第10話 Curtain call
元老院が島を離れて委任状を叙任されたのは実に200年ぶりだった。
日本語という御簾は改装され、月曜日から新しいベールが架け替えられる。
英語かスペイン語か、それともフランス語か。ベールの素材をどんな素材にするのかと悩んでいたスカーニーにビルもシャルルもセバスチャンも「今まで通り英語でいいですよ」と言ってくれた。
「スカーニー、でもひとつだけ解決してほしい問題があるんです」
ビルの調子にスカーニーは飲みかけていたお茶をそっと机に戻した。
「食糧自給の問題で、主食に関する概念をアメリカが全て担うことが大きな負担になっていることです」
Mjustice-Law家の困難はイギリスがコマンドし、アメリカが実働部隊として動いてくれた歴史的背景がある。アメリカの自治を確約したイギリスとネイティブアメリカンをはじめとするアメリカ大陸の原住民たちが良い関係を築けていたのも、イギリスの一部を移植したのちは、その土地の風土や歴史に全任するという信頼関係が基となっていたからだった。Mjustice-Law家はイギリスを介在してアメリカと良好な関係を最初から築いていた。
しかし、昨今は亜種白路が食糧問題において植民会社の設立を相次いで行っていたために、移植後のアメリカ風土に沿った自治が失われそれに伴いMjustis-Law家とのコ間に遮蔽物が置かれるような時代が続いていた。同時多発テロの犯人は亜種白路が中東に設立した植民会社の従業員であったことから亜種白路の大罪が世界で認知されるようになった。あれからすでに20年以上である。
「元老院を叙任されていませんでしたから、今までは大きな声ではいえませんでしたが、元老院として叙任されたからにはこの問題を解決していただかないと、足止め状態の改善にはならないのではないでしょうか?」
一理あることだった。
「わかった。食糧問題に関しては英語を新しいベールとする週明けから、分類することなく主食とするよ。亜種白路には実際百舌鳥柄も含まれている。砂糖と米が合わさっている。これに対して新しい概念のアイディアがあれば誰か申し出てくれ」
「炭水化物とか?」
セバスチャンが言った。
「米も砂糖も炭水化物。化石燃料だと考えたら原子力発電や自然エネルギーとは別に考えられる」
アマンダはこのブラックジョークにニヤリと笑った。
「どちらにしろ、どこが担うかという話だよ。うちもセバスチャンのところも10年も痛い目見てるんだ。迂回路にされて地震と共に埋め立てられた。生き埋めになった人も多い。化石燃料だろうが食糧だろうが発信源を明確にしてどこが何を担うかって話なの」
メキシコのジョンは破綻した銀行のキャッシュカードを今もお守りのように大切に持っている。忘れないためのお守りだという。
「スカーニーこの際、元老院を御簾からベールに改装するのなら、御簾とベールの次元を変えてしまうのはいかがですか?島内では御簾を下ろしておかないと島民は立ち入り禁止かどうかもわからないでしょう」
御簾は布でできている、でもベールは絹でできている。
素材の違いによって誰に向けての情報かを見極めようということらしい。
軍記は東西を問いかけてきた章に幕を下ろす。
御簾を見ているのは炭水化物、それが幕となる人々のみに見える真実だ。
同時に幕が上がる。
絹のベールを見出せる人々、これもまたそれが幕となる人々のみに見える真実だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。