ぬいぐるみを求めて

ムネミツ

第1話 ぬいぐるみを求めて

 「罠はないな解除するぜ♪ ……開いた♪ くそ、この宝箱も違ったか!」


 石造りの壁の迷宮、宝箱がある部屋で俺は魔法で目を光らせて明かりを確保しつつ鍵開け道具をいじくり回して宝箱を開けた。


 だが、中身は緑色の液体の入ったガラス瓶だった。


 「いや、マジックポーションならここまで来るのに使った魔法とトントンだ」


 俺は瓶を取り出し蓋を開けて一気に飲み干す。


 体の中に甘みが染み込み、疲れが取れて頭がすっきりするもう一杯欲しい。


 「いや、喜ぶなよ俺! 目的のブツはぬいぐるみだ!」


 気を取り直して俺は迷宮を進む、俺の名はソロ・ボッチ。


 ジョブは魔法剣士だ、勇者の劣化版だからいらないと三日前のバレンタインにパーティーを首になった俺は一人で冒険者として生きている。


 「ソロさん、頑張って下さいねチョコです♪」

 「ありがとうウケちゃん、お返しは必ずするよ!」

 「お返しなんてそんな、義理なのに」

 「義理でも人生初チョコなんだ、頼む!」


 笑うなら笑え、恋愛経験なし歴三十年の俺の初チョコだ。


 「……って、回想タイミングで汚い笑い声で出て来るなトロール野郎!」


 緑肌の巨漢の怪物トロールに出くわした俺、だが俺は負けない。


 「くらいやがれ、ダークファイヤーソード!」


 俺は怨みと共に腰の剣を抜く、刀身に俺の怨嗟の黒い炎が灯ったロングソードによる一閃は奴の堅い筋肉も骨ごと横薙ぎに切り分けた。


 黒い血と内臓をばら撒いて死んだトロール、当然俺も奴の血で汚れる。


 だが、奴の腹の中にあった宝箱は俺に全てを許せる気分にしてくれた。


 誰も来ない内に宝箱を開ける。


 「おっし、ぬいぐるみゲットだぜ♪」


 宝箱の中身は、俺の求めていた金のクマのぬいぐるみだった。


 俺はぬいぐるみを掴み、アイテムボックスの魔法で異次元に取り込み迷宮を出た。


 「はい、お返し♪」

 「あ、ありがとうございます」


 俺はこうしてお返しができた、恋に発展とか言う事はなかった。

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ぬいぐるみを求めて ムネミツ @yukinosita

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