第11話 定例元老院会議-烏鷺棋処分追加報告書添付-

烏鷺棋処分に追加が発生した。

たった二週間で被害者は約1000人。

「なんで無関係な流浪遺伝子までこんなことになってるの?」

Food Hoods Delivaryの倉庫内にはもう在庫は残っていないはずだった。なぜ増えたのか見当がつかない。セキュリティに関しても万全を期したはずだった。

米も砂糖も小麦もどこで生成されているのだろうか?

ウリエルにまた疑いの目が向けられる。ウリエルは中国が長年担当してきた。亜種白路は9UN-BankStockを売るときに衣子と恵以外にウリエルの信用も虚偽申告した。何も知らない中国の人々は亜種白路の広報パンフレットを信用してこの島に渡ってきた。実際は渡航と共にパスポートが取り上げられ銅河原の国籍を勝手にあてがわれる。この恐ろしい事態に気付いても表向きは鉄原野のウリエルだから、簡単に拳を振り上げることができなかった。

流浪遺伝子は主に島の中で生まれた人々がそう呼ばれた。帝冠任務に憧れるようなふつうの人々が被害に遭ってしまっているから、事態に気付いていたイギリスやフランスはすでに10年も前に経済と人権についての注意喚起を表明している。

島の中に引き摺り込まれた外国人は多い。だからすでにこの問題は世界的に重要な意味を持っていると言えるのだ。

米や砂糖や小麦はどこで生成されているのか?

調査班はすべての監視カメラとスマートフォンの履歴をチェックした。行動履歴、通信履歴、着信履歴、閲覧履歴、内蔵されているマイクから集音し、そのまわりの音まで解析することができる。

ラッキーなことに報告書は第一回の元老院の議題に上げることができた。

「セブンティーンズに憧れを持つ流浪遺伝子たちに銅河原国籍たちを使って撒き餌をする。釣り上がった大量の流浪遺伝子に特殊任務者たち自らが契約書にサインをさせる。どのみち、僕たちの未来のためにとか言ったのでしょう。そしてその契約書によって流浪遺伝子たちだけで生成させていたようです。指南するのは特殊任務者たちですから流浪遺伝子たちも求められる以上の活躍をしていたみたいですよ」

亜種白路は処分を待つ身として収監されている。だから銅河原国籍の特殊任務者たちに流浪遺伝子たちのリクルートを命令した。収監されていても債権は自分達が持っている、そう説き伏せたようだった。

ウリエルの上層部は頭を抱えた。

「わかった。鉄原野のウリエルはその流浪遺伝子も引き受けるよ。もうしばらくはヒール役をやらなければいけないか」

ウリエルはこの島に天幕が張られたとき以来、Mjustice-Law家の守護者は護衛任務を仰せ預かっている島内から独立した組織だった。護衛という言葉は流浪遺伝子たちにとってはまるで別世界であり自分を強く感じさせる幻覚作用があった。彼ら、彼女らはその学内に張り巡らされた蜘蛛の糸に引っかかるとは想像もしていなかっただろう。

「島内のなかでここは有数の素晴らしい勲章を与えてくれる信用が歴史からある」

そう嘯くスーツたちを烏鷺棋のてっぺんから見下ろす人々がいることを彼らは知らない。

上には上がいるし、下には下がいる。天より下はすべて同列であることを知ることもないだろう。シンボリックなものは全て天の下にあり一番大切なものを隠すために捧げられた生贄であることを。

「百舌鳥の早贄を思い出します。彼らはそうやって長い間若者を使い捨てにしてきた。自分が偉くなったような幻覚作用は決して止めることができないほど甘美なものなのでしょう」

元老院の会議にはウリエルとサドカイ派も参加する。シンボリックなものの上にあるMjustice-Law家を支える一員として。

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