第7話「決闘宣言」
「検査の結果、このゴーレムは不正ゴーレムでは無い事が判明しました。」
生徒会の生徒は、ジェネシスタは不正ゴーレムでは無いと判断し、それをサイに伝えた。彼は無事、無実が証明されたのだった。
「良かった……。」と呟き一安心するサイ。
「これで貴方のゴーレムは晴れて正式なゴーレムと認められましたわ。この学園での貴方の自由は、私達生徒会が約束しましょう。」
ルージュの言葉を聞いたサイはジェネシスタが不正ゴーレムでは無いと証明してくれた生徒会に感謝を述べようと口を開いた。その時……。
「ルージュ様、皆さん、ありが……。」
「せっかく生徒会長らしい事ができると思ったのに……。」
サイには聞こえないように、小声で本音を漏らしたルージュ。サイには聞こえなかったが、ジェネシスタその声をしっかり聞いていた。
「何か言ったかい?よく聞こえなかったな〜?」
「あ、貴方には関係ありませんわ!!」
ジェネシスタに対してそう返すルージュは少し焦っているようにサイは感じていた。何故焦っているのかは彼には理解できなかったが。
「じ、じゃあ僕達はこれで……。」
サイは用事は終わったと思い、生徒会室から出ようとした。一生徒が生徒会室という場所にいるのは少し緊張するので、彼は早めにこの部屋を立ち去りたいと思っていたから早く帰りたいとも思っていた。
「待ちなさい!!」
そんな彼を呼び止めたのは、ルージュだった。突然呼び止められて少し驚いたサイは、ルージュの方を振り向くと、彼女はサイにある提案をした。
「貴方に決闘を挑みますわ!!」
「え……?」
ルージュにいきなり決闘を挑まれたサイは困惑した。何故ルージュ様が僕なんかに決闘を?何が目的だ?僕が負けたら僕に何を要求するつもりだ?
僕が勝ったらルージュ様は俺に何をくれるのか?彼の脳内で瞬時に様々な疑問が飛び交っていた。
「何故いきなり決闘を……?」
「理由はシンプルに1つ。貴方と戦ってみたいからですわ。」
サイの質問に、ルージュはシンプルな答えを返した。魔導王ロード・ジェネラルの魂の宿ったゴーレムは、四天王のカリバーを瞬時に倒した。そんなゴーレムに、ルージュは心
打たれたのだ。
彼女はある主義を掲げていた。それは「実力こそが全て」である。学生時代のゴーレム決闘も、大人になってからの色んな分野でも、実力を持つ者こそが絶対であり、正義なのである、彼女は常々そう考えながら生きているのだ。
そんなルージュの目の前にジェネシスタが現れた。ルージュはカリバーを圧倒したジェネシスタの姿に、「実力」という正義を見た。
そんな彼女に、自分の正義を見せつけたく
なった。それがルージュがサイに決闘を挑む理由だ。決闘に賭ける物は後回しで、彼女はとにかくサイに決闘を挑む事を考えていた。
「そうだ、君が負けたら君がサイの彼女になるというのはどうだい?独り身なんだろ?サイ?」
「え……そうだけど……。」
ジェネシスタはルージュに冗談半分で賭ける物を提案した。もちろんそれをルージュが許すはずも無く、即座に却下された。
「お断りしますわ。私が賭けるものは……。」
「付き合うのがダメならサイと1晩……」
「しないに決まってるでしょう!!失礼なゴーレムだ事!!」
少々下品な事を口走ろうとするジェネシスタをルージュは怒鳴って無理やり言わせまいとした。
その後サイや生徒会が静まっているのを
見て、「失礼。」と呟くルージュ。
「独り身なら良い提案をしてあげますわ。貴方が私に勝てば、彼女ではありませんが、ガールフレンドを4人ご紹介してあげますわ。」
「ガールフレンド……?」
「私には親密な関係のご友人が4人ほどいまして、彼女らは最近男性との交友関係を築きたいと申していらっしゃるのです。ですが彼女らの友人の私としては、選ぶならせめて良い人を……と思っておりまして、ゴーレム決闘で私に勝てるぐらいの男でないと彼女らには釣り合わない、そういう訳でしてよ。」
ルージュは自分の友人達の事をサイに説明した。彼女は、自分を倒す事のできる強い男に友人達と交友関係を築いて欲しいと願っているのだ。
「僕が負けたら……?」
そう聞くサイの目の前に、ルージュはあるものを見せた。それは、ルージュの顔が大々的に載せられ、その下に「次代のシャインルビーを継ぐ女、ルージュ・クリムゾン。ゴーレム決闘屈指の実力者。」と書かれた、彼女を宣伝する為のポスターだった。
「これを100枚、町中に張ってもらいますわ。」
それがサイの賭けるもの、ルージュはそれを彼に押し付けた。サイはポスターを見て「はぁ……。」と呟くしかできなかった。
「私は私の名を知らしめる為に、貴方はガールフレンドを得る為に、この決闘は執り行われるのですわ。よろしくて?」
「……はい、頑張ります!」
サイとルージュ、2人は3日後の正午に決闘場にて決闘を行う事を決定した。サイはそれまでにジェネシスタの体を調整する事に
取り組んだ。
その日の夕方、サイは家に帰ると早速ジェネシスタの体をバラバラにして、各部位に、硬度を上昇させる魔法をかけた。
「ねぇ、ルージュ様が言ってたよね?自分を倒せる男になら自分の友達を任せてもいいって。」
「それがどうかしたのかい?」
「もしジェネシスタがルージュ様に勝っても、それはジェネシスタの強さであって、僕の強さでは無いよね?ジェネシスタが強くても、僕がゴーレム使いとして強くないんじゃ……。」
サイはその日ルージュに言われた事を思い出した。そんな彼の胸に秘めた考えを聞いたジェネシスタはこう返した。
「見たまえ、その腕の関節。ボロボロじゃないか。身体が私の力について行けてないんだ。」
「うん……。」
「だが、君が3日のウチに私の身体を調節し、3日後の決闘でその身体でルージュのゴーレムを撃破すれば……私は四天王のゴーレムよりも強いという事になる。」
「だから、それは俺の強さじゃなくない?」
「そのゴーレムを作ったのは君だろう?」
「そうだけど。 」
「なら君は誇っていい。ゴーレムを作る腕も、ゴーレム使いの力のうちさ。誇れるように、私の身体上手く調整してくれよ?」
「……分かった、やってみる!」
ジェネシスタは上手く言ってサイのやる気を引き出す事に成功した。サイは手先に意識を集中させ、ジェネシスタの関節を硬化させた。
続けて装甲も魔法で強化し、魔法を使える
ようにも調整した。3日間のジェネシスタ強化はあっという間に終わり、サイとルージュの決闘の日はやって来た……。
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