第2話「魔導王、再臨」
「ザコサイだ。」
「カリバーにやられたのに懲りてもうゴーレムに関わらなければいいんだけどな。」
「あれだけやられりゃゴーレムなんて嫌いになってるだろ。」
翌日、学校に登校したサイを待っていたのは冷たい言葉だった。彼は教室に向かう途中、周りの生徒達から心無い言葉を囁かれ、それでもそれに屈せず教室まで向かった。
こんな罵倒も時間が過ぎれば終わるだろう、そう思っていたからだ。だが彼が再びこの環境に失望する時はそう遠くはなかった。
彼はこの学園に入学して1ヶ月が経過している。だが周りに馴染めず友達もいないので、昼食の弁当は校舎裏で1人黙々と食べるのが日課となっていた。
「お前は決闘には使わないからな。」
サイはそう呟いて、ポケットから昨日完成したゴーレムを取りだした。細いボディラインが特徴のゴーレム。
もうカリバーに目を付けられないよう、人前にこのゴーレムを出す事は控えてたが、今この瞬間は周りに誰もいないと思ったので、ポケットからゴーレムを取り出し、その姿に
見とれていた。
だが、その場に「誰もいない」と勘違いしたのが命取りだった。
「あれ〜?サイ君またゴーレム作ったの〜?」
そこに現れたのは、1週間前サイに痛い目を見せつけたカリバー本人と、その取り巻き4人だった。取り巻きの1人はそう言ってサイを威圧する。
「これは決闘の為に作ったんじゃ……。」
「そんな事はどうでもいいんだよ。」
サイの言葉を遮る様にカリバーは口を開き、彼を睨みつけた。
「俺が言いたい事分かるか?お前みたいな奴がゴーレムに関わるなっつってんだよ!!ゴーレム決闘がウリのこの学校でザコのゴーレム使いは要らねぇんだよ!!マージクル学園の面汚しめ!!」
そう言いながらカリバーはサイのゴーレムを奪い取り、彼を睨みつけた。
「なぁカリバー!!お前は先週コイツボコったばかりだろ?今度は俺にやらせろよ!!コイツにどれだけゴーレム作っても無駄だって分からせてやるよ!!明日の正午に決闘場に生徒達呼んで公開処刑な〜!!」
取り巻きの1人、ジョーはカリバーにそう提案した。
「良いぜ。そうだサイ!!今度お前が負けたらお前退学って事にしようぜ!!」
「い、嫌だよそんなの……。」
「断ったらこの場でゴーレムバラす〜!!」
決闘を断るサイだが、そんな彼にカリバーは非情な選択を迫った。それを聞いたサイは、嫌々決闘を承諾した。
「や、やるよ、決闘……。」
「可哀想にねぇ!!こんなゴミの為に退学する事になるなんて!!ゲハハハハハハ!!」
カリバーはその場にサイのゴーレムを放り捨てるように投げ出し、サイの元を去った。
「どうしよう……。」
彼は自分のゴーレムを戦わせるつもりはこれっぽっちも無かった。しかしこんな事になっては決闘をしない訳にはいかない。
決闘はする事が決まれば当事者同士での取り消しが可能だが、カリバーに脅されたサイはそれができない。
決闘をすっぽかせば、決闘場に来た方に相手が賭けたものが渡される仕組みになっている。故にサイが決闘場に来なければ彼は退学となる。
サイは翌日の正午までの間、陰鬱な気持ちでの時間を過ごした。またゴーレムを壊され、生徒達に罵倒され、恥を晒す事になるとは。
もうそんな思いはしたくない。そんな彼の思いとは裏腹に時間は過ぎていき、ついにその日の正午直前まで時間は進んだ。
「また公開処刑だとよ。」
「またサイが処刑されるのかよ〜。」
「まぁアイツのマヌケな様は何度見ても飽きねぇからな!!ハハッ!」
約1週間越しのサイの再戦、それを見に来た生徒達の集まってた決闘場は前よりもザワついていた。
