第17話 Rocket Idiom

1944年の話を少しだけ。

登場人物はジョシュア、パウロ、ヨハネ。

パウロはフランスを代表してアメリカ人として、ヨハネは帝国を代表して共産主義として、ジョシュアは日本を代表してイギリス人としてそのテーブルについた。


「さて、そろそろ準備は整いましたかな?」

大聖堂の一室、いわゆる告解室で3人は斜陽差し込む穏やかな午後のはじまりと共に会議を始めた。

「ドイツに進軍したのは、あれは、パウロの方?それともジョシュアのほう?」

「ヨハネ、冗談がすぎるよ。笑いたくもない」

と言いながらジョシュアはからからと笑った。

「どうもうちのアレらは世間知らずで扱いが難しい。精神性だけは誉めてやりたいと思うけれど」

ヨハネが今度はころころと笑う。

「それは次の世代に任せようじゃないか。烏鷺棋の第二シーズンを雪芸は楽しみにしていると聞いている。男色を演じるらしいねえ」

「そうなんだよ。家長制度が重苦しいあの島ではそれしか方法がないっていうんだ」

「じゃあ、うちの娘なんか嫁にもらってくれるかなあ?」

「おいおい、それは約束が違うだろう!雪芸が選んだほうが婚約者だって決めたじゃないか!」

2回連続で負けているヨハネはちょっとした冗談もデリケートに捉えてしまう。

ヨハネの家はどうも堅苦しくて面白みがない。ジョシュアはパウロの家から嫁をもらっているから特にそう思うことが多かった。


Mjusitice-Law家は3本の柱となり、深海に沈む計画を考えていた。

エッフェル塔とロンドン塔と東京タワーはその象徴であり、自由の女神はフランスとアメリカの婚姻を象徴している。いわば潜伏開始記念のモニュメントでもあった。


日出づる国から、日沈む国までの大陸はMujustice-Law家のものだ。そして、ふたつの海を挟んだ大陸について、当時のMjustice-Law家の人々も同じことを考えていた。



余談だが、パウロの血筋がスチュワートであり、ヨハネの血筋がセオであり、ジョシュアの血筋が恵である。


ジョシュアの息子が朱雀雪芸であり、その息子がスカーニー、その娘が恵となる。

家系図を見れば一目瞭然だが、一代おきに日本名を公式名として名乗ることとなっている。公式名が日本名であれば日本名以外をその象徴となることを亜種白路たちは知らないでいる。

朱雀雪芸が書いた書籍の内容は日本名で書かれている。つまりはMjustice-Law家の象徴としての真実ではなく完全なるエンターテイメントだったのだ。


完全に騙された亜種白路はスチュワートによってその計画を完遂されることになった。

「ジョシュアの時代からすでにうちは二代連続でセオの家に負けている。めぐは俺よりもセオを選ぶ気がする。本気で行く」

恵の実母である衣子もスカーニーとの結婚が決まった際にはヨハネの家の養女になるはずだった。しかし、同じ島で暮らしていた亜種白路のほうが一歩先んじて衣子と養子縁組をしてしまったのだ。

翠蘭の時はスカーニーも慎重に動いた。そして無事にセオの祖父であるヨハネの養女となり結婚に至った。

今、帝都がスチュワートの家の養子となり、基実がセオの家の養子となったことにはこのような背景がある。

天文学的数字の財産を所有するMjustice-Law家のならわしのひとつでもあるのだ。




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