かわいいともだち
大黒天半太
小さきもの
その小さなぬいぐるみは、小さな女の子のともだちだった。
いつも一緒にいてくれる、何もいやなことは言わず、何もいじわるなことをしない、小さなともだち。
物心つくころには、もう、となりにいて、どこへ行くにも、何をするにも、一緒だった。
女の子が力任せに振り回しても、乱雑にどこかにぶつけても、小さなともだちは怒ったりしない。
むしろ、何かに女の子がぶつかりそうになったら、壁やその何かとの間に入って、クッションになってくれた。
転んだ時も、ともだちが下になってくれ、思ったよりも、痛い思いやおおきなケガはしたことがない。
保育園に通うようになると、ともだちは連れて行けなくなり、離れる時間が増えて行った。
家に帰ると、ともだちに一日離れていた間に起きたことを話し、一緒に遊ぶ。
保育園でできた新しいおともだちと遊んでも、帰ってともだちとも遊びたかった。
だって、ともだちは変わらず、何もいやなことは言わず、何もいじわるなことをしない。女の子が何を言っても、何をしても、怒らないで、ずっとともだちでいてくれる。
保育園の新しいおともだちは、時々いやなことを言ったり、いじわるをしたり、女の子の言うこと・することに怒ったり、するから。
新しいおともだちには、その小さなともだちを、見せなかった。
見せないし、渡さない。
小さな女の子がいつも大事そうに抱きかかえているともだちを、新しいおともだちの多くは、最初は「見せて」とは言うものの、「汚い」「臭い」「かわいくない」と言って、嫌う。手に取らない新しいおともだちは、まだしも、手に取った新しいおともだちの中には、女の子に返さずに、そのままともだちを捨てようとするものもいたからだ。
お母さんが遅くなっても、お腹がすいても、寂しくて泣きたくなっても、暗くなって寒くなっても、ともだちがいれば我慢できる。
抱きしめていれば、そこだけは暖かいから。
かわいいともだち 大黒天半太 @count_otacken
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