第5話「新たなる名前」

カリバーとの決闘を終えたサイとロードは、学校に戻り、荷物を持ってすぐに家に帰ることを決めた。

またカリバー達に何かされるかもしれないと考えたサイは、今は学校に長居したくないと思っていた。だが、足早に決闘場を去るサイを追いかけてきた生徒が1人……。


「なぁ君のゴーレム見せてくれよ!」


「あっ!」


その生徒はサイに追いつくと、彼が持っていたロードを目にも止まらぬスピードで手に取り、そのゴーレムをまじまじと観察した。


「返してください!」


「よく出来てるねぇ!俺はゴーレム研究部の部長なんだ!コイツの謎を解明してやる……一体このゴーレムの強さの秘訣は一体何なんだ〜?」


ゴーレム研究部の部長と名乗るそのメガネをかけた生徒は、ポケットから虫眼鏡を取り出し、ロードの身体を隅々まで観察し尽くした。好奇心に駆られた彼に、サイの声は聞こえていないようだ。


「離せ少年。さもなくば……。」


「声を発する仕組みはどうなっているんだ?どこかに発声器官があるのか……?」


彼はロードの声を聞いてますます興奮状態に陥った。そんな彼に対して、ロードは魔法を行使した。


「スリープ。」


「あっ……。」


ロードが使った魔法、スリープは相手を眠らせる魔法だ。彼女の掌から霧のようなものが発せられ、それを至近距離で体内に取り入れた部長は眠りにつき、その場に倒れ込んだ。


「すぅ……すぅ……。」


「今のうちに行こう、サイ。」


「あ、はい。」


ロードは部長の手から抜け出し、サイに拾われポケットに入れられた。そして2人は改めて家に帰る事にした。






「何を書いてるんだ?」


家に帰ってきたサイは、勉強用のノートに何かを書いていた。ロードがそれをサイに尋ねると、彼はこう答えた。


「ロードの新しい名前を考えているんです。ロードって言うのは過去の名前でしょう?だから今世での名前が必要かなーと思いまして。」


「ほう。確かに私も生まれ変わったからには新しい名前にリニューアルしないとな。どれどれ……?」


ノートに書かれていたロードの新たな名前の候補は、ガントラス、ザイオーム、シュトルム・イェーガー、等と言ったものだった。

サイにとってはそれがカッコイイ名前だと感じているのだが、ロードにとっては現代人の感性にはイマイチ共感できずにいた。


「うーん、私の感性ではこれだと言える物が無いなぁ。」


「そうですか……もっと良い名前を考えてみます。」


サイはロードでもカッコイイと思えるような名前を必死で考え、思いついた物をいくつかノートに書いてみた。その内の1つに、彼女は目を付けた。


「ちょっと待ってくれ。この「ジェネシスタ」という名前……良いな!」


「本当ですか?」


ロードはジェネシスタという名前に目を付けた。この名前にサイはある意味を込めた。それは「創世の星」。ロード・ジェネラルの名前を1部引き継ぎつつ新たな名前にしようと、サイは考えたのだ。


「実にロマンのある名前だ。響きも良いし、

私の名前はジェネシスタ、これで決まりだ!」


「はい!よろしくお願いします、ジェネ

シスタ。」


そうして、ロードの新たな名前はジェネシスタに決まった。今世での名前を手に入れられたジェネシスタは嬉しさで胸を踊らせていた。


「それと、私に敬語を使うのは止めたまえ。」


「え?そんな……良いんですか?」


「今の私はロード・ジェネラルではなくジェネシスタなんだ。それに私と君の関係はゴーレムとゴーレム使いだろう?自分のゴーレムに敬語を使う者がいるのかね?」


「うーん……じゃあ……これからもよろしく、ジェネシスタ。」


そしてロードはサイに敬語を使う事を禁止

し、サイはそれを引き受けた。


「あぁ、よろしく頼むよ、サイ。」


その日の夜、サイは両親との夕食中に、母にある事を聞かれた。


「サイ、貴方ゴーレム作ってるでしょう?それで決闘をしたりするの?」


「僕が作ってるのはプチゴーレムで、皆が使ってるハイゴーレムとは勝負になんてなりはしないから、決闘はしてなかった……んだけど、最近3回も決闘しちゃった。」


サイは母の質問にそう答えた。彼の両親

は、母のキリマがよく話をする明るい性格

の一方、父のレイブンはあまり話をしない

寡黙な性格をしている。


「それ、公開処刑っていうのじゃないの?」


「うん、1回は公開処刑で、僕のゴーレムはひどくやられたんだけど……2回は、僕の方が勝っちゃったんだ、ロー……ジェネシスタのお陰でね。」


「ジェネシスタ?貴方が作った自立思考型のゴーレムの事?」


サイがプチゴーレムでハイゴーレムに勝ったと聞いて、キリマはかなり驚いた。


「うん。ジェネシスタは強いんだ。」


「そんな強いゴーレムを作れるなんて、サイは凄いのね。」


キリマはサイのゴーレムを作る技術力を褒め、彼は「それほどでも……。」と返した。ジェネシスタの事はいつか両親にも話さなくては、サイはそう決意しながら、夕食を口にした。

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