白と黒の弐号機、登場!

八五三(はちごさん)

プレゼント。

「さぁー。始めますか!」


 換毛かんもうとは。

 

 毛が生え替わる時期のことをいいます。

 犬は換毛期になると、1カ月ほどかけて古い毛が大量に抜けて、新しい毛に生え替わります。

 換毛期は、年に2回です。

 前半は、

 春から7月頃にかけての冬毛ふゆげから、密度の少ない夏毛なつげに。

 後半は、

 秋から11月頃にかけて夏毛から、ふわふわとした保温性の高い冬毛に。


 このサイクルを繰り返すことで、季節ごとの気温や湿度の変化に対応します。

 

 我が家の白、黒は――“ダブルコート”!

 だから、換毛期があるのです。


 うん? 犬なら換毛期があるのが、常識。と、思っているそこのアナタ!! そこのアナタですよ!!!


 アナタの常識は、ちっと間違っているのです、よ。


 換毛期があるのは、上毛オーバーコート下毛アンダーコートの二種類の毛のうち、アンダーコートが春と秋に生え替わるワンちゃん、だけなんですよ。

 じゃーなにか? ダブルコートの犬だけしか、毛の生え替わりしないと!

 いえ、そんなことはありません。

 オーバーコードだけを持っている犬種。“シングルコート”のワンちゃんSは、何月頃にだいたい毛が抜け始めるというような、明確な時期はなく。年間通して徐々に生え替わっているんいんですな、これが。


 また、


 ダブルコートの犬種でも、時期がはずれて真冬や真夏に入ってから換毛が始まる。、も、います。

 人と同じで、“気温の変化を感じにくい生活をしていたり”。あと、“日照時間不足の生活をしている”。

 と、

 体内リズムが狂ってしまい。換毛するときでも、あいまいに毛が抜け終わったり。換毛しないことで、暑い季節に冬毛が残ったり。

 逆に、寒い季節に冬毛が生えなかったりしちゃって。

 ――体温調節が難しくなって、体調不良を引き起こしてしまい。健康を害してしまっちゃうんです。


 ぁ、

 いま、

 心当たりが、あるって、思った人、居るじゃないかなぁー。


 換毛期が安定しないは、生活習慣リズムを規則正しくしてあげれば問題が解決していきますよ。

 できるだけ、散歩に連れていってあげて。積極的に季節の気温変化を体に、感じさせてあげれば、勝手に神経が活発化して健康的な体へと回復していきます。


 ……まぁー……。

 

 うちの白と黒は。ゆきやこんこの有名な歌詞である、“犬はお外で庭駆け回り”なので、問題ナッシング。


 では、――ない!


「くろぉー! 逃げんなぁーあー!!」

「キャン、キャン! 『毛づくろい。いやあーぁー、だーあーぁー!』」


 小柄な少女と黒柴が家の中を走り回っていた。


原雪げんせつも黒も暴れない! 毛が、舞っちゃうでしょ!! もう!!! 白を見習いなさい。ねぇー」


 おっとりとし雰囲気ながらも、スポーティで健康的な女性。が、犬が滑らないように敷いてある、毛足の短いカーペットに横座りしながら。白柴の背中にブラッシングしていました。

 すると、

 白柴は急に女性の膝に上に、転がるように這い上がり、腹ばいに。


「あん、あん。『ママさん。お腹のところ、を』」

「はい、はい。お腹、ね」


 と、

 お腹を優しくブラシで撫でるのでした。




 超高層マンションとは、高い住居用高層建築物の俗称。その外観の形態からタワーマンション、略して“タワマン”と呼称される。

 その最上階の一室で、それは製造されていた。


東天とうてん、どんな感じ」

「いい感じに仕上がってますよ。ノミダニの駆除、それにフケや皮脂、ニオイなし」

「職権乱用だよ、原雪げんせつ

巫女みこ。これは、あれよ! あれ!! 帝国技術研究の新たな可能性を確かめるために必要なことなの」

「一理ありますね、原雪さんの言われることも。私も召喚魔術師の端くれ。東天さんとは、分野は違います。が、一人の研究者とし、興味があります。フゥン!」

「セルシ、分かってるぅー」

「ぃゃー、ぅーん、ボクとしては。セルシがこちらの世界の技術に関心を持つことは、いいことだと思うだ。でも、変な方向に染められてる感、半端ないんだけど――バステトさんとしては」

「…………、…………。『ゴシック派。だが、ミニスカメイド。も、ありかもしれない、わね』」




「大口原雪さんからお届け物でーす。サインか印鑑をお願いします」



 還暦の男性が、ダンボールの箱を持って居間に入って来ました。


明日香あすかさん。原雪が電話で話していた贈り物が届いた、よ」


 居間には男性により年上の妖艶な女性。が、二匹の犬と一緒にソファーに座り。75インチの薄型テレビを見ていました。

 映し出されている映画は。

 裏社会に生きていた男が愛を知り、表の世界で平穏な日々を暮らしていました。が、ある一つの出来事から男は裏社会へ戻る。

 それは、

 男が自分の不甲斐なさを懺悔するために、復讐することを選ぶ物語。


「原雪が面白い物、作ってみたから送るって話してやつだ、ね」


 男性と女性と狼犬と秋田犬が、ダンボールの箱を覗く。と、リボンで愛らしくラッピングされている箱が一つ丁寧に梱包されていました。

 そこに一枚のメッセージカードが。


【弐号機作製!】


「そっくりだね。明日香さん」

「そっくりだ、な。白と黒に」

「原雪からの手紙によると。『いつも、大量に抜けるあのたちの毛を再利用し。“ぬいぐるみ”にしてみました!』って書いてあるよ」

「換毛期の毛の処理は大変だからな。原雪のうきんむすめに、しては。いいアイデアじゃないか。…………、…………。弟建おとたける、白と黒が換毛期なら」

明日香あすかさん。アルテミスと真神まかみも、だね」


 弟建おとたける。と、呼ばれていた還暦の男性が居間を見回し、尋ねました。


「アルテミス? 真神は?」

「うぉ~~~~ん。『逃げました、よ。弟建。真神は』」

「逃げた! 弟建おとたける。アルテミスのブラッシング、任せる。私は、真神を捕まえに行ってくる!!」


 女性は年を感じさせない足取りで、居間を颯爽と出ていきました。その姿は、75インチの薄型テレビに映し出されている映画のなかの俳優さんよりも、機敏な動きでした。


「気をつけて、ね。明日香さん」




「ワフ。『しかし、師資しし相承そうしょうって四字熟語あるけど。師から弟子へ学問や技芸ぎげいなどを引き継いでいくことはいいとして。性格までも引き継ぐのは、どうなのかしら』」

「次はどこをブラッシングしますか? アルテミス」

「あん、あん。『弟建。お腹のところ』」

「はい、はい。お腹です、ね」

「あん、あん。『いいわぁー』」

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白と黒の弐号機、登場! 八五三(はちごさん) @futatsume358

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