第13話 on behalf of motherland
「6日のカナダ、いや規模が大きければ5日のオーストラリア、もしかしたら24日のトルコで結果が出るかもしれない」
アマンダとジョンは心配している。ルーツこそ違えど、共に亜種白路に苦労を背負わされた同胞の仕事だったからだ。
亜種白路の麻野道信時代に多くの公式写真に共に収まってしまったがために、彼らの故郷の山が大噴火した。先週のことだった。
あれは人為的だ。神の怒りを表現するためにスカーニーが小遣いで噴火を誘発させた。
「俺の小遣いで十分だ。予算を使う必要はない、ジョンのためにも」
外国人の身体検査も本格化している。ということを、まだこの島の外国人たちは知らないのかもしれない。
懸念材料はいくつもあるが、そのバカにしたような笑い声をめぐみが気付かぬふりをして報告係の役目をしているとは想像していないらしい。
「あの子には興味のある話題さえ与えておけばいい」。
亜種白路の声色と従業員の声色は同じだ。
「結果はいつでるのかしら?」
アマンダが困惑している。心配なのだ、とにかく。
ひとりの女性がひとりの国を救うことを期待している。
6月と7月に連れてこられたという。人身売買だったのか、それとも国軍からのスパイだったのか。この島に渡るには亜種白路を経由しなければならないことも多い。すました顔で渡ってきたのならいい。愛想を振り撒いているだけだったのならいい。
「めぐみだって、亜種白路の兵隊だったらショックで起きられなくなるかもしれないのよ」
ヒステリックになってしまうのは当然だ。以前も同様の事件が起きた。Bevlyに会いたいとめぐみは何度かひとりで泣いていた。実際のところは本国からのレジスタンスとして侵入したのだが、スカーニーの介在がないばかりに亜種白路に強制送還をくらってしまったのである。
リスクは大きい。
あの事件からちょうど1年になる。8月のめぐみの悲しい思い出がまたひとつ増えてしまった。
最近調子が悪いのはBelvyを恋しがっているからかもしれない。
「めぐみさん、思い出してよ。俺がめぐみさんのこと好きだったのにめぐみさんが勘違いして俺に嫌われちゃったって誤解したこと」
クマのぬいぐるみの定位置をいまだに奪還できない帝都と基実は真っ向勝負を試みる。時期が悪かった。月の自滅時期にこの話は重かったかもしれない。じんわりとまためぐみの目に涙が浮かぶ。
しっかり眠った後のめぐみは人が変わったようにしっかりする。
朝の洗顔と共に訓示がはじまる。さながら朝礼のようだ。
「どちらにせよ、あたしは諸外国の味方です。国を背負ってきているのならそれ相応の対応ができる。しかし、亜種白路が少しでも絡んでいるのなら利上げは決定的。デフォルト回避も難しいでしょうね」
烏鷺棋の第二シーズンはここからが本番だ。
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