第19話 Serious HONEY Shaun TRAP
アイルランドではショーンと言われる男性名は英語圏ではシェーンと発音され、ヨハネスやフアン、イヴァン、ジョンと発音される地域もある。女性名はショーナ。
亜種白路はこのショーンという名義を大変気に入っていた。カナリヤの第三夫人の子どもである藤村椿にショーンという名義のCEOを任せたのもそのためだった。
次代はジェラルド麻野か、藤村椿か、それとも藤村怜か、もしくは山蘇野智柚か。
Gossip silkyはZyaylaの担当部署だったから、どこから動かすかは彼の手の内にあった。
「Mjustice-Law家は高潔を気取るから決してゴシップ誌を発刊することはない。それならば都合が良い」
ゴシップ誌は衣子の名前を冠にした。SugerとShaunのSが混ざり合う良い名前だとカナリヤは満足した。
セブンティーンズは藤村高司の担当部署だったから、高司は椿と怜を厚遇した。なにしろ多胡やZyaylaと違い自分は亜種白路の正当な血統であるという自負も強かったのだ。
多胡はそんなふたりの権力闘争にうまく絡み付ける位置を好んでいた。自分が持っている小麦はMjustice-Law家にウケがいい。少なくとも米や砂糖よりも安全に活動ができる。
7月、藤村高司やZyaylaの部隊が次々と撃ち落とされる最中、三閉免疫不全に属する小麦担当として多胡はうまく立ち回っていた。ようやく自分の番が来たような気がして、徳川家康の墓参りに出かけたほどに有頂天だった。
「泣かぬなら、泣くまで待とうホトトギス」である。
しかし思いも寄らぬ事態が8月に発生した。
多胡のかつての愛人にミーガン・ラクーンという人がいる。
小麦の配給元としてMjustice-Law家の信頼を得ていると思い込んでいた多胡は大胆にもスチュワートのお膝元にミーガン・ラクーンを配備したのだ。かつての愛人であっても同じ組織の同じ目的を共有する同志であると都合よく考えていたのだが、やはりそこにジェンダーの差が介在しこの度の転倒につながったのだろう。
ミーガン・ラクーンは多胡を見返すために、あろうことかスチュワートにハニートラップを仕掛けたのだ。
「ミーガンフォックスみたいにヘマはしない」
桜色のドレスで踊るように手紙を渡す。あわよくば結婚したい、これはハニートラップではない。ミーガン・ラクーンの頬も桜色に染まっていく。スチュワートはもちろんその手紙を丁寧に礼儀正しく受け取った。
9月中旬、動かぬ証拠を突きつけられて多胡はついに陥落した。
Shaunの事務所に連日電話のベルが鳴り響く。メールも1分単位で数百件と送信されてくる。
慌てたのは椿と怜だった。すぐに高司に報告する。
「何があったんだ!どういうことだ!!」
慌てふためく事務所に汗を拭きながら高司が到着する。
「Thornsに気づかれたみたいなんです!!外国籍の従業員たちが週明けには説明を求めて事務所に直接行くと言ってきかないんです!とんでもないことをしてくれたとすごい剣幕で、、、それが、、」
高司が公設秘書の話を遮る。
「そんなことは絶対にありえない。外国籍の従業員には詳細を説明した後に契約書を交わしている。KTCよりよほど事情を知っている。気のせいだと言っておけばいいじゃないか!!」
「先生、、ミーガン・ラクーンが、、、ハニートラップを、、、」
高司の足が止まる。顔が青ざめていく。
「誰にだ、、、」
「スチュワートに、、、」
血の気が引いていく。
「高司!セオとグレースが結婚式を挙げた!!どうなっているんだ!!スチュワートとグレースなら話はわかるが、、、しかもその結婚式にスチュワートも参列していた!ふたりの婚約破棄の話は聞いていない!!順調だったと言っていたじゃないか!!」
Zyaylaはそう捲し立てたながらオフィスで高司を探している。声はオフィスにこだまして筒抜けになる。それほどまでに狭いオフィスとなってしまった。異常な雰囲気を察して、Zyaylaは私設秘書に事情の説明を求めた。
「ミーガン・ラクーンが、、スチュワートにハニートラップをしかけたと、、、」
8月下旬からのBRONZE-FROzenの不穏な動きが理解できたZyaylaはカバンに隠し持っていた護身用の短刀で首を切った。生きて晒されるよりはマシだ。Zyaylaから吹き上がる血飛沫を見ながら高司は自らの血の気が増していくのを感じた。
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