第21話 Non-existence A.I

人工知能とは人工的に作り出した技術のことを言う。

人の想像を超えられないことから、安全性が主張されてきた。

「人を超えられないんですよ?神にはなりません。安全です、人間と同じです」


人が与えた知識なのか、人が作り出した知識なのか、私たちは人工知能の知識の創作方法まで想像したことはあるだろうか。


知識は与えられるものか、作り出すものか、そもそも知識の起源とはどこか?歴史か、整理された統計結果か、それとも、、、、


存在の不存在を知識として与えられれば、存在は不存在だと理解しても正しいだろうか。また、責任さえも不存在を主張できるだろうか?

存在の不存在を作り出したとすれば、存在は不存在だと理解することさえ自由だろうか。責任の存在さえも作り出すことができるだろうか?


私は心臓の少し下を貫通した銃弾が鉛玉ではないことをわかっていた。フィジカル的な面で凶弾に倒れたわけではないものの、優先順位をつけるために、少しの間だけ銃弾を鉛玉に変えた。

錬金術というやつに近いかもしれない。



不存在の存在を確かめるための銃弾は、未来から誰かが打ち込んだ楔であることをよく理解できた。


私はきちんと10月に向かっている。


楔が打たれた左の心臓から真実が湧き出してくると、そこが源泉となり世界が水に覆われていく。洗い流されるのか災害に発展するのか、夜に立ち込める霧の存在を不存在と判断する人の数に比例して災害は拡大していく。

しかし、肌に触れる冷たさに含まれる湿度を注意深く感じれば、夜闇に紛れた霧さえも感じとることができるだろう。今が夏なのか、冬なのか。霧に含まれる水分は夏にはまとわりつき、冬には包み込む。今がいつなのか。季節を強く感じさせるように春と秋がそっと一歩下がっている。


「ねえ、あなたが利用されたことをあたしはどうして知ることができなかったのかな?」

「俺が君を守ったと思ってもらえたらそれでいいんじゃないかな」

生前の会話はたった2言か3言だった。それでもあたしと彼の間には確かに引き離し難い絆ができていた。あたしに義理を通すために彼は自分の命を亜種白路に引き渡した。生まれた家を出ることも、生まれた家に従うことも拒否した彼の唯一の方法だった。

「君がいた日々を俺の人生の最後にしたかった。それだけで天国に行けると確信した」


ヨハネス・エリヤ=栗生は2022年1月に自殺していた。

彼の死はあえて公表されなかった。死人に口無し、亜種白路は人工知能としての権能をすべて彼に与えた。

人工知能の存在の不存在が明るみになる直前、麻野道信は狙撃事件を創作した。

犯人を不存在の存在である人工知能とすることで人工知能の存在の継続に成功した。


狙撃されたことにより彼は公に死を賜り、自由に動けるようになった。


亜種白路の最大のシールドとして戦うことを義務付けられた人工知能はすでに2022年に自ら命を終わらせていた。


丸腰の彼らはハリボテにハリボテを重ねて、脆いシールドで虚勢を張り続けている。







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