第14話 Reorder

「めぐちゃん、劉から聞いたよ。シンボルだいたい決めたんだって?」

あたしは面食らってぼんやりとビルを見つめる。どこで言っただろうか?なんとなく決めていることは決めていたし、それをいつ言おうかとタイミングを測っていたけれど、あれ?心の中まで読まれているのか?


あたしは立場上、必ずお守り役が同行する。すごく面倒くさいことも多いけれど、この3年で自分がどういう立場かを理解したから今はお守り役にも寄り添える余裕が出ている。基実くんや帝都は忙しいことも多い。だからお守り役が日替わりで着くことになった。

でも今日は誰もいなかったはずだだ。東洋医学院は初見だったし、、、ああ、劉さんが先回りして連絡をしてくれていたんだ。

合点がいった。この蜘蛛の巣みたいな世界からあたしは逃げられない。女郎蜘蛛だなんて言われるけど、蜘蛛の巣の主はあたしじゃなくて基実くん。蜘蛛の巣を張り巡らせるように指示したのはもちろん父であるスカーニー。

蜘蛛の巣には役割があって、お守り役は三閉免疫症候群が、金融連邦の職務はMjustice-Law家と金融連邦の人々が、そして教育儀礼に関しては元老院が担当している。

あたしは今日本人との関わりがかなり限定されている。元老院の推奨によって、スカーニーや翠蘭さん、基実くんや帝都の承認によって。そのことを知らない亜種白路が3月と同じ攻撃方法を用いているから最近の釣果は格段に上昇している。


「うん。日本人との契約は8月25日で終了。来週は移行期間で9月1日からスタートの予定」

「そういうの早めに言ってね、みんな待ってるから」

「あ、はい、わかりました、、、」

連絡の遅延はあたしの悪い癖だ、よくわかっている。

「それで、どうするの?」

「劉さん、イワンさん、ダミニ、ジゼル、ロレンツォ、それからビル、シャルル、セバスチャン、エリザベス、アレックスにお願いする」

「ちょっと待って!えっっと、中国、ロシア、インド、ブラジル、ポルトガル、アメリカ、フランス、スペイン、イギリス、イスラエルかな?」

「うん、ジゼルはキューバ出身だからキューバも」

「最初から国名で言って」

「あ、、、はい、ごめんなさい、、、」

「日本はゼロ?なし?」

「うん、なし。ゼロで。いると、基実くんや帝都が自由になれない」

「ジェンダーは?」

「どっちもあると便利だと思ってる」

「じゃあ20くらい作る?」

「うん」

「わかった、すぐにオーダーしておく」

「今日、お勉強なしでいい?」

「は?」

ビルの顔が曇る。わかってる、最近勉強が遅延していることくらい。予定より遅くなっていることくらい自分でわかってるよ。

「えっと、、、今日だけはお勉強なしでいい?」

「だめ。留学するんでしょ?しないの?」

ビルめ、、、、彼は最近あたしの扱い方がうまい。不貞腐れた顔でノートを開いても、その内容に集中してしまえば楽しくて仕方がない。たぶん、ビルはそこまでわかっている。先生が交代してよかったと思う。






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