第16話 many of "what"
「待って!なんでスチュワートがいるの?」
背の高さ、雰囲気、声色どこかで聞いたことがあると思った。そのすべてが帝都に似ていたから、教育儀礼に帝都も参加しているんだろうくらいに思っていたけれど、3つ前の席にいたのはスチュワートだった。
「留学編入したんだ。君、勉強好きだって聞いたから」
「誰に聞いたの?」
「ビルに」
定刻通りに教室のドアが開く。
ちょっと重たいドアは背は低い。日本人仕様だからだ。180センチ以上の人は必ずと言っていいほど頭をぶつけている。ビルの後ろからひとりの男性。スチュワートよりも背が高い同年代の人にあたしは一目惚れしかけた。
「こんばんは、めぐちゃん元気かな?おや?スチュワート。君は、、、今日からだっけ?予定では10月からだと聞いているんだけれど」
後ろのドアが今度は開いて鈍い音がふたつ。帝都と基実くんだ。
「すみません、遅くなってしまって」
基実くんはあたしのひとつ前に、帝都はあたしのふたつ前に座った。
「えーーー」
心の声が思わず漏れる。
「俺たちだって練習が必要なんだよ」
何の?
あたしは全く理解できなかったけれど、とりあえず頷いた。よくわかんないことはしばらく様子を見る。最近覚えた小技だ。
「セオが予定より早く来日したので今日はめぐちゃんと帝都くんと基実くんだけに紹介と思ったんだけれど、、、」
「ジョセフが早めに会ったほうがいいって今日の授業の予定を教えてくれたんです」
スチュワートが有効的にビルに微笑む。ビルは納得したように、さすがジョセフと嬉しそうな顔をした。
何が??
とりあえずあたしは様子を見ることを継続した。
「セオはヴィクトーの養子となったことは聞いていると思うんだけど、、、セオ、自分で話せるかな?」
「はい、もちろん。僕のルーツはロシアです。Mjustice-Law家のスヴェトラーナの兄が僕のルーツです。ヴィクトーの養子になったのは2001年でした。趣味は本を読むこと」
様子を見ていたあたしの目が形を変えて少しずつ心臓の鼓動を付け加えていった。でも様子を見ているあたしは俯瞰的に様子を捉えているからすぐに挙手してビルに質問を申し出た。
「はい、どうぞ」
「もういない?」
「え?」
帝都と基実くん、そしてスチュワートが懐疑的にあたしに注目する。あきらかに「何言ってんだ?こいつ」というあの類の目だった。こいつらいつの間にこんなに連携取れるようになったのかは知らない。けれど、あたしは大切な質問を今している。
「もう登場人物出てこない?たとえばアレキサンダーの姉の息子ですとか、エドワードの妹の子孫ですとか。出すなら一気に出して欲しいんですよ。もう出ない?もういない?出し惜しまないで一気にやって!!一思いにいっきに!!!」
不安と焦りから言葉が加速する。
「めぐみさん、大丈夫ですよ。帝都くん、基実くん、スチュワートに僕。これで全員です。僕がいるせいでスチュワートが大きな戦争をしかけたんですから」
教室の空気が凍る。
「まあ、、、、まあ、その話は君たち世代が合流するための伴奏だったわけだから。幸運にも今日みんなが集まれたことは、私からスカーニー、ヴィクトー、ジョセフ、それからイワンにも伝えておくよ」。
めぐみさん、その呼び方は帝都にされて以来初めてだった。
翌日、10月のクラス分けが行われた。
あたしが1組、帝都とスチュワートが2組、基実くんとセオが3組だ。
「やっぱりスマートな男性は3組なのかしらね」
セオも基実くんも理知的で論理的、口調の端々に知性が感じられる。それからとても冷静だ。あたしにはないものがあって憧れる。
「それって俺がスマートじゃないってこと?」
知らない間にあたしのすぐ近くにいるのは帝都と似ている。やっぱりスチュワートは2組だと思った。
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