第24話

 小太りは続けた。

「この人覚えているだろ、おばあちゃんが一回目に入院した時君の晩飯に毎晩付き合ってくれた人だ。」

 おじおばさんが小太りの言葉にうなづいた。

 頼んでねぇよ、こいつが勝手に上がり込んでたんだろうが。

 おじおばさんは頼んでもいないのにしゃべり始めた。

「あたしがこの町に来た頃知り合いもいなくて、町内でも誰とも仲良くできなくて。そんな時あなたのおばあちゃんが声かけてくれたのよ。そしていつでも鍋持って遊びに来いって、夕飯分けてやるからって。別に食べるのに困ってたわけじゃないの、でもおばあちゃんは私に会いに来る口実を作ってくれてたのよ。そんな優しいおばあちゃんの孫が困ってるんだもの、色々気に掛けるの当然よ。」

 すると近所のおっさんが続けた。

「君と君のお母さんがけんかを始めると必ずおばあちゃんは俺を呼びに来た。けんかを止めさせるため、君のお母さんを君が傷つけないように、大事になる前にお母さんを連れ出してくれって。俺に飲み代渡してまで頼み込んできたんだ。今でもそうだ、おばあちゃんは君が怖くて俺のところに来てるんじゃない、君が誰かを傷つけるのを心配して俺を呼びに来てるんだ。」

 小太りが纏め始めた。

「その後もみんな君を、そして何より君のことを心配するおばあさんを気にして、気にかけて、今の今まで陰ながら援助してきたんだよ。君のお母さんも。」

「いくら介護保険があってもただじゃサービスは受けられない。君のお母さんが働きに出て、おばあさんの年金超過分の支払いに応じてくれていたんだ。」

 俺の母親は気まずそうにそっぽを向いた。

「君は確かに頑張った、でも間違った方向に向かっていたことに、自分でも気づいていたんじゃないのか?」

 俺はいつの間にか泣いていた。自分でも気づかないうちに涙が溢れていた。

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