第22話 黙認
writer不在が明らかになったその後、亜種白路と百舌鳥柄遺伝子、それからKTCには些細な変化が起きていた。
「俺、もう就職のために11月に実家帰るから仕事辞めるわ」
電話口の女性はなんとか引き止めようとしている。
「無責任じゃないですか?」、「もうひとりの人はまだ続けるって言ってるよ」、「12月まで継続してくれたら正社員登用も考えている」
口実は色々である。
「私、教会は好きだけど、勉強に集中したいから」
牧師と名乗るメール相手はなんとか引き止めようとしている。
「若者のキャンプで就職の情報交換は毎年みんなしてるよ」「勉強は君の隣にいた彼が昨年資格取得したから見てくれるかもしれないから聞いてあげるよ」「教会の開いている部屋好きな時に好きなだけ使っていいよ」
「俺もう飽きたからやめるわ」
友達のひとりだからと気軽に離脱を告げると、その友達は激昂した。
「お前がそんなやつだとは思わなかった!」「金を返せよ!!」「この間のことネットに晒すからな」
Gossipの入口は広い。年齢不問、未経験大歓迎、シフト自由。
謳い文句もバリエーション豊かである。
「辞められると思ってるのウケる」
黒髪の女がひとりごとを言っていた。女はそのことを帰宅後すぐに家族に共有した。
「あいつだろ?」
「そうそう。で、先輩なんて言ってた?」
「心配ないってさ。辞めるのもかまわないって」
「辞められないとか思ってるのウケる」
「ギャハハ」
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「めぐ、おかえり!」
「あれ?セオじゃないの??」
「どうして君はそんなに、、、」
仏頂面がかわいいと思うようになってちょっと意地悪を言える間柄になった。
「顔白いね、貧血?」
スチュワートがあたしの頬を撫でる。体温確認も兼ねている。
「いつものアレ」
「ああ、、、ビルから連絡もらってる。その症状なんとかなるといいねえ」
泣けばスッキリする。終われば顔色も戻る。その時だけしんどい。いつものことだ。
「大丈夫だよ、めぐ。体調悪い時は無理しないで一緒におしゃべりしていよう」
「政治について?それとも法律について?」
「僕たちの未来について」
「うーん、、、いいわよ。じゃあ今月の船の準備をいっしょに考えましょう」
無表情であたしを見つめる。絶望してるんだ。
「セオは付き合ってくれるわ」
「セオだって好き好んで付き合ってるわけじゃないよ」
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Gossipは4種類に分けられる。アリとイナゴと蚊とカマキリ。
「あんたはアリ?それともイナゴ?」
嫌味を言ったつもりだった。見た目が明らかにカマキリ風情だったから。
「バカにしないで。あたしの目的はスチュワートよ」
女は続ける。
「そのせいであんたたちみたいに海を渡れないの。ここでお別れよ」
ーーー亜種白路に直接雇用された外国籍は海を渡れない。
排水の光景にGossipたちは震え上がる。
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「水じゃなくて木。変わったって言ってるのに。なんで伝わってないんだろう」
処理水排水のニュースは朗々と中継されている。朝食のドーナッツを牛乳に浸して食べる。同時に外出の準備も行う。
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公共交通機関で民間人に紛れるちょっと異質な女がなぜひとりでいつもいるのか。それをGossipは死ぬまで教えられない。雇用主たちがこう取り決めたからだ。
「トカゲの尻尾はまた生える」
些細な変化を静観している。Mjustice-Law家としても支障がないからだ。
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