第2話 テスト

元老院の教育儀礼が5月からはじまった。

カリキュラムは大別して死恋狭窄症のDNAについてと時空旅人について、そして家の歴史。


死恋狭窄症のDNAについては、複合存は基実くんが、合存についてはBelvyが、三閉免疫についてはスカーニーが、そして単存についてはLeeが教えてくれるはずだった。でも、4月の下旬になって急にLeeが辞退したいと申し出たことを私は5月になって聞いた。

私はLeeとは仲が良いつもりでいたけれど、いつもどこか不思議な距離感が保たれていて、それはLeeだけではなくて私もそれ以上入らないほうがいいのかもしれないと思っていたから担任が変更になってもさほど気にはしていなかった。


時空旅人については群青が、Mjustice-Law家の歴史についてはインマヌエルが教えてくれることになっていた。でもインマヌエルもまた辞退させてほしいと申し出があったそうで、授業開始直前にふたりも担任が変わることになった。


元老院と亜種白路については祖母であるエルザ・ヨウが教えてくれるらしい。



「ねえ、基実くん、Leeもインマヌエルもどうしたの?」

基実くんとの授業はいつも決まった時間とはいかない。忙しい人だから互いに空いた時間に今週分を急拵えでというようなことになることが多い。

「名前の問題だよ。くだらないことだけどね」

「名前がいけないの?」

「そう。紛らわしくて混乱を生むからって」

「ふーん。Leeは元気?」

「めぐ、そろそろ勉強はじめるよ」


最近Leeの話を誰もが避けるようになった。近くて遠い国。遠くて近い国。それが何だっていうのだろう。みんなで仲良くすればいいのに。


「最近お母さんに会っていないけど、元気かなあ」


ひとりごとをつぶやいたのは週末だった気がする。

翌日、Leeが殺されたと知らされた。


葬式にはインマヌエルはいなかった。

その代わり、母である衣子が泣きじゃくってそこにいた。

誰も見えていないのだと悟った。


私はその日、時空旅人についての第一課題テストに合格した。

簡単ではないけれど簡単な時もある。

基実くんに教えられる複合存は得意だと思っていたけれど、案外一番苦手な分野なのかもしれない。基実くんだけではなく、卓も帝都も私は大好きだから。





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