第24話 The curtain of words

週末はセオと会う約束を必ずしている。

でもここ3週間くらいはなんだか表情が暗い。

「何かあった?」と言えればいいけれど、なかなかそういうわけにもいかない。言葉にするより先に彼の目を見れば言葉にならない色を見つけてしまうからだ。

そんなわけで、あたしは人の目を見るのが苦手だった。

言葉にならない色を言語化するのが上手だった。Mjustice-Law家でもあたしは特にとんな才能に恵まれていた。


群青は同じような悩みを抱えたことがないのだろうか。

12色のクレヨンと24色の色鉛筆と36色の絵の具を見比べる。どこかに同じような色があればいいけれど。

素材の違うそれぞれの画材にはそれぞれの良さがある。使い勝手の良さだとか、描きやすさとか、濃淡の出しやすさだとか。

色々混ぜられるいつも絵の具に目が行きがちだった。


群青と違ってセオはクレヨンを使わされていた。混ざりあえない単色のたった12色で20年近く色々なものを無理やり描いていた。

群青は36色の絵の具を使いこなしているように見えたけれど、実際は配色の失敗があってこその成功だったことも最近は想像してあげられるようになった。

あたしはまだ24色の色鉛筆を使い始めたばかりで濃淡の出しやすさには一定の使いやすさを感じているけれど、何か物足りない思いがして、もしかしたらそれがセオや群青と同じような色にしかならない理由なんじゃないかと仮定した。

すると、するするとその色が言葉になって、感覚を埋めていった。

色が上手に濃淡を表現して、感覚を埋めて言葉が橋を渡すようにある答えを導き出した。


「Throenの公式名がカタカナで書かれているビルがある。日本語のカタカナで書かれているから、群青が所有しセオが所属しているThroenとは全く異なるが、日本人から見れば同じように感じるし、アルファベット表記すれば同じように表示されるから誤差が出ない。セオは自分の土地が荒らされているけれどそれをどう伝えていいか迷っていたのだ」


ここまで配色が終わって満足した時、ほぼ同時に群青とセオからビデオ通話がかかってきた。

「めぐ!俺たち一緒に仕事することにした!!群青が俺の土地でThroenが虚偽記載されている言葉の意味を教えてくれたんだ!さすがトリリンガル!すごいよ!!」

「ほんと!?あたし、今から完成させるところだったのに、さすが群青だね!」

「セオが声かけてくれたんだ。俺、意地張ってたけど、今はそうじゃないから腹を割って話したいって」


セオは彼の土地の中で群青の悪口を聞くことが多く、居た堪れない思いも抱えていたらしかった。でもその居た堪れない気持ちをフィアンセのあたしに話すわけにもいかず、直接群青に伝えたくてふたりだけで会うことを持ちかけたのだという。そしたら、トリリンガルの群青が言葉の意味を解してセオに伝えてくれたというのが時系列らしい。


Japanese has HIRAGANA, KATAKANA, and KANJI. Many KANJI are read differently than in Chinese.It's like English, French, and Spanish mixed into one language.This is the impregnable wall of language called the curtain. The curtain of words was heavier and sturdier than iron.

You cannot open the curtain of words. It is easier to change the curtains. We plan to replace it within this year.


36色の絵の具を使いこなす群青のようになりたい。長男のくせに引っ込み思案の手を引っ張っていくのは一番下の妹のあたしの役目になりそうだ。


Theo has two more, I have one more, Gunjo has law. We still have work to do.


Gunjo is ultramarine blue in English.

Gunjo est le bleu ultime en anglais

群青は究極の青と言われている。


絵の具では出せない濃淡がある、色鉛筆でも出せない濃淡がある、クレヨンでは出せない濃淡がある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る