第19話 color without affiliation

2019年からめぐみが通うサロンは家の近くにあった。

美容師の名前はShin-Ji

「はじめまして!担当のシンジです」

調子の良いタイプだった。


「ただいまあ」

午後7時、ドーナッツとカフェオレとチョコレートと。それから可愛いレッドリップも買った。でも気分が晴れない。

「おかえり!おお!いい感じで青くなったね!!」

スチュワートが目一杯褒めてくれる。なんで褒めてくれるのかは知ってる。うらめしく上目遣いで睨みつける。「げっ」と心の声が聞こえたから、荷物を押し付けて二階にすぐに駆け上がる。午後8時、9時、10時、11時、そして深夜、、、

「気にいらない、ほんと気に入らない。こんなの不本意だ、、、」


翌日、めぐみは洗顔と共に自分の真っ青な頭をまたもや上目遣いで睨みつける。

「めぐちゃん!おはよう!あらあ、綺麗に青く染まったわねえ!」

翠蘭さんが調子良く褒めちぎる。理由はわかってる。そのためにShin-Jiのサロンに行ったのだから。上目遣いで翠嵐さんを睨みつける。「うっ」という心の声が聞こえたから、翠蘭さんを無視して支度をはじめる。

台所からスカーニーと翠蘭さんのヒソヒソ声が聞こえる。

「今日は嵐かな、、、」

「ちょっと早く帰ってこれる?」

「なるべく努力する。だめならセオかスチュワートのところに行かせて」

「うん、わかった」


翌日ビルがあたしの青い髪を見て上目遣いで睨みつけた。ビルはいい、あたしと寸分違わず同じ反応をする。

「誰ですか?って言いたいんでしょう」

牽制球は想定内というように「はじめまして、お名前は?」とふざけてきた。

あたしもきっと同じことをするだろうから泣き落としにかかったけれど、それもやはり同じ感覚だから同じような冗談でいなされてしまった。

「めぐちゃん、スチュワートが寂しがってる。また会いにきてやって」

ミーガン・ラクーンの事件以来あたしはスチュワートを避けている。


木曜日の夜、基実くんが7時過ぎにうちに来てくれてあたしはようやく黒髪を完成させることができた。たった3日だけだったけど、本当に気分が悪かった。

「綺麗だよ、黒髪を見ると中学の頃を思い出す」

基実くんに髪を撫でられることが好きだ。

「あの頃から君は変わらない。髪の色や目の色や洋服のセンスを変えても君は変わらないよ、心配いらないよ」


オルレアンが帰還したことに伴いブロンドヘアを卒業しなければならなかった。けれど、嶺司がしかけた戦争はあたし自身が決着をつけなければならなかったから、わざわざブルーブラックをサロンで染めてもらう必要があったのだ。


おかげでGossipのカマキリがあたしに付着してしまった。

帝都や基実くんは面白がってカマキリ2号を泳がせている。

全然面白いことじゃないのに。

でもとりあえず今夜は黒髪を完成させられたから満足している。


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