第22話 家庭教師

セオに教えてほしいことがたくさんある、スチュワートとおしゃべりしたいことがたくさんある。とにかくとにかく今は何よりもセオとスチュワートが最優先事項にしたい。


スカーニーがそんなあたしの思いをよく思っていないことはどこかで感じていた。寂しい時、彼は沈黙を守る。まわりの空気もピリピリするから、なんとなくだけどわかる。


あたしがおかしいと気づいたのはビルの悪い噂がよく出るようになったことだった。ビルは先生として優秀だし、あたし自身主治医がビルになってすごく健康になっていく実感があった。

比例してビルの悪い噂をよく聞くようになった。そう、比例して、綺麗なグラフが描けるくらいに。

Leeの解任も確かに不可解だった。けれどそれは多胡さんのことがあるからとある程度納得していた。Belvyのことも、ショックだったけれどそれぞれの立場を亜種白路中心に考えればなんとなく納得したつもりでいた。こちらは綺麗なグラフが描けない比例関係だった。




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元老院の教育儀礼は当初のカリキュラムから大幅な変更があった。変更を指示したのはLeeやBelvyやビルではないのに、責任を取るといって退職していった。三閉免疫症候群たちは納得がいかないながらも受け入れ、亜種白路は鼻を鳴らして喜び、百舌鳥柄遺伝子たちはこちらを睨みつけていた。四者四様の反応に疑問が強くなる。

誰が指示を出したのだろうか?

ヴァージニアやアーサーやヴィクトーは頭を悩ませた。日本語というヴェールは完璧には取り除けない。通訳者もなかなか雇用できない。雇用できてもなんだか話の通らないことが多かった。

スカーニーの酒量の管理は誰もできない。でもいつもおだやかに暮らしているから、生活に支障はないと信じていた。というよりもみんながそれぞれにとても忙しかったのだ。


スカーニーが来ると酒瓶が5本は空になる。三閉免疫症候群のある男が冗談混じりに言った。

「いくつになってもスカーニーさんは酒が強くて」

笑い話ではない。偶然居合わせたヴィクトーは血の気が引いた。



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「めぐ、もう大丈夫だよ」

何も知らないあたしはセオに抱きしめられて全てを悟った。あたしの親はすでに2年前から機能不全、つまりは臓器腐食が始まっていたことを。あたしは呑気だから、、涙を我慢しても勝手に涙が出てくる。


時空旅人にはなれない。わかっていた。衣子さんが、私の母がスカーニーを迎えに来てくれた。幻覚と共に硫黄の匂いも感じられないらしい。

衣子さんは、私の母はスカーニーを愛していたわけではなかった。それは薄々感じていた。だからこの先のことはわからない。衣子さんが迎えに来た意味もあたしは考えることをやめようと思った。

恋愛は親子といえども介入できないセンシティブなことだから。


セオとスチュワートに教えてもらうことが山ほどある。未知の領域をも教えてほしいと思っている。

Lawem Daviwoodの仕事のために、海外の大学への留学は半年延期になった。その代わりセオとスチュワートがずっといてくれることになった。

11号は明日、掃除が終わり次第スチュワートに引き渡される。9号は掃除が終わり次第セオに。

監視部屋がどうリメイクされるのか、それが今週のあたしのモチベーションだ。



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