第12話 AI on VR-仮想現実の目的-

多胡開望と衣子の話をしよう。

彼らはすでに20年前に死んでいる。大晦日の日に身内に殺されている。


「またそんなくだらない陰謀論か」

笑ってすませるためにーつまりわからないことをわらかないと悟られないためにー流浪遺伝子たちを巻き込んで亜種白路たちは隠蔽工作に日々勤しんだ。


アレックスとアンドリューがまだUCLAの大学生だった時のことを回顧する。

「西海岸の学生たちの間ではちょっとしたオカルト話が流行していた。ホラー映画好きが多いのはそのためかもしれない」

この島での週末に、アレックス、アンドリュー、ルイス、シャルル、Belvyにアマンダやジョン、それにロイドゼラやDijla、セバスチャンが全員揃うのははじめてのことだった。

お盆明けには新しい立場がはじまる、そのための顔合わせの意味もある。

「ゲームで世界を変えよう!っていう勧誘が流行ったんだ。Food Hoods Derivaryの出資だから100パーセント安心ですって」

「それ本当にゲーム会社だったの?だいたいFood Hoods Delivaryの出資なら100パーセント不安でしかないじゃない」

アマンダが訝しがる。アマンダは反ビデオゲーム派だ。

「本当にゲーム会社だった。そのうちVRとかアバターの開発の話がどんどん進んでいって、仮想現実が本当の現実みたいになって、オンラインゲームが盛んになって、地球上どこでも誰とでも繋がれるようになったことで俺たちの友人もすごい興奮していた」

セバスチャンがせせら笑う。

「それはゲーム機を買える人たちがでしょ。俺たちは買えなかったもん」

スペイン語圏は亜種白路の最初の被害圏でもある。アレックスやアンドリューが大学生の頃はすでに財政が破綻していたことをこのメンバーならよくわかっていた。

「その通り!その通りなんだよ、セバスチャン。富裕層を狙い撃ちするためにアメリカの優秀な大学生を亜種白路がリクルートしたんだ。富裕層の統計を取って9UN-Bank Stockを売りつける作戦だったみたいなんだよ」

「で、オカルト話っていうのはどこから?」

シャルルとルイスがワクワクした顔で話を促す。スリルに興奮を覚える性格なのだ。

「ゲーム会社の就職面接を受けるとドッペルゲンガーが現れる人と現れないやつが出るんだ。ドッペルゲンガーが現れたら就職が決まったようなものだって」

「嘘でしょ?気持ち悪!それで本当に就職決まって就職するの?」

Belvyが顔を顰めた。

「するよ!だって面白そうじゃん!その先を知りたいと思わない?」

「あたしなら嫌。そんなバカな奴の顔見てみたいくらいよ」

「いるじゃん、ここに!」

アレックスとアンドリューが自分達を指差してニンマリ笑う。

「マジか!!!すげええええ!!!」

大興奮のシャルルとルイス、呆れて顔が固まるBelvyとアマンダ。

セバスチャンは冷静だった。

「ドッペルゲンガーはVRとかアバターで作ったってオチでしょ?ゲーム会社だもん」

ロイドゼラがDIjlaと目配せして話を引き継ぐ。

「亜種白路が殺人事件を隠蔽するための裏工作のために、純粋な若者の才能を買い取ったといえばいいのかしら」

「で、ふたりは9UN-Bank Stockの株式は買ったの?もしも買っていたら烏鷺棋処分対象よ」

「買うわけないじゃん。金なかったし株には興味なかったもん。断ったよ」

「は?!それでよく仕事継続させてもらえたわね、、、」

「継続させてもらえたけど、この島には入れてもらえなかったよ。実際に訪れたら俺たちすげえこの島が嫌いって嘘流されてた」

「フェイクニュース!!!!でも誰もフェイクだって気づかない!!」

こんなとんでもないことをされたのに、ブラックジョークにしてゲラゲラ笑っているアレックスを見てルイスは思った。

なんでこいつはこんなに欲がないのだろう、この根性をもってすれば大抵のことはなし得るのに。

いつまでたっても大学生、、、確かに彼らはそうかもしれない。

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