第11話 Sacrament

サドカイサイクルはいわゆる受刑時空旅人の永遠輪廻のことである。Infinity Rebornは同じ政治信条の間を周回させることで解脱不可能な仕組みを作っている。解脱不可能であっても時間の経過と共にゴミは蓄積し、周回速度が遅くなってしまう。夏のプールの芋洗状態はそれを表現するのにわかりやすいだろう。

その蓄積物を排出処理するために一定の期間が過ぎると、ファリサイ川が開門する。Effect Reversalとは逆転効果で、埋立橋の補強材料や清掃用具として消費される。


ウリエルに監永が着任するのをまって烏鷺棋の処分がまた合理的になることが決まった。恵が元老院と連邦金融に提案したのは8月10日。

接触障害のぶり返しの憂鬱さを仕事で立て直したようだった。

捜永がジーザスとしてウリエルを招待し、処分原体を買付させる。その後、清掃と整地担当のケルビムとセラフィムに原体を輸送する。ケルビムはファリサイにMentenance用益を横流しし、セラフィムはサドカイにTreatment用益を横流しする。

烏鷺棋処分の既存規則をひとつも変更することなくすぐに実行できる劇的なアイディアだった。


「メンテナンスとトリートメントはその罪禍の重さによってより分ければいい。金海へつながる橋だと考えれば、埋立橋の延長工事という理屈が成立する。もともと銅河原から銀河までには元老院の海が広がっている。たとえ逃走したとしても元老院所属の漁師たちがちゃんと釣り上げてくれる」


保守は金海を生き抜くために、治療はその途中で不具合が生じた時のために。


渡鳥が銅河原を目指してやってきたのなら、永住してその後、金海を目指してほしい。英語を開門すればより目指しやすくなるはずだ。

恵は真剣にそのことを考えていた。

夢物語で終わらせる時代を終わらせたい。我が家が担うべき重荷を自分の代で降ろしきりたい。

「あたしには夢があるの。大好きな帝都と基実くんと永遠に幸せでいたいっていう金持ちらしい夢が」


聖餐式の準備が始まる。金海にたどり着くための聖餐準備である。





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