飛ぶぬいぐるみ 

京極 道真  

第1話 飛ぶぬいぐるみ KAC20232 完結

ふわふわ。ぶにゅうぶにゅう。ぬいぐるみ。「きゃあー可愛い。」不細工なぬいぐるみの僕を騒がしい彼女たちは触りたい放題。「やめてくれー」おもちゃ屋の陳列棚最下位の僕は”つい”、声を出してしまった。「きゃあー、きゃあー」彼女たちの声は響き僕の声はかき消され。まあ、ぬいぐるみの僕の声など誰にも聞こえないし、気づかない。僕のぷよぷよのお腹を人差し指でグリグリグリーイ。「痛ッ。こら、こら温厚な僕でも限界がある。」僕は彼女たちを見定めてわざと棚の壁を「ドン」っと押した。上段棚より高級なセルロイド製のきれいなお姉さん人形が5,6体、彼女たちの頭に降ってくる。「痛ッ。」「痛ッ。」彼女たちが痛がる。1人がセルロイドの高級ドレスをまとった人形を腰のあたりからわしずかみ。”雑な子”っと僕は思った。その子は人形を凝視。「じーっ」まじまじと見つめて「ごめんなさい。負けました。」別の子が「ほんと綺麗。」「別の子も負けた。この人形たち綺麗すぎる。それにこのメークすごくない?」そう言って「きゃあーきゃあー」はしゃぎながら一体ずつ丁寧に上段の棚に戻した。なんだ結構いい子たちじゃないか。戻した後もまた彼女たちは、ぼくのふわふわ。ぶにゅうぶにゅうを触り放題。雑だか、案外いい子たちだったので僕は嬉しくなり思わず”ニヤニヤ”としてしまった。その瞬間、左側より”み~つけた。”と言わんばかりの強い視線を感じた。3歳ぐらいの女の子が猛ダッシュ。大きい彼女たちを押しのけて僕に突進。右手を握られた。捕まった。「ママ、お誕生日プレゼントこのクマのぬいぐるみにする。買って。」女の子のママが僕を見て。「ドウ・ドウ。私の可愛いこの子を頼むわよ。」とウインクされた。「えっ僕。バレてます。」女の子も「ドウ・ドウバレてるよ。魔法が使えるドウ・ドウ。」そして女の子に右手をつかまれ僕はレジに飛んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

飛ぶぬいぐるみ  京極 道真   @mmmmm11111

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