第4話「ロードの力」
その日の放課後、ジョー以外のカリバーの取り巻き達によって多くの生徒達が決闘場に集められた。
ジョーは昨日サイにやられたのがショックで、学校を休んでいる。
「カリバーとサイの決闘だとよ。また公開処刑か?」
「昨日のサイのゴーレム、あれ何だったんだろうな。」
「あれは流石にオーバーチューンだろ。」
生徒達は決闘を前にして逸る気持ちを抑えられず、周りの生徒達とあれやこれやと話をしていた。
「大丈夫ですか?ロード。」
「昨日のを見ていただろう?私に敵は無い!」
決闘場に立つ前に、サイはロードにいけるのかと確認し、それに対して彼女は大丈夫だと答えた。
「君が望むなら、私は君のゴーレムとなり
戦おう。」
「なら、1つ望みを言っても良いですか?」
「なんだい?」
サイは、深呼吸をした後、ロードにある命令を下した。
「僕を守ってください。」
「もちろんだとも。」
ロードはゴーレムなので表情を読み取る事はできない。しかし、彼女がやる気に満ち溢れている事は、その口ぶりから察する事はできた。
「調子に乗るなよザコサイが……!」
カリバーはそう呟き、取り巻きに愛機のオーガロンを持たせて戦いの舞台に立った。それと同時にサイもロードを持って舞台に上がると、会場はワッと盛り上がった。
「頑張れカリバー!!」
「お前に小遣い賭けてんだぞ!!」
「不正なゴーレムなんてぶっ潰せ!!」
生徒達の歓声を受けて、カリバーは気分が高揚していた。昨日見たサイのゴーレムは何か細工をしていたに違いない、そうだ、俺がザコサイに負ける訳が無い!!それが彼の心境だった。
「ルージュ先輩、あのゴーレムどう思いますか?」
「独りでに動き、話す。自立思考型のゴーレムは高度な技術が無ければ作れないですわ。もしそうでないのなら……人の魂が宿ってる、そう解釈するしかありませんわね。」
昨日と同様、水晶玉から決闘場の様子を見ていたルージュとアレン。同じ四天王として、カリバーの戦いを見ない訳にはいかず、ルージュとアレンは委員会室から、メメント
は決闘場で間近に、決闘を視察する事にしていた。
そしてロードとオーガロンの身体が地面に置かれ、カリバーは魔法操縦桿を握った。その直後、決闘委員会の生徒が手を上げ、決闘開始の合図をし、腕を勢いよく振り下ろした。
「決闘……開始!!」
「怪しい技を使わせる前に潰す!!オーガスラッシュ!! 」
開始早々に、カリバーは必殺魔法をオーガロンに発動させた。彼の必殺技は剣から放つ衝撃波、オーガスラッシュである。
オーガロンが腰のオーガブレードを抜刀し、剣を勢いよく横薙ぎの形で振りかざすと、剣の軌道に現れた衝撃波がロードに向かって飛んでいった。
「来る……!!」
必殺の迫力に気圧され、そう呟くサイだが、彼と反対に、ロードは冷静にその技を対処した。
「無駄だ!!」
ロードは目の前に結界魔法を展開、それによって現れた長方形の結界でオーガスラッシュを霧散させるようにバラバラに砕いた。
それを見て、カリバーは「何っ!?」と口から零すほど驚いた。渾身の必殺技がこうも簡単に破られるとは、思いもしなかったからだ。
「不正だー!」
「イカサマだー!」
「決闘委員会仕事しろー!」
途端に慌ただしくなる会場だったが、生徒達の声はロードにとっては聞くに耐えないものだった。
「ホントすぐ熱くなるんだなぁ最近の若者は……。こんな所は長居したくない。」
ロードはそう呟くと、手元に光刃を形成し、飛行魔法で宙に浮き上がり、オーガロンに向かっていった。
それに対して、カリバーは咄嗟にロード目掛けて剣を振り下ろしたが、ロードの光刃によっていとも簡単に剣は弾き飛ばされ、ロードは武器の1つを失った。
「まだだ!!」
だがカリバーは諦めず、オーガロン額に付いてる小型魔弾砲を連射し、ロードを牽制した。しかし、それすら結界魔法で防ぎ切るロード。
カリバーは続けて左右の腰部に納刀された
(校内において)切れ味抜群のダガーを取り出し、それでロードを襲ったが、それすら光刃によって真っ二つにされ、使い物にならなくなってしまった。
「ふっ!!」
ロードはトドメに打って出た。彼女はカリバーの両腕を光刃によって切り落として敵を無力化し、浮遊魔法で宙に浮いて光刃をオーガロンの喉元に突きつけた。
「終わりだな。」
「クソ……俺はこの学園の四天王だぞ!!相手が不正ゴーレムだろうと、四天王は絶対勝つんだぁ!!」
カリバーは腕が無いなら脚だと思い、オーガロンをフラつかせがらも右脚による回し蹴りを繰り出させようとした。
「絶対か、こんなにも脆い「絶対」は初めて聞いたね。」
ロードは冷静に光刃を振りかざし、オーガロンの右脚を切り落とした。
「ま、待ってくれ!!負けたら1年間お小遣い無しだとお父様に言われているんだ!!それに俺は冒険者稼業で成功したシイハ家の長男なんだぞ!?そんな俺が決闘で負けでもしたら、お父様に合わせる顔が……!!」
「そんな事情、私には関係無い。これは決闘だ。」
必死に助けを乞うカリバーに、ロードは冷徹な答えを返した。それを聞いたカリバーは自暴自棄になりかけ、怒りの矛先をロードとサイに向けた。
「ザコサイの不正ゴーレムが……調子に乗るなよ!!」
「そうだ、今君が賭けるものを思いついた。」
必死に唸るカリバーはロードの言葉を聞いて口から「は?」と零した。
「私が勝ったら……」
「ちょ、待っ……!!」
私が勝ったら……そう言って光刃を展開させた手をゆっくりと持ち上げるロードに対して、カリバーは今までに無いくらい焦りを顕にするが、彼女は手を止めはしなかった。
「私達に関わらない事。」
その瞬間、オーガロンの首がロードによって切り落とされた。ロードの戦いに見とれていたサイはふと周りを見てみると、口を動かしている生徒は誰1人としていなかった。
先程まであんなにいきり立っていた生徒達が、決着の瞬間を見た直後、シーンと静まり返っていたのだ。
「やはりここは落ち着かないな。帰ろう、
サイ。」
「あ、はい。」
ロードの一声で我に返ったサイは、ロードをポケットに入れてその場を後にした。それを見て、彼らに対して目を光らせる生徒が1人いた事を、サイは察知できなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます