第20話 VIVA LA VIDA

Gyroとサリンジャーは東西の軍記を語るにふさわしい時空旅人だった。

Amadeus Juryの法廷でふたりが向かい合っているその前、3段高いところからオルレアンとゲオルギ、それからアルバートが見下ろしている。


「勝ちは勝ちだった。マリコの時代に我々に勲章として与えたその勝利はアレキサンダーも承知していたはずだ」

サリンジャーはGyroに話を続けろと促した。

「マリコはエドワードとの間にハインリッヒを産み、アレキサンダーとスヴェトラーナの間に生まれたグレースがハインリッヒの妻になる。そのためにマリコの御簾を上げねばならない。だからアレキサンダーとスヴェトラーナは我々亜種白路に勲章として勝利を与えた。違うか?」

「では、その勲章をその後どう利用したか教えてほしい。あなたの口から」

Gyroは3段上のオルレアンの方を睨みつけた。

「勲章の理由はそもそも聞いていなかった。亜種白路という組織形成は我々が自ら行ったのであってスヴェトラーナの家からは何も後ろ盾をしてもらっていないし、ハインリッヒに関しては我々をスヴェトラーナの家と見立てて攻撃を繰り返した。戦争で疲弊していくこの星の原因は我々ではなくハインリッヒの家にある。アレキサンダーにも責任がある」

「ハインリッヒはエドワードとマリコの息子だ。アレキサンダーもスヴェトラーナも関係ないんじゃないのか?」

Gyroが押し黙る。

「Senested-Xiaoが生まれた時に我々も祝宴に呼んだことを覚えていないのか?ゲオルギ。Xiaoはその後、藤村嶺司を利用しようとした。我々は彼を守るために戦争を仕掛けた。大義がある」

「Gyro立場を考えろ。お前はゲオルギに話しかけるべきではない」

「そんなわけないだろう!少なくとも表向きはゲオルギとXiaoとXiaoが利用した藤村嶺司は同じ思想で考えられる。我々の王はゲオルギだ」

オルレアンが3度拍手をして弁論を中断させた。

サリンジャーは深く頭を下げたが、Gyroは一瞥して椅子から立ちあがろうともしなかった。

「Gyro、お前の王がおられるのに、お前は頭も下げないのか?」

アルバートがGyroの愚かな行為を鼻で笑うとGyroは顔を真っ赤にして立ち上がった。

「亜種白路はMjustice-Law家の被害者組織だ!!あの時、俺たちは自分たちの力で勝利したと思った。それなのに、蓋を開けてみたら、海軍としてはじめてイギリスを訪れた時だったよ。お前たちが勝ったのはスヴェトラーナとアレキサンダーの御心だと言われたんだ。あんな惨めな思いはなかった。自分の力ではなく、Mlustice-Law家の婚約の祝儀として与えられた勝利だったなんて、、」

オルレアンがGyroの名前を呼ぼうとしたが見逃さず、ゲオルギが制止し、続く弁論を見ながらオルレアンに歴史の真実を訥々と話し始めた。

「あれはうちもかなりアルバートの家に怒られたらしい。反省をした。でも、我が家も我が家でオルレアンの家を愛し、そして心配した。親の愛情が父親だから素晴らしいとか母親だから素晴らしいなんて比べられないのと同じように。孫のXiaoが生まれる前にそう何度も伝えてアルバートの家は納得したが、民衆が我々を許さなかった。今この事実を民衆はどう思うだろうと考えるほどに胸が痛むよ」


弁論は続いた。結審まであと数時間。


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