決闘の舞台に立つサイは、ゴーレムを地面に置き、ジョーは取り巻きに愛機メタリッカーを地面に置かせていた。
「今度負けたらお前退学って事で良いよなぁ!?」
「う、うん……じゃあ僕が勝ったら
……。」
「プチゴーレムがハイゴーレムに勝てるわけねぇだろ!!それにこの戦いは処刑なの!!処刑人にやるもんなんてねぇよ!!」
「アハハハハハハハ!!」
サイに対するジョーの罵倒を聞いた観客は大いに盛り上がっている。それに臆せず、最大限の抵抗をする事覚悟で決闘に挑もうとするサイ。
そして、決闘を取り仕切る生徒会、決闘委員会の生徒の決闘開始の合図が会場に響いた。
「決闘……開始!!」
「死ねぇー!!」
開始早々メタリッカーのバーニアを吹かせてサイのゴーレムに突撃させるジョー。
プチゴーレムじゃハイゴーレムに勝ち目は無い。だが、自分をこの学園に入学する事を許した両親に報いる為にも、何者にも屈せず
戦う……そう決意したサイ。
彼は魔法操縦桿を握りゴーレムを動かそうとした。その時……。
「!!」
「なんだぁ!?」
その場にいた全員がその光景に驚きを隠せずにいられなかった。
サイのゴーレムの足元に、緻密な模様の描かれた魔法陣が展開されたのだ。
「あれは……転生の陣、しかも
かなり高レベルの。」
「一生徒に使えるレベルの魔法では
ありませんわね。」
決闘の様子を決闘委員会室から水晶で覗き見ていた見ていた四天王、アレン・ダレアスとルージュ・クリムゾンはそう呟き、その様子をまじまじと見つめていた。
「どんな手品だろうとぉ!!」
ジョーは止めていた手を動かし、メタリッカーにサイのゴーレムを襲わせようとした。それに対して彼のゴーレムがひとりでに動き出し、魔法を発動した。
「なっ……!?」
またしてもその場の全員が驚く事となった。サイの操縦とは無関係に勝手に動く彼のゴーレムが空に手を翳した瞬間、メタリッカーの右腕が吹き飛んだのだ。
そのゴーレムは続けて右手で空を切り、それをする度にメタリッカーは左腕、右脚、左脚と吹き飛ばされていき、ついにメタリッカーは手足の無い達磨のような姿となった。
「……何なんだあのゴーレムは……!!」
観客席から戦いの様子を見ていたカリバーは、一方的なサイのゴーレムの戦闘にそう呟くしかできなかった。
次の瞬間、さらに有り得ない事が起きた。なんとゴーレムが喋ったのだ。
「この会場、この観客、これってゴーレム決闘だよね?まさか200年経っても行われていたとは。そしてまさか……私自身がゴーレムになれるとは……。」
女性らしい声で少年のような口ぶりで話すサイのゴーレム。それは、観客席で戦いを見ていた四天王の最後の1人、メメントすら聞いた事の無い事例だった。
「相手のゴーレムの頭部を破壊した者が勝ちというルールも変わってないというなら……。」
サイのゴーレムはそう言うと、手元から光の刃を形成し、メタリッカーに向かっていった。
「なんなんだよ……なんなんだそのゴーレムはよぉ!!」
目の前の状況が理解できず、ゴーレムを操縦するのもままならないジョーは、言葉を発するサイのゴーレムにそう聞くしかできなかった。
「なんなんだ、かぁ……私の名前はロード・ジェネラル。魔導王ロード・ジェネラルの名は果たしてこの時代においてどこまで知れ渡っているのかな?」
自己紹介をしたゴーレムの中の人、魔導王ロード・ジェネラルは、そのまま目線の上にある、動かないメタリッカーの頭部に飛びかかり、光刃によってそれを切り落とした。
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