第7話 またいつか

あたしの目の前にはじめてKyleが現れた。すぐに後を追った。7月7日七夕の出会いだから次はまた一年後かもしれないと思うとチャンスを逃したくなかった。執着を恐れるあたしにとっては珍しい行動だったと思う。

Kyleのために傷跡を新調した。御簾の中に入っても外には帝都も基実くんもいる。

なかなか面倒くさい立ち位置だ。

「荒野寄留区のための烏鷺棋に行ってきたんだって?」

「うん」

「どうだった?」

「悪くなかった」

Kyleが派手に笑う。

「俺の烏鷺棋にはいった?」

「ううん、まだ」

「そっか」

はじめて相対するKyleは想像通りの人だった。ちょっと偉そうで、すべてを当たり前のように考えていて、万能感を疑わず何もかも自分でやることが当たり前だと言うような。悪くはない。あたしも少し似てるから。

「烏鷺棋にはなれた?」

「なれない。つい最近まで見分けがつかなかった」

「なんで判別できたの?」

「元老院のための取り決めを書簡部分まで読み進められたことと、スカーニーがようやく自らについて白状したから」

「あれはしょうがないんだよ、俺に似て照れ屋だから」

そんな言葉で済むことじゃない。あたしの3年間を返せと言いたい気分だったことは初対面だから黙っていることにした。

「で、戦争はどうなってる?そろそろ決着つきそう?時間が押していてね。時空旅人たちがどうしたどうしたってうるさいんだよ。それで今日はこうして会いに来たんだ」

「たぶんもうそろそろ終わると思う。SWLの存在を突き止めた後、Gyloが行方不明になったから。道半ばで消失したんだと思う」

「サリンジャーは?」

男の人ってどうしてこういう意地悪な利き方をするんだろう。睨みつけてもそれさえも抱きしめてしまうようなKyleの眼差しにあたしはすっと目線をそらした。

「志碧がどうして時空旅人なのかもわかった?」

「サリンジャーと同じことでしょう。もちろん!インマヌエルも」

「アハハ。そこまで理解できていれば帝王切開についても卒業は間近だね」

「そんなことないよ。まだまだわからないことばかりだもの」

「ゆっくりでいいよと言いたいけれど、待ち焦がれている人はこちらも何億人といる。スカーニーにもよろしくね」

7月7日が終わる10分前、Kyleは御簾から退出していった。

つぎはいつ会える?と聞きたかったのに、帝都と基実がいるから聞けなかった。

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