ゴーレム決闘〜最弱の僕のゴーレムに魔導王の魂が宿ってしまった〜
ヒカリ
第1話「ゴーレム決闘」
この世界は平等では無い。強者がいて、弱者がいる。そうして世界が成り立っているのだ。
このマージクル学園では、生徒間でのあらゆるトラブルを土人形、ゴーレムによる決闘「ゴーレム決闘」によって解決するという風習がある。
この学園の生徒は名家の子息令嬢や、裕福な家庭の生まれの生徒がほとんどだ。
ゴーレム決闘には意味がある。強いゴーレムを作れる創作力と、それを上手く操る事ができる操縦術を持つ生徒は、将来有望なゴーレム使いとして、多数ある冒険者ギルドなどから目を付けられるという。
その為にゴーレム決闘でのし上がり、力を示そうとする生徒は少なくない。
この生徒、サイ・トループは、父が冒険者をしており、それで稼いだ資金によってマージクル学園に入学する事ができたが、彼の問題はゴーレム創作力にあった。
彼はどれだけゴーレム作りの腕を磨こうとしても、ゴーレムの中では最弱レベルとされる下級のプチゴーレムしか作る事ができなかったのだ。
そんな彼は今、学園内でのゴーレム決闘の実力者、四天王の1人、ボサボサとした青い髪と鋭い目付きが特徴の少年、カリバー・シイハに見せしめの為の公開処刑を行われていた。
「くっ……!!」
「へははぁ!!」
焦るサイに対して余裕の笑みを浮かべるカリバー。彼は魔法で作られた操縦桿を握り、中級のハイゴーレムの愛機、オーガロンを
使ってサイのゴーレムの足を、もぎ取り、じわじわと標的を追い詰めていった。
「うわ〜カリバー容赦ねぇ〜。」
「いけいけ〜!!」
「プチゴーレムしか使えねぇ無能に現実を分からせてやれ〜!!」
カリバーのゴーレム解体ショーを見て盛り上がる生徒達。この決闘場に集められた生徒は、ほとんどがカリバーの味方であり、サイの敗北を望んでいる。
親によってこの学園に入学できたサイは、ゴーレム決闘に関わりさえしなければこの学園でもなんとかやっていけるんじゃないかと思っていた。
しかし最悪な事に四天王のカリバーに目を付けられてしまった。それが彼の運の尽きだった。
ついにサイのゴーレムの四肢が全て削ぎ落とされ、彼のゴーレムは達磨状態になってしまった。
そしてついにカリバーはオーガロンに剣を抜かせ、それによってサイのゴーレムの頭を
切り落とした。
ゴーレム決闘において頭部の破壊は敗北を意味する。この瞬間、サイの敗北が決まった。
「俺のゴーレムが……!!」
すぐさま自分のゴーレムに駆け寄ろうとするサイに、カリバーは「おい!!」と威圧的な声をかけ、続けてこう言った。
「まだ勝負は終わってねぇぞ!!これから!!コイツの核を破壊する!!徹底的に潰して初めて、コイツはこの世界じゃやっていけねぇ事を実感するのだからなぁ!!」
そう言ってサイのゴーレムの胸部をオーガロンに踏みつけさせるカリバー。そのまま彼はオーガロンにサイのゴーレムの核を踏み潰させた。
「フォォォォォォォォォ!!」
「よくやったカリバー!!」
「サイざまぁー!!」
その場の生徒達は半ば狂乱しているかのように湧き上がり、カリバーを賛美する声と、サイを罵倒する声が決闘場に飛び交った。
ゴーレムの強さは、大きさに依存する。ゴーレムは大きさ事にクラスが決められており、下級のプチゴーレム、中級のハイゴーレム、上級のメガゴーレムと3種類に区別
されている。
プチゴーレムはハイゴーレムに勝てるわけがない、それがこの世界での常識だ。つまり、プチゴーレムしか作れない、使えないサイが、この学園において最弱なのだ。
サイはバラバラに壊されたゴーレムの亡骸を手に、会場を後にし、そのまま家に帰った。家では母が家事をしていた。
「ただいまー。」
「おかえりなさい。」
サイは、母と挨拶を交わして自分の部屋に入ると、ゴーレムの亡骸を机に置き、自分の未熟さを攻めながら、ゴーレム作りの基礎が書かれた教本を片手に、次のゴーレム作りに
取り組もうとした。
「僕にもっと良いゴーレムが作れれば……とにかく勉強あるのみだ!今までの努力が足りなかったからきっとハイゴーレムも作れないんだろう。やってやるぞ……僕と同年代の子供だってハイゴーレムを作れるんだから。」
サイは15歳である。人は15歳にもなればハイゴーレムが作れるようになると言われているが、サイにはそれができない。
彼はその原因が「努力不足」だと思い、次にゴーレムを作る時は以前よりももっと時間をかけてゴーレムについて勉強して、ゴーレム作りに取り組もうとした。
そして1週間の時が経過下のだが……完成したのはプチゴーレムだった。
「やっぱこうなるか……。」
この時ばかりは、サイも自分の限界を感じ、深く傷心した。
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