見守った。


ジェネシスタは右手に光刃を出現させ、それを構えてニンギルに向かっていった。


「はぁっ!!」


そしてジェネシスタはニンギルに光刃を振り下ろした。それに対して左手の手甲で防御するニンギル。

ルージュは負けじと操縦桿のスイッチを押してニンギルに懐から振動カッターを抜かせた。


右手に持ったカッターを振動させニンギルはジェネシスタを切り裂こうとしたが、足裏のバーニアから魔力を素としたジェットを吹かして身体を捻らせ回避するジェネシスタ。そして彼女はニンギルの次の攻撃を警戒し、相手から距離を取った。


「まだまだ!!」


ルージュがそう叫ぶと、ニンギルの手甲と手の隙間から小さい四角い物体が飛び出し、それがニンギルの姿となり、ジェネシスタに振動カッターで襲いかかった。


「っ!!」


ジェネシスタがそれを切り裂くと、四角い物体から化けたニンギルは光の粒子となって消え去った。これはダミービジョンという魔法で、相手に隙を与える為の魔法だ。


「ニンギルはこっちですわよ!!」


ジェネシスタがダミービジョンに気を取られた隙に本物のニンギルは腰部のスラスターを吹かしてジェネシスタに急接近し、彼女の左脚を右手で握りしめた。


「捕まえましてよ!!」


「どうかなっ!?」


自分の脚を掴んだニンギルに対してジェネシスタは魔法、オーラブラストを発動。自身の体内の魔力を爆発的に拡散させ、そのエネルギーをニンギルにぶつけ、拘束を解除させた。


「この魔法、魔力の消費が激しいから使いたくなかったんだけどね。」


「やりますわね!!」


ルージュはジェネシスタの強さを称え、ニンギルに一旦距離を置かせ、手の平から魔弾を撃ってジェネシスタを牽制したが、彼女は宙を舞って魔弾を回避した。

続けてニンギルは再び背面の魔砲から弾幕を放ち、ジェネシスタにそれを浴びせようとしたが、ジェネシスタは再びそれを回避した。


ハイゴーレムの体内の魔力量はプチゴーレムの魔力量の3倍とされている。だからニンギルは魔弾を連射できるのだと言うことをサイは知っていた。


「魔弾ではねぇ!!」


ジェネシスタはそう言いながら自分の前面と上面に結界を展開し、ニンギルに突撃した。結界で魔弾を弾きつつ、ジェネシスタはニンギルの至近距離まで迫った。


「来なさい!!」


「行くよニンギル!!ルージュ!!」


ルージュは目の前のゴーレム決闘に全神経を集中させていた。サイもそれに負けじと決闘の決着が着くの瞬間まで決闘から目を逸らさなかった。

サイのジェネシスタとルージュのニンギル・ヒルメス。今決着が着こうとしていた。



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