第6回 自分で自分をマッサージしても全然気持ちよくないんですけど、やる意味あるの? という話
今回も、患者さんからよく聞かれることについてのお話をさせていただこうかと思います。
それは、
「よく健康本とかに、セルフマッサージやらセルフ指圧やらが載っているじゃないですか? 自分で自分をマッサージしても疲れるだけで全然気持ちよくないんですけど?」
という件です。
たしかに、自分で自分をマッサージしても全然気持ちよくありません。
それはなぜかということからお話させていただこうかと思います。
◆セルフマッサージでは理想的な施術ができない
まずあまり大きな要因ではないほうからいきます。
セルフマッサージでは体重をしっかり乗せて施術することができません。
自分の手で自分の体を施術するので当然ですね。
そして『体重をかける』ということは、気持ちのよい施術をする上で非常に大切です。
プロのマッサージ師の施術が気持ちよく感じるのは、施術部位が的確なだけでなく、体重のかけ方がよいためです。
これがセルフマッサージですと、プロだろうがアマだろうが体重を乗せにくい姿勢でやらざるをえない施術箇所ばかりになってしまいます。指の力に頼った施術になり、どうしても気持ちよさが劣ります。
◆そもそも人の体は自分の刺激と他人の刺激で感じ方が違う
そしてもう一つ。
どちらかと言うと、こちらのほうが重要です。
人間の体は、『自分で触る』と『他人に触られる』で、異なる感じ方をする仕組みになっている――ということです。
そして、前者が後者よりも抑制された感じ方をするようにできているのです。
解剖学的な詳細は割愛しますが、自分の頭がその両者をどうやって識別しているのかにつきましては、
・後者は『触られた部位の感覚』のみが脳に届く
・前者は『触られた部位の感覚』と『触る手の感覚』の両方が脳に届く
という違いを利用していると考えられています。
◆なぜ自分で自分に与える刺激が区別される仕様になったのか
なぜこのような仕様になっているかと言いますと、自分による刺激で過剰反応していては生物として都合が悪いためだと思います。
日常生活において、自分で自分の体を触るときは、意図して触ることが多いはずです。そのときに過剰な感覚があると非常に不便です。
自分で自分のわき腹や足の裏を触ってくすぐったかったりしたらマズいですもんね。
◆セルフマッサージに意味がないわけではない
以上、セルフマッサージがまったく気持ちよくない理由を説明してきました。
で、ここからが大切です。
「じゃあセルフマッサージって意味ないんですか?」
自分でやっても、気持ちがよくないし、疲れるだけなのでは……ということで、冒頭のようなご質問をいただくことがあります。
これにつきましては、回答は一つです。
「セルフマッサージに意味はあります!!」
たしかに気持ちよくはないのかもしれませんし、体重が乗せられないので圧が芯まで届きにくくなるかもしれません。
でもそれによって、施術効果がゼロになるわけではないのです。
たとえばツボへの指圧は場所が間違っていない限りはそのツボの効能が期待できますし、筋肉への揉みほぐしには疲労回復や硬結の解消などが期待できます。軽擦には血行促進の効果だってあるでしょう。
気持ちよくないという点に目をつぶれば、やる価値はあるのです。
ぜひ、今セルフマッサージを続けられているかたは、そのまま続けて健康を維持していただければなと思います。
まあ……
「気持ちよさが重要なんですけど?」
と言われてしまうと、いかんともし難いわけですが。(笑)
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