転生特典は、チート持ちのぬいぐるみ!

温故知新

転生特典は、チート持ちのぬいぐるみ!

「それでは、今からあなたにはと共に異世界を救っていただきます!」



 そう言って、不慮の交通事故で死んだ俺を哀れんだ美しい女神様が差し出したのは、可愛らしいクマのぬいぐるみ。



「あの、女神様? 『これ』というのは......?」

「はい! ぬいぐるみです!」



 自信に満ちた笑顔で渡されたそれを見て困惑した。



「あの、これを持ってどうやって魔王を討伐しろというのですか?」



 だってこれ、どう見たって可愛いだけのただぬいぐるみ......


 そう口に出そうとした瞬間、どこからともかく声が聞こえてきた。



「おい、さっきから『これ』って何なんだよ?」

「えっ!?」



 手元から聞こえてきた声に驚いた俺は、ゆっくりと視線を落とした。

 すると、可愛らしいぬいぐるみが、つぶらな瞳を鋭くして俺を睨みつけた。



「うわぁぁ!!」



 驚きのあまりぬいぐるみを放り投げた俺は、その場で尻もちをついた。

 すると、宙に舞ったぬいぐるみが女神様の前で華麗に着地して、そのまま仁王立ちをした。



「おいおい、いきなり投げることは無いだろ?」

「だっ、だって! いきなり喋るから!!」

「ったりめぇだろ。 何せ俺、チート持ちなんだからよ」

「はっ? チート持ち?」



『チート持ち』って......まさか、アニメや小説でよく見る、俺みたいに事故で死んだ主人公が、女神様が与えられる特殊能力持ちってことか!?


 ぬいぐるみの言葉に思わず唖然としていると、後ろにいた女神様が満面の笑みを浮かべた。



「そうなんです! その子には、自立思考や学習機能だけでなく、全ての魔法やスキルを習得しているのです!」

「つまり、お前はこれから異世界で、俺のチート能力に守られながら、魔王討伐に行くってことだ。良かったな、楽して世界が救えるぞ」

「ええっ......」



 そのチート能力、本当は俺が欲しかったし、俺の手で魔王を討伐したかったんだけど......



「あっ、一応あなたにも異世界の言葉が分かるようにしてありますので、何不自由無く魔王討伐に専念出来ますよ!」

「おぉ、それはいいな! いくら俺がチート持ちでも、一々こいつの通訳をするのは面倒だから!」



 こうして俺は、口の悪いクマのぬいぐるみと共に異世界へと旅立ったのだった。

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