第6話「ゴーレム検査」

……これは一体どういう状況なんだ……!?と、サイは困惑するしか無かった。四天王の1人、カリバーをゴーレム決闘で倒したかと思えばその翌日、学校に登校し、教室に入るするやいなや突然10人程の生徒が教室に押しかけてきて、彼を囲んできたのだから。


「あのー……何か用ですか?」


恐る恐るサイがそう聞くと、生徒のうち1人が声を発した。


「君がカリバー先輩を倒した所を見た時……スカッとしたよ!!ありがとう!!」


「え……?」


そして、その1人の生徒を皮切りに、その他の生徒達もサイに詰め寄り、彼に感謝の言葉を述べた。


「カリバー先輩がやられて胸が晴れたよ!!」


「1年なのにやるなぁ!!」


「俺達カリバー先輩に負けて色々やらされた生徒達なんだ。俺はパシリにされて、こいつは放課後の掃除を押し付けられて、こいつはレアなゴーレムの素材を奪われたんだ。そんでこいつは……」


彼ら曰く、自分達はカリバーに決闘を挑まれ、いやいやそれを受けた結果酷い目に合わされたそうだ。

そんな彼らは、憎きカリバーがサイにやられる所を見てスカッとしたらしい。


「君強いんだな!!」


「いや、強いのは僕じゃなくてジェネシスタですよ。ね?ジェネシスタ。」


サイの事を強いと褒め称える男子生徒に対して、サイは下手に出てカリバーに勝てたのはジェネシスタのお陰だと謙遜した。


「ジェネシスタっていうゴーレムなのか!魔導王ロード・ジェネラルの生まれ変わりというのは本当なの?」


「もちろんさ。もっと褒めたまえ。」


女子生徒の言葉を聞いたジェネシスタはサイのポケットから飛び出し、胸を張って自分の功績を自慢した。

一方サイはというと、早くこの状況から抜け出したい……そう考えていた。多くの人に囲まれるのは慣れてないからだ。


「いやー人気者は大変だねぇ!!」


だがジェネシスタはとても嬉しそうに生徒達からチヤホヤされていた。彼女は前世で冒険者として活躍し、多くの人達から羨望の眼差しを向けられていた。

その記憶を思い出し、今も尚そんな状況に

ある彼女は愉悦に浸っていた。


「その人気者に用事がありましてよ。」


その時、そこに1人の女子生徒が現れた。威厳のある声を聞いた、サイを取り囲む生徒達はハッとして声のした方を見てみると、そこにはゴーレム決闘の四天王、ルージュ・クリムゾンがいた。


カールを巻いた赤髪と眼力のある表情は彼女の心の強さの現れであり、印象的な特徴を持つのでこの学園内において彼女を知らない人はいないと断言できる。


「ル、ルージュ様!?」


「御機嫌よう庶民の皆様。道を開けてくださる?」


ギョッとした表情でルージュを見つめる生徒達を、彼女は言葉で払い除けて、サイの元まで歩み寄った。


「僕に用……ですか?」


「そうですわ。生徒会室に来なさい。話はそれからですわ。拒否権はありません。さぁ席から立ち上がりなさい。」


ルージュはまずサイを生徒会室に連れていく事にした。彼女が何をしたいのか分からないサイだったが、自分如きではルージュに逆らえる訳など無いと、彼は理解していた。


「上から目線な子だなぁ。君は一体何者なんだい?」


だがジェネシスタは飄々とした態度でルージュにそう質問した。ルージュはジェネシスタに対して、失礼ですわね、と心の内で思いつつ、ジェネシスタに自己紹介をした。


「私の名前はルージュ・クリムゾン!!大手冒険者ギルド「シャインルビー」を代々営む名言「クリムゾン家」の一人娘ですわ!!」


ルージュは迫力のある声で自己紹介をした。それを聞いたジェネシスタは「なるほど。」と彼女の身分を理解した。


「貴方も来なさい。前世は魔導王と言えど

今は私の方が立場は上なのですからね!!」


「横暴な子だねぇ。」


ルージュはサイにジェネシスタを持って生徒会室に来るよう促した。ジェネシスタはルージュの事を横暴な態度だと思いつつ、サイに連れられ、生徒会室に向かった。


ジェネシスタを連れて生徒会室まで来たサイは、先日カリバーやその取り巻きに、自分のゴーレムの事を「オーバーチューン」だの「不正ゴーレム」だのと罵倒された事を思い出し、ルージュが何の為に自分をここに呼んだのか瞬時に理解した。


「ルージュ・クリムゾンですわ。1年のサイ・トループ、そして彼の所有するゴーレムを連れてきました。」


生徒会室のドアを開け、部屋にいた人達にそう言うルージュ。その人達とは、ルージュ同様生徒会に所属する1年〜3年からなる4人の生徒と、彼らをまとめる顧問の先生だった。


「サイ・トループ君、ですね?」


「はい。」


生徒会の3年の男子生徒がサイの名前を確認し、自分がサイ・トループである事を明かすサイ。そして今度は2年の女子生徒がサイに自分達の目的を明かした。


「貴方のゴーレムに、不正ゴーレムの疑惑がかけられています。今回は、貴方のゴーレムを検査する為にここに呼ばせてもらいました。お時間おかけしますが、不正ゴーレムは野放しにしておけませんので、ご理解ください。」


やっぱりか……サイの頭の中に思い浮かんだのはその考えだった。その時、彼のポケットからジェネシスタが飛び出し、自分は不正ゴーレムではないと申し出た。


「私は不正ゴーレムではない。人の魂が乗り移っただけだ。」


「ちょっと、余計な事言って変な事になったらどうするの?」


「その時はその時だ。切り抜ける手段はいくらでもある……多分。」


「多分て……。」


生徒会の面々はサイとジェネシスタのやり取りを見終えた後、ポケットから虫眼鏡のようなものを取り出した。

これを通して物を見れば、その物質の名前や状態を見る事ができるという、魔法の技術を用いて作られた道具、通称魔道具だ。


「これで見れば分かります、そのゴーレムが不正ゴーレムかどうかも。」


顧問がそう言った後、1年の男子生徒はサイにゴーレムを机の上に置くよう指示した。


「サイ君。ゴーレムを机の上に置いてください。」


「はい……。」


サイは生徒会の生徒に言われた通り、ジェネシスタを机の上にポン、と置いた。


「それでは皆さん、初めなさい。」


ルージュの言葉を聞いた生徒達は、魔道具を使ってジェネシスタの身体を検査した。魔道具にはジェネシスタの体を構成する素材や、ジェネシスタの魂が乗り移っている事が、文字で浮かび上がった。


乙女の姿であれば恥じらう所だが、ゴーレムだからかそういう物は感じない、不思議な気分だ。ジェネシスタはそう考えながら生徒達に検査された。検査は3分程で終わり、その結果は……。





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