第14話 不沈艦の行方
難攻不落。
めぐみさんはその意味を理解していない。
「なんで難攻不落って言われるの?あたしすごいフラフラしてるじゃん」
時々バカが露呈して俺や基実が焦ることがある。肝心なところでバカなのが玉に傷だ。
めぐみさんは主体的にしか恋愛をしてこなかった。俺も基実も実際めぐみさんを落としたわけではなく、めぐみさんと同じ気持ちだっただけだった。一度も落ちたことがない。落としにかかった男性はかなりの数いたと思う。
それでも絶対に落ちない。あらゆることが主観的だから、人の意見には絶対に流されない。俺だって本当は二番手なのか一番手なのかあやふやな立ち位置を歓迎しているわけじゃない。でもめぐみさんが言うなら仕方がない。
帝冠任務は5年ほど継続された。亜種白路やKTC、百舌鳥柄それぞれの任務者が努力と叡智を総動員したがめぐみさんは落ちなかった。
そしてついたあだ名が「難攻不落の悪女」「不沈艦」。
「落ちるってなに?バカなの?」
とでも言いたげな顔をしているが、彼女がまたいじめられたらかわいそうなので解説をしておこうと思う。彼女は落とされるという選択肢を持っていない。自分がどうしたいか?というストレートかつ黄金の右手ストレートのみの、実にシンプルな戦術しか持っていないのだ。豪快な上手投げが代名詞だった名大関がいたが、めぐみさんの恋愛は彼に似ていると思う。右上手を取られたら最後、彼女はこう言う、「あたしは基実くんと帝都しかいないって言ってるじゃない。何回同じこと言わせんだよ」。
俺や基実は苦笑いするしかない。帝冠任務とはそういうものなのだから、彼らもやるしかないのだ。それをそんな身も蓋もない、木っ端微塵にするような、、、。
昨年あたりからは俺も基実も亜種白路やKTC、百舌鳥柄の帝冠任務者が哀れに思えて同情するようになり、攻撃の手を緩めた時期があった。それがよくなかったのだと今年の3月に事態を把握したわけだが、それにしてもめぐみさんのあの右上手は恐ろしい。俺だったら正直再起不能になる。
元老院が政治の主体となり、島の中の政治家が全ての権限を失った。島内での政治は元老院の指示通りに行わなければすべてスカーニーに連絡が行くし、めぐみさんが目撃した亜種白路の悪行は即時金融連邦にて金利引き上げ手続きが行われる。そのスピードたるや30分以内だ。
困ったことがひとつふたつ、俺や基実にとってだけだけど。
元老院直属の帝冠任務者とめぐみさんとの接触が8月28日から解禁になる。
「亜種白路との接触を減らすことと接触障害のリハビリを兼ねている」。
スカーニーも承認した。
困ったことになった。亜種白路やKTCとは比べられないほどに。
「帝都、どうする?」
「いや、大丈夫だ、我らがめぐみさんだぞ?心配する必要もないだろう」
「おまえそうやって、2018年にめぐみさんの最初の失敗招いたこと忘れたのか?」
基実はやっぱり嫌いだ。あれは俺のせいじゃない、めぐみさんがバカだったからいけないんだ。
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