帝王切開-元老院の教育儀礼-
恩賜芍薬/ Grace Peony(♂=
第1話 神経質な毎日
「あたしは!!!!やらない!!!!!!」
Belvyと基実くんが顔を見合わせて困ったように笑う。
「笑うなぁぁぁぁ!!!!!!!!」
元老院の教育儀礼を受け始めて二週間が過ぎた。
あたしは毎日ヒステリーを起こしている。自分の主張のためにバッグには「Hysteric」というワッペンがついている。
元老院への登録なんてものはどうでもいい。帝冠保持者の登録抹消とかも心底興味ない。自分が何者であるかとかどうでもいい。あたしは毎日Belvyと基実くんと戦っている。
「卓さんに会わせろ!!!!」
「めぐ、今は俺の配偶者。自分でも納得してたじゃん。卓に会えないわけでもないでしょ」
「お前が嘘つくからだろうが!帝冠保持者とか元老院とか聞いてない!なにひとつ聞いてない!!」
話が一方通行なのは自分でもわかる。でもどうしても納得いかない。
「散歩してくる!ついてきたら殺すからな!!」
そう捨て台詞を吐いて出かける。確かにBelvyも基実くんもついてこない。
すでにひとりで好き勝手に行動することは許されなくなっていた。私のまわりにいる全ての人は護衛官でありSPであり元老院の関係者だ。
意気消沈して帰宅すると、待っていましたとばかりにBelvyも基実くんも玄関で出迎えてくれる。
「お散歩どうだった?もう空気が春よねえ」
Belvyを無視しつつ舌打ちして部屋に戻る。
この家だって、この部屋だってあたしの意思とは関係なく備えられた。うまい具合に導かれて完全看護、完全セキュリティーのためにまんまと騙されて引っ越したのだ。
大好きだった父を今は養父と認知しなければならない。代わりに尊敬していた偉大な人を父と呼ばなければならない。
孤独だと感じることは毎日だ。
「基実くんはどうして嘘をついていたのよ!なんで全部最初から教えてくれなかったのよ!」
「正良さんが今はまだ違うっていうから」
「正良さん正良さんって!あんたたち正良さんがいなければなにひとつ決められないわけ!!??」
「恵、冷静に考えて。その通りでしょう?」
Belvyは冷静だ。そして話も冷静に考えればその通りだと理解できる。
両親とは時々ファストフードで同席することがある。いまだに私は素直になれない。
そりゃそうだろうと私は自分の考えを正当化する。
両親がどう思っているかは知らないけれど、急な話で飲む混むには幾度か反芻が必要だと思う。
牛のようにね。
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