第17話 two state
朱雀雪芸がホモセクシャルだった話は有名だ。そんな彼に子どもができるはずはにとたかを括っていた亜種白路に青天の霹靂が轟いたのは今から約60年ほど前のことだった。
時の財政を任されていた麻野道信の祖父は全世界に電報をうたなければならなかった。判断に迷いがあった。
このまま隠しておけばどうだろうか、知らせなければ、アメリカをすでに騙しているということがふたつの状態に対して信頼を与えるのではないだろうか。亜種白路が欲しかったステータスを自分たちの力で勝ち得るのではないか?
スカーニーが生まれてから時が過ぎた。3ヶ月余りが過ぎた。
テキサスに凱旋したとまで言われたジョセフの祖父はパレード直前にその話を聞いた。
「わかった。撃ってくれ。派手にやって欲しい」
ジョセフの祖父はアーサーの祖父に頼んで、状況を全てヴィクトーの祖父に伝えさせた。
映像に映るその人の脳みそは確かに飛び散っていた。
ヒットマンはジョセフが手配した。最近腕の良いのがいるからデビューさせたらどうだと詳細は説明せず、その日のうちに契約書を交わした。簡易的ではあったが、契約書に記されていたMjustice-Law家の紋章がものを言った。
数日後、そのヒットマンは訳もわからず逮捕され、訳もわからず闇に葬られた。その闇とはどこを意味していたのか、
それからしばらくして、アーサーの祖父が麻野道信の祖父に話を持ちかけた。
「アメリカもぜひMjustice-Law家のお手伝いをさせてもらいたい」
麻野道信の祖父は全てを察した。バレたのだと。
百舌鳥柄遺伝子はこの時に発生した。だから亜種白路の亜種であると言われることもある。そして、傭兵であり絶対的な階級があることで不満が膿のように溜まっていった。何度も殴られれば治癒する暇もなく、生傷には細菌が入り込む。
「移民を使ったらどうか?」
KTCを組織したのは百舌鳥柄の下に階級を組織するためだった。黒沼衣子はこのKTCの移民としてこの島に渡り、スカーニーとの間に恵をもうけた。
麻野道信は恵の誕生を大いに祝福した。
「祖父の仇が打てる」
しかし、自分が潜り込んでいるのは三閉免疫症候群の立場だ。ここでは自由に動くことができない。
「スカーレット、ちょっと相談があるんだが」
麻野道信は亜種白路の中心人物に電話をした。彼女は百舌鳥柄にも顔がきいたし、もちろんKTCの管理としても若くして役職が与えられている。
「カナリヤという人を知っているかな?」
「ええ、もちろん。昨日もいっしょにご飯を食べたわ」
「カナリヤのご両親は元気かな?」
スカーレットは一度深呼吸して、全てを察して頷いた。
亜種白路は日本名だ。英語名は少し異なる。
カナリヤ以前をWL(white load)、カナリヤ以後をSWL(Sub White Load)としている。黒沼衣子の保護者として組織を改めたことを国際的には発表しているのだ。
そしてこのSWLのフロントマンとして活躍しているのがカナリヤやスカーレット、麻野道信ではなく、多胡開望や天村君子のようなKTC出身の三閉免疫不全であることはあまり知られていない。
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